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狼娘は黒兎に愛でられる  作者: 燈華


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エピローグ1

一月(ひとつき)後。

クレハはソウヤとともにカフェにいた。


あのあと。

捕まっていたクレハはガイル共々軽い事情聴取を受けたがすぐに解放された。

それからは特に何かあるわけでもなくいつも通りの生活を送っている。

捻挫のほうもそれほどひどいものではなく一週間程で完治した。


ただ(さら)われた時は自覚はなかったがそれなりにショックだったらしく夜には熱を出してしまった。

結局は職場からも配慮されて一週間休んだ。

それ以降は特に体調を崩すこともなく、誰かが話を聞きにくるようなこともなく普段通りに過ごしていた。


後処理に忙しいソウヤとはこの一月会えなかった。

先日ソウヤから連絡があり、「会いたい」と言われたのでクレハの休日にこうして会うことになったのだ。


「ソウヤさん、少し痩せましたか?」

「さすがに忙しかったので寝食が疎かになっていたかもしれません。ですが、大丈夫ですよ」

「そんなことも言っていられないのでしょうけど、あまり無理しないでくださいね」


ふわりとソウヤが微笑(わら)う。


「ありがとうございます。ようやく後処理が終わったのでもう大丈夫です」

「それならよかったです」


すべてが終わったわけではないのだろう。

今回の一件の処理が終わっただけで。

だがソウヤが話さない以上はクレハも踏み込めない。


「クレハさんのほうは大丈夫ですか? お変わりありませんか?」

「はい。私のほうはもういつもの生活に戻れています」

「よかったです。怪我のほうは?」

「とっくに完治しています。何の後遺症もありません」

「よかった」


ソウヤは本当にほっとしたようだった。

一応医者に診てもらうまでは一緒にいてくれたが、その後は連絡を取り合っていなかったのでどうなっているのか心配だったのかもしれない。


こんなことならガイルに訊いて「怪我のことは心配しないで大丈夫」の一言でも伝えればよかったのかもしれない。

ソウヤにはいつも怪我のことを心配させてばかりいる。


「ご心配をおかけしてすいません」

「いえ。クレハさんが無茶をしていないようでよかったです」


これはたぶんからかわれている。

だけどそれは恐らくクレハの気持ちを軽くするためのものだ。

それならクレハはそれに乗るだけだ。


「無茶なんてしません」

「本当にそうしてください。私の心の平穏のためにも」


そういうことを平然と言うのもソウヤの一面だ。

慣れない。


「うぅ、はい……」

「お願いしますね」

「はい」


満足そうに微笑(わら)うソウヤは絶対にクレハの反応を楽しんでいる。

少し睨んでみるも効果はない。

むしろますます嬉しそうなのでやめた。


そもそも心配ばかりかけるクレハが悪い、のかもしれない。

だが弁明できるなら自分から危険に突っ込んでいったりはしていないのだ。

ただ巻き込まれただけだ。


だけどそんな弁明は意味がない気がする。

気をつけてと散々言われたのに心配をかける事態に陥ったのはやっぱりクレハにも責任がある。

だから甘んじて受けよう。


ソウヤがふっと笑みを消す。

躊躇うような間を空けてソウヤが訊く。


「彼は?」

「ガイル、ですか?」


ソウヤが頷く。

心配は怪我のことだけではなかったらしい。


よく考えればそうだ。

クレハの中ではもう大丈夫だと結論が出ている。

だけどそれをソウヤには伝えていなかった。


本当に心配ばかりかけている。

きちんと伝えなければ。


「家に謝りに来ました。両親にも、私にも」

「そう、ですか」

「いつか普通の親戚付き合いができるかもしれません」

「そうですか。……クレハさんはそれでいいのですね?」


その視線にはやはり心配が混じっている。


「はい」


もともとは仲のいい親戚だったのだ。

それなら元に戻るのがいい。

今までのことがあるから時間がかかってしまうかもしれないが。


「そうですか」


静かな声だ。

たぶんいろいろと飲み込んだのだろう。


自分には口出しする権利はないと思ったのか。

文句を言いそうで堪えたのか。


いや違う。

恐らくクレハのためだ。

読んでいただき、ありがとうございました。

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