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大和一統〜農民の俺が侍に!?〜  作者: 灰谷 An
第2章・仙道愛知家の家督相続 編
17/19

016:確信に似た自信

 奉行としての仕事があるので、戦には傘下させては貰えないと思っていた吉丸。しかし実際は秀蘭に、足軽として戦に参加する事を認めてくれたのである。

 行けないと思っていた戦に行けるようになって、ワクワクしながら準備しに向かう。

 行けると思っていなかったので、足軽用の鎧すら持っては居なかった。なので吉丸は、持っていない人間用に貸し出している場所へと足を運んだ。



「あ あのぉ、足軽用の鎧を借りに来ました」


「はぁ〜い、あっ! えぇと確か吉丸くんだよね?」


「そうです、控金奉行という職を仰せつかっております」


「そんな畏まらないで下され、私も吉丸くんと同い歳の16歳だから! それに今回の戦が初陣でもあるし」



 貸し出しのところにいたのは、吉丸と同い歳で秀蘭の小姓をしている水前(みずまえ) 猿三郎(えんざぶろう) 利恒(としつね)だった。

 この利恒と吉丸の出会いは、一生の親友となる人間との出会いである。しかしそれはまだ少し先の話。


 吉丸は身分差を、キチンと意識して敬語で話す。

 しかし利恒は同い年でありながら、そんな風に敬語で話されるのがむず痒いらしい。今回の戦で初陣を果たすというのも吉丸と同じである。

 だからタメ口で話して欲しいと頼んだ。

 身分が上の者にタメ口で話せと言われ、拒否するのも失礼かと思いながらも「し しかし!」と遠慮した。



「確かに周りの目があったら、タメ口で話しずらいのも事実……ならば! こうやって2人の時は、タメ口で話すというのは、どうだ? それなら良いんじゃないか?」


「まぁ確かに、それなら……」


「よし! 決まりだ!」



 2人だけの時ならば、タメ口で話しても良いんじゃないかと提案して来た。

 もうここまで頼んで来ているのに、これ以上の拒否は利恒の顔を潰しかねない。ならば2人の時だけは、タメ口で話すというのを容認するしかない。

 タメ口で話す事を認めた吉丸に、利恒はガッツポーズをして喜びを表現するのである。

 談笑したところで利恒は「こっちに道具があるから」と言って、裏まで案内してくれた。そこにはたくさんの防具が置かれており、何本も槍が箱に刺さっていた。



「好きなのを選んでくれ」


「好きなのと言われてもな……槍や防具に詳しいわけじゃないから分からないな」


「それなら私が選んでも良いか?」


「あぁ是非とも選んでくれ」



 まだ槍や防具の良し悪しが分からない吉丸は、自分で選ぶのは難しいと利恒に言う。

 すると代わりに選ぶかと聞いてくれた。それなら是非とも頼みたいと、吉丸は頭を下げて頼んだ。

 良いものを選んでやろうと物色して、無数にある中から槍と鎧を選んで吉丸に「はい、どうぞ」と笑顔で渡す。



「ありがとう! これで良い初陣ができそうだ!」


「そうか! なら俺と共にやってやろう!」



 鎧を手にすると戦に行けるのだという実感が、沸々と沸いて来て「やるぞぉ!」と気合が入る。

 戦があるのは明日の明朝なので、今日は明日に備えて一足先に家に帰って休む。

 一方で上前津城に秀蘭の家臣や家来が集められていた。



「殿っ! これは好機にございまする!」


「好機? どう好機だと言うのだ?」


「は! 大治仙道家は、これより先は邪魔になること必須でございまする!」



 軍議が始まると山田(やまだ) 青右衛門(あおえもん)が、この戦は好機であると進言する。

 理解しているが秀蘭は、わざと青右衛門に「どうして好機なのか」というのを説明させた。

 これは本当に好機と思っているのかを確認する為だ。

 キチンと説明できたところで、秀蘭は満足そうな顔をして「よく言った」と褒める。

 だがそれに政徳が「お待ちくだされ!」と言葉を挟む。



「大治仙道家と戦うのは得策ではございませぬ! ここは領地を割譲し、和睦をするべきにございまする!」


「領地を割譲し、和睦をすれだと? 政徳、お前は歳をとって朦朧したか! あんな下郎に頭を下げるなど、あってはならぬのだ!」


「しかし! それではこの愛河で生きてゆくのに、とてもご苦労なされますぞ!」


「苦労が何だと言うのだ! 己の信念を曲げてまで、楽な生き方をしたいのか! 必死に険しい道を言ってこそ、その生涯は光り輝くのだぞ!」



 このまま主君である大治仙道家に楯突いて、生きていくのは苦労すると政徳は説得を行なう。

 しかしそんな政徳に対し、秀蘭はいずれ戦う事になるのならば、苦労してでも今のうちに叩いておいた方が良いというのが秀蘭の考えである。

 理屈の通っている言葉に政徳は言い返せない。というよりも、何かを言ったところで秀蘭が考えを変えるとは長い付き合いの政徳には思えないのだ。



「軍を3つに分けるぞ! 蟹江城と七宝城に150人ずつを向かわせ、本軍は600人で大治城に攻め込む!」



 軍議は進展し900人の兵がいる秀蘭軍を、3つに分けるという事に決まった。

 取られた蟹江城と七宝城に150人ずつを送り、残りの600人が本軍となり日吉に攻め込む。

 作戦が決まったところで明日の準備を始めようとしたところで、兵士が走ってやってくる。軍議の場に到着したところで、膝を着いて頭を下げ「報告いたします!」と秀蘭たちに伝えるのである。



「仙道 秀安さまからのご使者が参られました!」


「叔父上からか! 直ぐに通せ!」


「は! 直ぐにご案内いたしまする!」



 秀昌の弟で秀蘭たちの叔父である仙道 秀安からの使者がやって来たらしい。

 使者と聞いた秀蘭は立ち上がって喜ぶ。そして直ぐに使者を、軍議の場に通せと指示を出す。

 そして秀蘭の前に使者がやって来た。



「秀蘭さま、御目通りありがとう存じまする! 拙者は仙道 秀安が家来・松田(まつだ) 亀之助(かめのすけ)にございます!」


「亀之助殿っ! 良くぞ、参ったな! 叔父上はご息災であるか?」


「は! すこぶる元気にございます!」


「そうかそうか、それは良かった! お主と、もう少し話していたいが……見ての通り、これから戦であってな。少し時間が無いのだ」


「その事についてでございます! 秀安さまは、この戦に参加したいという御意志にございまする!」



 少しの世間話をしてからスムーズな形で本題に入る。

 どうやら秀安は今回の戦に参加をしたいらしく、しかも秀蘭陣営として戦う意思があるみたいだ。まさしく願ってもいない事に秀蘭は、喜びの気持ちを抑えあえて落ち着いた様子で「それは誠か?」と問う。

 この質問に亀之助は「誠にございます!」と答えた。

 すると納得するように秀蘭は「うんうん」と頷く。



「秀安さまは現在、戦支度をしております。それゆえ上前津城には、参陣いたしませぬ。明朝、居城を出立し庄内川にて落ち合おうとの事でござる」


「それはありがたい! お主も戻り支度をしてくだされ。その前に前祝いというわけではございませぬが、この城にある酒を数本、お持ち下され」


「ありがとうございまする! 頂戴いたします」



 この時の秀蘭には強い自信があった。

 それは確信にも近いが、証拠があるわけでは無いので自信という言葉にしておこう。

 この戦いにおいて秀蘭たちは大いに不利だ。

 国主である大治仙道家と、ただの地元侍である仙道愛知家のさらに家督相続を終えていない子供では、目に見えて勝負にはならないと思われている。

 しかしその油断が、最も今回の戦いで重要になってくると秀蘭は分かっているのである。

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