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第95話〜別れと決意〜

少年は別れを越え、一つ成長する。

まばゆい光に包まれた千夜は胃を掴まれたような感覚に襲われる。

視界がはっきりしてきたとき、手よりも足よりも口から言葉が先に出る。

千夜「俊也!」

俊也は驚き、声がした千夜の方をみて目を丸くしている。

千夜はその驚いた俊也の下に一気に駆け寄る。

その勢いのすごさに殴られると思った俊也は思わず防御体勢をとる。

しかし次の瞬間、俊也が感じたのは衝撃ではなく、包まれる温もりだった。

俊也「千、夜…?」

言葉はなかったがその気持ちは、抱きしめられた俊也には十分すぎるほど伝わってきていた。

千夜はしばらくそのままで、ふと俊也から離れ立ち上がる。

千夜の顔は鼻の頭が赤くなり、涙は零れていなかったが安堵の表情を浮かべていた。

しかし、次の瞬間。

千夜「ガキ」

俊也「へ?」

答え様、俊也の顔面には、千夜の目にもとまらぬ鉄拳がぶちこまれていた。

その勢いのまま後ろに吹き飛び、本棚に衝突し再度上段の本が落下する。

千波「俊也さん!」

千波はまたもサンライトイエローの光を放ち、俊也目掛けて落下していく本を空中で静止させる。

千夜はその行動に千波をにらみつける。

千夜「ちょっと、あんた誰よ」

千波「あなたこそ、いきなり俊也さんに何するんですか?」

千夜「俊也、さん…?

真実「はいストップ」

千波に詰め寄る千夜の前に割って入る真実。

千夜「邪魔しないで」

真実「せっかくの感動の再会なのに、あんまりじゃないかしら?」

千夜「誰も感動なんかしてない」

真実「そうなのかしら、俊也くん?」

真美は話題の処理に困ったのか俊也に問いかける。

真実「あら?」

しかし問いかけられた当の本人は先ほどの一撃で完全に意識を失っていた。

すると真美はさらに話題を別の人物へと持っていく。

真美「それはそうとあなた、お名前は?」

問われた千波は真美の顔を見て一瞬驚き、問いに答える。

千波「…、千波と、いいます」

真美「そう、千波ちゃんね、こっちは千夜ちゃんよろしくね」

真美に背中を押されながら挨拶を強要される千夜はとてつもなく嫌そうにしている。

真美「ほら、挨拶は?」

千夜「…、ふん」

直後、今度は真美による鉄拳が千夜の鼻頭を直撃する。

千夜「痛っ!何す――」

真美がもう一度拳を構えると千夜は観念したように千波に向き直る。

千夜「よ――」

千波「すみません、俊也さんが心配なので」

千波は千夜の問いかけを遮るように俊也の下へ駆けていく。

遮られた千夜はそのまま呆然と千波が俊也を介抱する様子を見つめていた。

真美「どんまい千夜ちゃん?」

千夜「…、うるさい」


しばらく時が経ち、2人は近くにあったイスに腰掛け待っていると

俊也を近くのソファに寝かせ、介抱を終えた千波が2人の所へ戻ってきた。

千波「あの、お2人は、俊也さんとはどういったご関係なんでしょう?」

その問いかけに真美と千夜は一度顔を見合わせてから答える。

真実「私は…、そうね、俊也くんいわく、師匠かしら」

千夜「つれ」

千波「師匠…、あなたの力でここへ?」

千波はあえて千夜の答えには触れず、真美の答えに質問を続ける。

真美「いいえ、千夜ちゃんの愛の力よ」

千夜「誰の何だって?」

千夜は不機嫌な顔をしながら真美のふざけた回答に噛み付く。

千波「…、あなたは、私と同じ――」

真美「それはそうと、千夜ちゃん」

千夜「何」

真美は千波の言葉を遮り、またも話題を変えようと千夜に話しかける。

俊也「やりやがったな千夜!!」

その声と共に後ろから羽交い絞めにされる千夜。

千夜「!?何しやがるガキ!」

俊也「人がちょっと感動してたってのに、何で急に殴るんだ!?」

千夜「知らないわよ!あんたが何に感動してたかなんて!」

言い争いを尻目に真美はポツリとつぶやく

真美「うしろ、って言おうとしたのだけれど」

千波は真美の近くに歩き近寄り耳元近くでつぶやく。

その問いかけに真美は振り返りもせず小さな声でささやき返す。

言い争いを続けていた2人だが、とうとう千夜が俊也の羽交い絞めから抜け出し

2人は呼吸を荒げながら、臨戦対戦で向き合う。

俊也「これ以上、言い合ってても…」

千夜「埒、明かないわね…」

千夜は言い終わるや2丁拳銃を取り出し、対する俊也は真美の後ろに隠れる。

真美「俊也くん?」

俊也「師匠!やっちゃってください!」

千夜が銃を取り出すや否やすぐさま真美に頼る他力本願な主人公。

千波「俊也さん」

すると俊也の背後に千波が移動し声をかける。

俊也「先ほどは介抱ありがとうございます、でも今ちょっと取り込んでいるので…」

俊也を交わそうとする真美の背中に張り付きながら千波に答える。

千波「良かった、ですね?」

俊也「はい?」

思わぬ一言に瞬間、俊也の動きは止まり、そして真美の背中から体が離れる。

千波「あなたには、迎えに来てくれる方が、大切に思ってくれる方がいるんですね」

俊也「…」

呆然とする俊也に今にも飛び掛りそうにしている千夜を真美は自然に押さえ込む。

千波「短い時間でしたが、あなたに出会えて楽しかったです」

俊也「千波さん、何を言って――」

千波「さようならです」

そう答えると、俊也と千波の間に目には見えない上昇気流が発生し、辺りには

サンライトイエローの光の欠片が飛び散り巻き上がり、後ろにいた真美と千夜もろとも俊也は

中に浮かびあがる。

俊也「千波さん!!」

叫ぶ俊也と千波の距離はすこしづつ離れていく。

千波「あなたには、いかなければならない場所があるんですよね?」

3人の頭上には千夜と真美が来たとき同じ光の輪が現れる。

千波「ここに、いる必要のない人なんです」

千波は話しながら俯く。

俊也「違う!そうじゃない千波さん!!」

俊也は上昇気流に抗いながら、手を必死に千波の方へ伸ばす。

俊也「ここに来たのはきっと、俺があなたに会う必要があったから!

   だからこうして出会えたんです!俺は、あなたに会えてよかった!

   だから――」

次の言葉を発しようとする俊也を勢いを増した気流と、煌くサンライトイエローの欠片が遮る。

千夜「俊――」

俊也に声をかけようとした千夜が光の輪に吸い込まれる。

真美「待ってるわよ?」

そう言った真美も次いで吸い込まれる。

そして俊也の足も光の輪へと飲み込まれていく。

俊也「邪魔、するなぁ!!」

俊也が叫ぶと勢いを増していた気流が一瞬にして止み、

舞い上がっていた欠片が千波のほうへと落ちていく。

その一粒を握り締め、体が半分まで吸い込まれた俊也はまた叫び伝える。

俊也「また、絶対来ますから!用事なんでちゃちゃっと終わらせて、また来ます!」

その声に千波はゆっくりと顔を上げる。

俊也「そのときは俺にも、魔法、教えてください!約束で――」

次の言葉はその場に響くことはなく、ゆっくりと俊也達を吸い込んだ光の輪も収束していく。

わずかに落ちてくる光の粒を見つめながら、もう届かないと分かりながら千波は答える。

千波「約束、守ってね、バカ俊也…」

いい終わった千波の目からはサンライトイエローに輝くきれいな涙が頬を伝って流れ出た。



まばゆい光に視界を奪われ、最後に見た光景を記憶の奥底に焼き付けるように一度目を閉じる

俊也「…」

次に目を開くと、そこは見覚えのある天井、真美の家の部屋、そのベットの上だった。

目を覚まし体を起こすと、部屋には窓際のイスに腰掛ける千夜が毛布に包まって眠っていた。

真美「起こしちゃ駄目よ?」

その声は部屋の入り口から聞こえてきた、真美はゆっくり部屋の扉を閉め、俊也のいるベットの近くで腰を下ろす。

真美「さっきまで、起きていたのよ?千夜ちゃん」

毛布に包まる夜の表情は月明かりに照らされている。

俊也「…、師匠」

俊也は視線を真美へと向ける。

真美「どうしたの?」

俊也「俺、実は」

真美「あとどれくらいなのかしら?」

俊也「え?」

真美の言葉に目を丸くする俊也。

真美「詳しい理由は知らないけど、時間がないのでしょう?」

俊也「ははっ、本当に敵わないな…」

俊也は一度視線を千夜に変え、俯きながら話し始める。

俊也「実は俺、この世界の人間じゃないんです」

真美「あら」

俊也「とにかく理由は分からないんですけど、両親をこの世界にいる

   ギニムに殺されて、俺も殺されかけて、でも助かって」

真美は俊也の言葉に一度だけ頷き、続きを話すように促す。

俊也「そのあと、えらそーなやつが力をくれるって言ったんです

   だから俺、そいつに希望のぞみを叶える力がほしいって」

真美「それが、今のあなたが使っている力?」

俊也「分かりません…、ただそれに近いものなのかなって」

真美「力を得てあなたは何をしたかったの?」

俊也「え?」

真美「力を欲したのだから、欲しいものが、叶えたいことがあったのでしょう?」

俊也「叶えたい、こと…」

俊也は一瞬答えに戸惑い、しかし、次の瞬間、あの日、あの時聞こえた音を思い出す。

俊也「声が…、聞こえたんです」

真美「声?」

俊也「誰なのかは、分かりません、でも俺はその声に救われた

   だからもう一度…」

真美「もう一度、その声を聞きたい」

俊也「はい」

真美「それがあなたがこの世界に来た本当の理由なのね」

俊也「そうです、試練を受けろといわれ、気づいたらこの世界に」

真美は立ち上がり落ちかかっていた毛布を千夜にかけなおし、その頭を一度なでる

真美「でも、あなたたちはこの世界で、まだやらなきゃならないことがあるのでしょう?」

真美の言葉に俊也は希望の顔が頭をよぎる。

真美「希望ちゃんに会いに行くのでしょう?千夜ちゃんと、一緒に」

俊也「はい…」

俊也はすこし戸惑いながら問いかけに答える。

真美「俊也くん、今のあなたの本当の気持ちは、どっちなの?」

俊也の真意を問いかける質問に俊也は黙り込む。


俺の希望は、確かに、あの声をもう一度聞くため、そのためにこの世界に来て

試練というものを受け、ノゾミに出会って、刃界さんに出会って、千夜に出会って、

いろんな人に助けられてきた。

旅をしてきた仲間、この世界でまだ果たさなきゃいけない、ノゾミとの、約束。

俊也の自問自答が続く中、真美はその自問自答が聞こえていたかのように俊也に投げかける。

真美「いま、あなたの心はどこにあるのかしら」

俊也「こころ…?」

真美「人はこの世界に生まれて、身体を与えられ、そこに心が宿り存在しているの

   身体は決して心に逆らえないし、心は身体しには生きられない」

真美の言葉の意味を自分なりに受け止める俊也。

真美「人は、心に従ってその生き方を決めている」

俊也「心に、従う…」

真美「もう分かっているのでしょう?あなたの心は――」

俊也「先に、進みます」

真美はその答えに一瞬返答につまり、疑問をぶつける。

真美「進む…?」

俊也「正直、どっちかなんて、俺には選べないし、決めたらきっと、何か大切なものを

   失う気がするんです、だから」

俊也はベットから立ち上がり千夜のほうへ近づき、先ほどの真美と同じようにその頭をなでながら答える。

俊也「だから、今はこいつと、千夜と一緒に、旅を続けます

   それが、今の俺にできる前に進むってことかなって、思うんです」

真美は俊也の答えを聞き、すこしため息をつく、しかしそれは呆れたというものではない。

真美「少しは、成長したのかしら」

俊也「やめてください、ただ優柔不断なだけですよ」

俊也は立ち上がり、部屋の扉のほうに歩き、ノブに手を掛ける。

真美「どこかへいくの?」

俊也は扉を開けながら答える。

俊也は何も答えずに扉を開ける。

そして扉を静かに閉め、その場を後にした。

俊也がいなくなり、真美は眠っていた千夜に向かい問いかける。

真美「だそうよ、良かったわね」

千夜「…、うるさい」

千夜は真美をにらみつけながらそう返すと、毛布を真美に投げつけ立ち上がる。

真美「でも、忘れては駄目よ?時間は――」

千夜「うるさい!!分かってるわよ!」

千夜は真美の方を見ずに怒鳴り、俊也とは逆に大きな音を立て扉を開け閉めし去っていった。

真美はすこしため息をつき、千夜の投げつけた毛布を畳むのだった。


真美の家の外の草の上に越を下ろす俊也は上を見上げ、何百何千、何万と輝く夜の星を――

俊也「――見えない、んだけど、千夜」

千夜はそんな俊也の視界を遮るように俊也の顔を覗き込んでいた。

千夜「星なんか見たって、軌跡は起こりゃしないわよ」

そういい終わると千夜は覗き込むのをやめ、俊也の横に越を下ろす。

そのまま黙り込む千夜、俊也も空気を察してしばし沈黙を続ける。

千夜「あんたさ」

俊也「え?」

千夜「私と旅を続けて、何か意味あるわけ?」

俊也「は?いや、お前さっきの話し聞いて――」

千夜「どうせ時間もないわけだし、あいつらに会える保証だってない」

千夜はその言葉の後ゆっくり立ち上がり、前に回ると俊也に手を伸ばす

千夜「ほら、立ちなさいよ」

いつもと違う千夜の態度に、違和感を抱きながら、その手を掴み立ち上がる。

俊也「何かいつもと違わない?」

千夜「あんた、私にどんなイメージ持ってるわけ?」

千夜は腰に手をあてながらそう答える。

改めて千夜の表情を見るが、あまり変わったところはなかった。

千夜「はっきり言うけど、無理なものは無理なの

   さっさと諦めてあんたはあんたのやるべきことを――」

俊也「は?だから俺は旅を続けるって――」

千夜「その旅がもう無理だって言ってんのよ!!」

俊也「何で無理なんだよ!!」

千夜「あーもう!!いい!?これだけ足止め食ってるうちにあいつらはもう海の上、

   私たちがこれから急いだって、追いつくのは向こうの大陸についてから、

   分かる?時間のないあんたにはもう無理な話なのよ!」

俊也「他に方法があるかもしれないだろ!?」

千夜「ないわよ!?」

俊也「ある!!」

千夜「いい加減に――!!」

千夜は銃を取り出し、俊也のほうに向けさらに声をあらげる。

千夜「これ以上言うなら――」

俊也「言うなら何だよ!!」

千夜は俊也の足に銃口を向ける。

俊也「ふざけるな!!」

俊也は銃口を向けた千夜の首元に掴みかかる。

俊也「お前今仲間に向かって――」

千夜「はぁ?仲間?いつ?誰があんたの仲間になったってのよ!?」

俊也「千夜、お前――」

真美「いい加減になさいっっ!!」

その怒号と共に二人の間に見えない力が働き、後ろに軽く吹き飛ぶ。

二人は呼吸を荒げながら互いに譲らない意志を相手の眼光に向けて離さない。

真美は二人の間に割って入り無理やり二人の視界を遮る。

真美「私は二人に喧嘩してほしくなかった」

俊也「喧嘩なんてしてませんよ、師匠」

千夜「あんたに言われなくても――」

俊也と千夜は間にいる真美から距離をとり、一気に互いに距離を詰める。

俊也&千夜「分かってます(るわよ)!!!!」

声と共に二人は取っ組み合いになる。

千夜の拳が俊也の顔面に当たる。

俊也「っ!このっ!」

俊也はよろけながら千夜にタックルを仕掛ける。

千夜「負け、ない!!」

千夜はそのタックルをこらえ今度は俊也の腰を掴み捻りながら横に回転し俊也を横に倒す。

横に倒された俊也は両足で千夜の右足を挟み地面の泥にまみれながらぐるりと回る。

千夜「くっ…」

千夜はしりもちをつきながらもすぐに体勢を戻し俊也の上に馬乗りになる。

千夜の拳から両腕を使って必死に攻撃を防ぐ俊也。

千夜「あんたが、私に」

防ぎきれず俊也の顔面に幾度も叩き込まれる千夜の拳。

千夜「勝てるわけ」

とうとう防ぐ力もなくし殴られ続ける俊也。

千夜「ないでしょーが!!」

千夜の最後の力を込めた拳を受け止める俊也。

ボコボコの顔のまま俊也は笑みを浮かべる。

俊也「がとー(勝とう)なんで、思っでない」

俊也はその受け止めた拳を強く握る。

俊也「お前が、諦める姿を、見だぐながっただけだ」

俊也のその言葉に、千夜は肩の力が抜け、気づいた俊也は千夜の拳から一度手を離し

ゆっくりとその拳を開く。

俊也「改めて、よろじくな、千夜」

開いた千夜の手を自分の拳で小突く。そして空いた左の手のひらを千夜に向ける。

千夜「ほんとに、バカ俊也ね」

その手のひらに千夜も返事をするように拳をあわせ、二人はゆっくりと立ち上がった。

真美は二人がこちらへ近づいてくる姿にかける言葉をなくす。

真美「あなたたち、いったいどういう関係なの?」

その問いに二人は一度目を見合わせ、こう応えた。

俊也&千夜「「ダチ(友達)」」

そう応えた二人の表情に迷いわなかった。


2人の間にあった、絆の種が芽吹き、絆の花が咲く。

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