表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/105

第97話〜少女セツナ・中編〜

危機に陥る3人の運命は…

俊也「で、どうする千夜様!」


俊也はセツナを脇に抱え、街の中を走りながら千夜に問いかける。


千夜「どうって!よっ!、聞かれても、ねっ!!」


千夜は進行方向に現れるギニムに引き金を引きながら答える。


街は突如襲来したギニムの大群により占拠されつつあった。

目的ははっきりしていたが、なぜ街まで襲う必要があるのか

その理由は分からなかった。

ギニムの銃器の攻撃で街はいたるところで火があがっていた。


セツナ「俊也さん!あっちです!」

俊也「あっちってどっち!?」

セツナ「右です!」

俊也「右!」


セツナの声で目の前の曲がり角を右に曲がると

開けた場所、港を3人は駆け抜けていく。


千夜「おいガキっ!こんな場所じゃ…」


千夜の声に答える前に、上空を飛んでいたギニムの何体かが

3人めがけて直滑空してくる。


俊也「千夜!!」

千夜「わかってる!!」


千夜は迫るギニムに銃口を向け乱射する。


千夜「こんな場所じゃ狙ってくださいって言ってるようなもんだ!」

セツナ「いいんです」

千夜「はぁ!?」


千夜は撃ち落としたギニムに目もくれず、

地上から襲い掛かるギニムに応対しながら

セツナをにらみつける。


セツナ「狙いが俊也さんの持ってるものなら

    私たちの居場所が分かった方が…」


俊也が辺りを見渡すと、街に向かおうとしていたギニム達も

港方面へ動きを変え向かってきていた。


俊也「そうか、なるほど」

千夜「何がよ!!」


千夜は俊也の背中を借りながらぎにむの攻撃を捌く。


俊也「これなら、街の被害は最小限にできる」

千夜「そりゃそうだけどっ!!」


千夜は答えて俊也の正面に回り込んでいたギニムを

見もせず撃ち抜く。

抱えていたセツナを降ろす俊也。


千夜「わたしたちはどうすんのよ!?」

セツナ「…ごめんなさい」

千夜「ごめんですまないわよっ!しゃがみなさいっ!」


千夜の声に俊也は咄嗟にセツナを掴み

目いっぱいしゃがむ。

瞬間、2人の頭上をギニムの巨大な腕がすり抜ける。


千夜「図体がいちいちでかいのよっ!!」


千夜はその腕の隙間からギニムの顔面に

銃弾を叩き込む。


千夜「ああっもうっ!!ガキ!!」

俊也「どうした!?」

千夜「あんたもちょっとは…」

俊也「へ—―…」


瞬間、千夜の回し蹴りが俊也の

みぞ落ちをとらえる。


千夜「闘えっての!!」


吹き飛ばされた俊也はあおむけになり、

痛みをこらえながら、目を開けると

数体のギニムが俊也の顔を覗き込んでいた。


俊也「ど、どうも、お元気ですか?お元気ですよねっ!!どわっ!?」


俊也は勢いよく起き上がりふり降ろされたギニムの上でを交わし

目の前にいたギニムの股下を前転して潜り抜ける。


セツナ「俊也さん!!」


セツナは千夜のもとを離れ、

俊也の方へ走り出す。


千夜「バカ!!何やってんの!!」


千夜は走り出したセツナに怒鳴り

後を追いかけようと――


ギニム「ドケ」

千夜「おまえがどけっ!!」


千夜はストレイド(銃)でギニムの腕を受け止めながら答える。

しかし、俊也に駆け寄るセツナにもギニムが迫っていた。


俊也「セツナちゃん!!」


俊也は背後からくるギニムを気にもせず

駆け寄るセツナに手を伸ばす。


セツナ「と―――」


セツナの上空を飛んでいたギニムの銃器から

セツナの頭上めがけ、銃弾の嵐が襲いか―――


俊也「させ、るかあっ!!!!!」


俊也の叫び声とともに周囲に突風が吹き荒れる。

その風はセツナの周りに収束し

降り注ぐ銃弾をはねのけていく。


セツナ「これ、は…?」


何が起きたのかわからずセツナは足を止める。


千夜「ガキうしろだっ!!」

俊也「え?--」


その声に振り向き状況を確認する前に

視界がぐるぐると周り、頭に

激しい鈍痛が加わる。


俊也はギニムの一撃をもろに受け

吹き飛ばされた先にあった

船の船体に叩きつけられる。


千夜「どけえぇぇええええ!!!!」


千夜の目つきが変わり

目の前にいたギニムを蹴り飛ばし

目にもとまらぬ速さで俊也のもとへ走り出す。


セツナ「千夜さん!!よけて!!」


セツナの声とほぼ同時に、千夜の背後と

上空に控えていたギニムの大群が

千夜に向けて銃器の引き金を一斉に引く。


しかし千夜はそれを確認もせずに

俊也の方へかけていく。


銃弾の雨が千夜に降り注ぐ。


船体の下に横たわり頭から血を流し

倒れる俊也に手を伸ばす千夜。


千夜「俊也っ…!!―――」


その手が届くまであと5m。


しかし、銃弾の雨の方がそれよりも早く

千夜に襲い掛かる。


千夜「がっ、ーーぐっあーー」


千夜は勢いよく駆け抜けていたが

降り注ぐ銃弾に体勢を崩し、俊也の倒れているすこし前に

そのまま倒れこむ。


銃弾の嵐が止み、周囲にいたギニムの大群が地上に降り立ち

少しづつ俊也たちの方に詰め寄る。


そのタイミングでセツナの周りに吹いていた風が霧散し

それに気づいたセツナは二人のもとへ駆け出す。


セツナ「俊也さん!!!千夜さん!!!!」


駆け抜けるセツナに見向きもせず、ギニム達は

俊也たちを包囲する、その数、およそ50体。


血を流し、倒れる二人とそのギニムの大群との間に

一人の少女が立っていた。

すると、ギニムのうち、一回り程巨体なギニムが前に出てくる。


ギニム「ナンダ、オマエハ」

セツナ「っ…」


セツナは逃げ場のない状況と、自分よりはるかに大きな

ギニムを前に言葉が出てこない。


ギニム「キエロ」


ギニムは右腕を振り上げ、目の前の少女めがけて

振り下ろす。


その振り上げた腕を止める術はなく

その振り上げた腕から守る者もなく

容赦なくその一撃は、少女を襲う。









揺らいだ視界、ぼやける意識。

少しづつ痛みで意識が呼び起こされ

体の感覚がよみがえる。


右目の視界は赤く、かろうじで動く

左目を開く。


まず見えたのは数m先に倒れる千夜。

全身血まみれで、金色の髪も流血に染められている。


叫び出したい気持ちがあっても

首が折れかけているのか、うまく声が出せない。


声どころか、両腕両足、指の先すら

動かそうと思ってもピクリともしない。


その光景をとらえた左目に、涙だけが滲みだす。


すると俊也の視界に一体のギニムが迫ってくるのを捉えた。


迫るギニムに対して何をすることもできず、

目の前にきたギニムの巨大な腕につかまれ持ち上げられる俊也。


俊也「あ、ぁぁ…」


掴まれた激痛でうめき声をわずかにあげる。


目の前にギニムの顔があり、その肩越しに

千夜ではない、だれかが倒れているのがかすかに見える。


ギニム「キサマガ、カギノホンタイカ?」


問われた俊也はその問いよりも

涙で滲む左目を凝らして、倒れる誰か見る。


俊也「セヅ、…ナ……?」


この街に来て、最初に出会った少女。

この街で助けてくれた少女。


この街に来て、巻き込まれた少女。

この街で生きていた少女。


なぜ、その少女が


いま、あんな冷たい場所に


横たわり、血ヲ流してイル…?


誰ノ、せイダ…?


ダレガ、悪イ


ギニム「オイ、マダシヌニハハヤイゾ」


その声が耳に届いた瞬間

俊也の左目の眼球が赤黒く染まっていく。


俊也「オマエ、カ」

ギニム「?」


次の瞬間、俊也を掴んでいたギニムの腕が

一瞬にして赤い光に覆われ、飛び散る。


ギニム「ギヤァァアアアァァァ!!!」


ギニムは思わず後ろに体勢を崩す。


掴まれていたはずの俊也の背中から赤黒いオロチのような塊が

無数に伸び始めていた。


俊也の体に刻まれていた傷が

黒ずみ、血が止まる。


ゆらりと地面に足をつける俊也。


何が起きたのわからずギニム達は動揺している。


俊也「…?」


俊也は自分の足に違和感を感じ

視線を落とす。

そこには俊也の足を掴む千夜がいた。


千夜「俊、也…」


声にも、掴む手にも力はなく

払えば一瞬でどかせてしまうような弱いものだった。


千夜の意識はなく、おそらく無意識で

俊也の名を呼び、足を掴んでいた。


それほどに、かよわい力にも関わらず

感情に支配されていたはずの俊也の動きは止まっていた。


俊也「ハナ、セ…」


俊也の声で赤黒いオロチのような影の一つが千夜の腕を掴み

離そうとしているが、その手は俊也の足から離れない。


千夜「離さ、な、い…」


次の声には絞り出した千夜の生命力が宿っていた。

千夜は朦朧としながらも意識を取り戻し

俊也を見上げ、にらみつける。


千夜「あんた、また、わけのわからないもんに、なって、る、わね…」

俊也「…」

千夜「っ…」


千夜は掴んでいた手を放し、地面に手をついて体を起こし、

膝をつき、流れ出る血と痛みをこらえ歯を食いしばりながら

俊也の前で立ち上がる。


肩で呼吸をしながら、口元から血が流れ出る。


千夜「まいどまいど、世話、焼かすんじゃ、ないわよ」


千夜の構えた右手にストレイド(銃)が一丁現れる。


俊也の背中に蜷局を巻いている黒い影がざわつき千夜に

今にも襲い掛かろうとしている。


千夜「ガキは、ガキだ、…っ、そんな面してるやつに」


俊也の黒く染まってしまった左目ではなく

開かくなった右目から、涙がこぼれていた。


千夜「守って、もらうほど、っ…」


千夜は銃口を背後にいるギニムに向けながら

足を引き釣りながら迫っていく。


千夜「弱く、ない、……!!!!」


どう見ても、まともに戦うことすらできないはずの千夜から

あふれる気迫に、数と力で圧倒的に勝っているはずのギニム達は

身動き一つとれない。


千夜「さあ、どいつから、でも、かかって、きな、さい…―――」


千夜はそう言いながら膝をつき、手に持っていた銃は消え、

地面に倒れこむ。

しかし、その千夜を支える腕があった。


俊也「…、ありがとう、千夜」


俊也は意識の途切れた千夜をそっと抱え、

もう一人の少女、セツナのもとに歩き出す。


血を流し倒れるセツナを見て、

俊也は千夜を抱えたまま、

三度ギニムの方へ視線を向ける。


それに合わせて黒い影は霧散していき

俊也の左目はもとに色を取り戻していく。


俊也「千夜、ちょっと待っててくれな」


千夜をそっと地面に寝かせる俊也。

千夜のおでこに自らのおでこを合わせる。


俊也「すぐ戻る」


俊也はそうつぶやくと、立ち上がり

今度はセツナのもとで腰を下ろす。


奪われた命の重さを感じるように

セツナを抱きかかえる。


人の魂には重さがあるのだろうか

セツナの体は、すこし軽くなっている気がした。


失われたものが、もう取り戻せない命の重さが

俊也の意識をより覚醒させる。


俊也「本当に、ごめん、君を、巻き込んで…」


次の瞬間、嘆く俊也の抱えるセツナの体が

突然熱を持ち、赤く光りだす。


俊也「これ、は…?」


セツナの体の熱はさらに強くなり光は火の粉のようにあたりに飛び散る。

勢いを増した炎がセツナと俊也を包み込む。


視界を遮られた俊也が目を開けると

そこは真っ白な空間だった。


先ほどまで感じていた熱もなく

抱えていたはずのセツナが

傷だらけで血を流していたはずのセツナが

出会ったころの姿と変わらず

俊也の目の前に、立っていた。


少女、セツナとは

次回の下編で、謎が明らかになります。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ