冬の贈りもの3(セラ)
昼休み。教会の裏手。
雪の残る地面の上で、俺はひとり、型の復習をしていた。
(突き、斬り、払い、打ち……よし、ラストもう一回!)
「……ひとりで熱心ですね」
「わっ!?」
振り返ると、そこに立っていたのは――セラさんだった。
相変わらずのクールビューティー。
雪の白さと光に照らされて、銀の髪がさらりと揺れる。
(……っていうか、やっぱこの人、めちゃくちゃ美人だよな)
無表情なのに、どこか目だけがじっとこっちを見てくる感じがあって――
今、完全に俺の瞳をのぞかれてる気がする。
(美人で、スタイル抜群で、冷たくて、スパルタで……なんか、すごいよな……)
「セラさん、どこにいたんですか? ちょっと探してましたよ」
「外に。行商人から、いくつか日用品を……」
そっけない返答。でもちゃんと説明してくれるあたり、ちょっと優しい。
「で、どうかされましたか?」
「え、いや……その……」
(あー……やっぱ、緊張するな)
「……セラさんに、お礼をしたくて」
「お礼?」
首を傾げるセラさん。
俺は先に予防線を張った。
「その、どんなのがいいか分からなかったし、あんまり予算もなかったし……
気に入るかどうかもちょっと自信ないけど」
「……」
「でも、セラさんのこと思って、一生懸命選んだのはマジで本当なんで。
だから、受け取ってくれたら、うれしいです」
そう言って、俺は包みを差し出した。
セラさんは無言でそれを受け取って――
静かに、包装を解き、中身を取り出す。
目線はそのまま、ぴたりと贈り物に注がれていた。
(……な、なんだ? 気に入らなかった? それとも逆に良すぎた?)
(どっちだ……どっちだ……!?)
数秒の沈黙が、やたら長く感じる。
そのときだった。
ぽろり。
セラさんの目から、つう……っと涙が伝った。
「えっ!? ええ!? ちょ、泣いてる!? なんで!? 俺なんかやらかした!?」
テンパる俺。汗が吹き出す。
「すみません……」
セラさんが袖でそっと涙をぬぐいながら、ぽつりと呟いた。
「……うれしかったもので。つい」
「…………いや、嬉しかったんかい!!」
と盛大に突っ込んだ。
(焦らせんといて!? 関西人でもないのにノリでツッコんでもうたわ!)
「……異性から、こんな風に贈り物をもらうのは、初めてだったもので」
「え?」
「……うれしいと、思ってしまいました。……不覚にも」
(不覚って……嬉しがっていい場面で何言ってんのこの人)
ツッコミを飲み込む前に――
ふわり、と。
セラさんが、俺のほうへすっと近づいてきて。
そして――そのまま、そっと、抱きしめられた。
「……え?」
(え? えええええええええ!?)
脳みそが一瞬でパンクする。
ぴくりとも動けない。思考停止。オーバーヒート。
柔らかな体温。しっとりとした香り。
ナイスバディが密着してる。嘘だろこれ。
(え、ちょ、待って? え??? どゆ状況????)
数秒か、数分かも分からないくらいの、静かな抱擁のあと――
セラさんが、少しだけ体を離して、俺の目を見つめた。
「……ありがとう、ルクス」
穏やかで、少しだけ柔らかい表情。
至近距離でそんな顔されたら、もう、無理。
(やめて! そんな目で見られたら俺、爆発する!)
思わず目をそらすと――
「……つけてもらっても、いいですか?」
指先に残った銀のブレスレットを、そっと差し出してくる。
「も、もちろん」
手が震えないように意識しながら、セラさんの白い腕に、C字型のブレスレットをそっと装着。
ぴた、と留まった瞬間――
セラさんは、ほんのすこしだけ、目を細めて笑った。
「……本当に。可愛らしい人ですね、あなたは」
そう言って、セラさんは一歩、ふわりと後ろに下がる。
「ありがとうルクス」
小さく、そう告げて――くるりと背を向けた。
銀のブレスレットがきらりと光って、彼女は何事もなかったように静かに歩き去っていく。
残された俺はというと。
(……え、ちょっと待って、なんなんだ今の)
(心ごと持ってかれたんだけど!?)
余裕の大人の微笑みで、礼だけ言って去っていくとか……
それ完全に“惚れさせておいて振り返らない”タイプのやつだろ!
(くそっ……絶対、俺のこと弄んでる……!)
お姉さんの魅力全開かよ。
「……好きになっちゃうだろ、バカ……」
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