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94話〜涙の先に〜

想いと思いが交差する。

千夜がしばらくの間涙を流し続け、どうすることもできず立ち惚けていると

後ろから真実さんが声を掛けてくる。

真実「女の子が泣いてるんだから、男の子は黙って側にいてあげるものじゃない

かしら」

俊也「俺なんかがいても…、千夜に必要なのは…」

真実「つべこべ言ってないで行きなさい!」

俊也「わっ?!」

そう言った真実さんは背中を勢い良く押し、体勢を崩しながら見事に千夜の前に

辿り着く。

千夜「……」

俊也「っと、…、あー」

俊也はどんな顔をして何をすればいいか分からずに視線を真実さんの方に向ける

知らぬ存ぜぬを決め込み、顔を背けられてしまった。

俊也「え?」

俊也は予期せぬ重力に視線を下ろすと、千夜が俊也の服の袖を掴んでこちら睨み

つけている。

千夜「…邪魔、座んなさいよ」

そう言うと千夜の力に逆らえず、そのまま転ぶ様な形で千夜の隣りに座り込む。

沈黙を回避しようととにかく会話を続けるしかないと余所を向きながら話しを始

めた。

俊也「えっと、あれだな、空が青い理由って知って」

千夜「海の色が反射してるんでしょ、知ってるわよ」

捻り出した会話は2秒の後に終わりを迎えた。しかしまだ挫けずに新たな話題を

切り出す。

俊也「虹が何で7色か、知ってるか?」

千夜「光の3原色の仕組みさえ知ってれば問題ないわ、何あんた、柄でもない話

しないでよ

   ちょーし狂うから」

俊也「えーっと、…いつも俺、何話してたっけ?千夜先生」

千夜「あんたはとにかく、周りのことなんか気にもかけないで馬鹿言ってるくら

いが丁度良いのよ」

俊也「なるほど、そうだな、馬鹿なおれはあれこれ考えるだけ無駄、ってコラ!」

千夜「何よ、その通りじゃない、短絡的なお馬鹿さん?」

俊也「いくら馬鹿でも、大真面目に馬鹿だと言われて嬉しいやつがいると思うか?

千夜「そうね、馬鹿につける薬はないと言うし、撤回するは、アホ俊也」

俊也「アホっていうやつがアホだ!」

千夜「ちょっ、耳元で大声出さないでよ、バカアホ俊也」

俊也「お前こそさっきまでキャンキャン泣きわめいてただろーが!、…、あ」

俊也は思わず言ってはならないこと言ってしまった恐怖から冷や汗を流す。

千夜「…、ふっ、あんたに言われてたら、世話ないわね、ごめん…」

まさかの返しと反応に開いた口が塞がらずぽかんとしてしまう。

すると頭上から別の声が唐突に聞こえる

真実「そうよ、2人とも、うじうじしてないでサンドウィッチはいかが?」

真美さんは2人の前にお手製のサンドウィッチが乗ったお皿を置く。

2人は思わず顔を見合わせる。

俊也&千夜「あはははははは!!」

真実さんは2人の反応に首をかしげている

真実「何がおかしいのかしら?」

2人は良い知れぬ言葉の恐怖に思わず笑い声が止まる。

千夜「ちょ、あんた何笑ってんのよ、最低ね」

俊也「な、お前だって笑ってただろ!」

千夜「そ、それはあんたが先に笑うから釣られて」

俊也「お前もおんなじタイミングだっただろうが」

千夜「馬鹿言わないでよ、先に笑ったのは俊也よね?」

俊也「いいや師匠!千夜も同じでしたよね?」

真実は一瞬、間を開けてから言い放った。

真実「どっちが先とか同じとかじゃなくて、どうして2人は笑ったのかしら?」

真実さんはそう良いながら拳を握りしめる。

俊也「ひっ」

千夜「に、逃げるわよ!」

俊也「あ、待てよ千夜!ずるいぞ!お、置いてくな!」

2人がそそくさと逃げて行く中、真実さんは自ら作ったサンドウィッチを手に取

る。

真実「おいしいのにな、もったいない」

そう言いながらサンドウィッチを頬張るのだった。



逃げ去っていった二人は川のほとりで息を切らしながら座り込んでいた。

俊也「ちょ、お前、逃げるの、はや、い…」

千夜「あんたが、遅い、のよ」

会話をしながら2人はなんとか息を落ち着かせていく。

俊也「…、で、千夜さん、なぜこんなことになったんだろうね」

千夜「あんたがくだらない嘘つくからよ」

俊也「嘘はついてないけど、まあそういうことにしと、…え?」

俊也は問いに答えながら自分の目に映るものに思わず口が止まる。

千夜「?どうしたの、俊―――」

俊也の見つめる先の木の陰から見間違えるはずも忘れるはずもない槍の形と、

黒いフードの隙間になびく青髪がゆらりと揺らめいていた。

その直後、駆け出すより早く、喉から声を出す。

千夜「アメス!!!」

その怒号にも近い千夜の叫びに黒いフードの陰はその場で動き止めた。

が、直後その場から黒いフードの人物は駆け出し俊也の視界からは見えなくなる。

千夜「俊也、ごめん」

俊也「千―――」

俊也の声は空に消え、その場を駆け出す千夜の耳にはおそらく届いてはいない。

千夜「アメス…!!」

千夜は木々の間を目にも留まらぬ速さで駆け抜けながら、視界から黒いフードの

人物に迫っていく。

千夜「逃が、さない!!」

千夜は両手に馴染みの二丁拳銃を取り出し、駆け抜けるのに邪魔な木の枝を吹き

飛ばしながら

さらに加速し距離を詰めていく。

すると黒いフードの人物は数瞬減速し、直後上空へと飛び上がる。

千夜「待て、…、待って、待ってよ!!アメス!!」

千夜はがむしゃらに木の枝を吹き飛ばし自らも上空へ飛び上がる。

森の木々の上空に2人の影が飛び上がり、千夜はこみ上げる気持ちが目からあふ

れて

その人物を見逃さないようにこらえ、相対する人物のフードは飛び上がった頂点

ふわりと風によりその表情があらわになる。

記憶より少し顔が細く、目元には右目に眼帯、左目の色は黒く濁っている。

表情からは子供らしさがなくなり、髪の長さより、細さが際立っている、

千夜「アメス……」

アメス「また、その名で呼んでもらえるとは、考えてもみませんでした」

刹那の会話はそこで終わり2人はまた地上へと落下していく。

千夜はどんな言葉を言えば、何を聞けばいいという自分の考えがまとまらないま

地上に着地し、アメスの方に視線を向ける。

一方のアメスも着地し、2人の距離、わずかに15mほど。

アメス「わたしは、アメスさんじゃ、ないんです、だから、追ってこないでくだ

さい…」

千夜「そんな訳ない!あんたは私の知ってるアメスだ!嘘つくな!」

千夜はそう叫んだ瞬間、せき止めていた想いとともに目から涙が溢れ出し、止ま

らない。

アメス「違うんです、信じてください…」

千夜はそう返すとその場にひざをつく。

アメスはその姿に言葉をかけようとし、けれどもかけずにこぶしを握り締め槍を

振り上げる。

アメス「…、さようなら」

アメスは振り上げた槍を勢い良く振り下ろす、するとその軌跡に沿って空間が裂

けていく。

千夜は涙を流しながら手を伸ばす。

千夜「待って、待ってよ、お願いだから…」

アメスはその裂けた切れ目に消えていく。

千夜「アメス…」

そのとき、千夜の肩に誰かの手が触れた。

俊也「泣くなよ、俺がお前の前に、あいつを必ず連れてくるから」

千夜「俊、也…?」

俊也「これ、借りるぞ」

そういうと俊也は千夜の脇に落ちていた二丁拳銃のうちの一丁を手に取り走り出

す。

消えていく裂け目に走り出しながら俊也は銃を構え、引き金に指をかける。

俊也「っの!!」

俊也の構えた銃から出た弾は裂け目の中へと消えていく。

打ち終わった銃を放り投げ、50センチくらいになった穴へと体をねじ込む。

俊也「友達が、待てっていってんだ!!聞こえないのかよ!?」

穴が序々に小さくなり俊也の体を締め付ける。

俊也の視界の先、裂け目の闇の先でその人物が振り返る。

アメス「あなたに、何が分かるんですか…?」

アメスは受け止めた言葉と、今の気持ちをぶつけるように一発の銃弾を握り締め

る。

俊也は穴に腰の辺りまで体をねじ込みながら叫ぶ。

俊也「何も分かんねぇよ!!おれは、仲間を泣かせるやつが許せない!!それだ

け、だ!!」

叫び終わった俊也はなんとか穴を潜り抜け、その場にひざを着き息を整える。

アメスはゆっくりと槍を構えながら俊也のほうに歩き出す。

アメス「あなたの気持ちなんか、聞いてません」

息を整え終わった俊也が顔を上げると、槍の矛先を俊也の顔の前に突きつけてい

るアメスがいた。

俊也「あんたの気持ちなんか、聞いてない…!」

俊也は突きつけられた槍の矛先を一切の躊躇なく掴み、その指の隙間から血が流

れ出す。

アメス「離して、ください」

俊也「千夜の所に戻るなら離す」

アメス「死にたいんですか?」

俊也「死んでも死にたくない、おれには待ってる仲間が、待たせてる仲間がいる

んだ」

矛先を握り締めたまま立ち上がり、いっそう掴む指に力を入れる

アメス「何にも、何も知らないくせに、仲間仲間って、あなたなんかより、ずっ

    私の方がっ……!!」

俊也「その気持ちを伝える相手はおれじゃないだろ…?」

俊也が言い終わると何かを悟ったのかアメスは槍をゆっくりと下にさげる。

アメスは槍の矛先についた血を見つめ、俊也のほうに向きなおす。

アメス「一度しか言いません、俊也さん、といいましたか」

俊也は首をかしげながらアメスの次の言葉を待つ。

アメス「この世界には―――」

話し始めた直後、アメスの背後にもうひとつのゆがみが突如現れ、手が出てくる。

俊也「おい、後ろ!!」

俊也の声もむなしく、アメスが振り返る前にそのゆがみから伸びた手に口をふさ

がれる。

???「その先を言うなら、今ここで、君の命を終わらせる、その覚悟があるの

か…?」

ゆがみの先から男の声が空間に木霊するように鳴り響く。

アメスはその声に抵抗をやめ、それを見ていたかのように腕はゆがみに戻ってい

く。

???「君には、そうできない理由がある、知っているさ、さあもう時間だ、戻

りなさい」

俊也「おい、お前誰だよ!何を訳のわからないことを――」

アメス「俊也さん!!」

俊也の声をさえぎり、アメスはこぶしを突き出し、強く握り締めたかと思うと

ゆっくりとその手のひらを開き何かを地面へと落とす。

俊也「待て!」

俊也は前方に走り出すも、そのゆがみへアメスは一瞬で吸い込まれ、俊也の伸ば

した手は空を切る。

俊也はアメスの手のひらから落ちたものを拾い上げる。

俊也「これは、さっきの…」

俊也の手のひらには先ほどアメスに向かって撃ち込み防がれた銃弾があった。

防がれたはずのその銃弾にはアメスの血がにじんでいた。




玉座と思しき極大の空間に降り立ったアメスの前に、まばゆい光を放ち、影しか

見えない人物が座していた。

???「どうだったんだい?久方ぶりに会って」

アメス「…」

アメスは銃弾を握り締め血が流れ出るこぶしをさらに強く握る。

アメス「これも、あなたの意志ですか?」

???「僕の意志?そんなものはない、君が望んでいたから、そうなった」

アメス「私が、望んだ?」

???「僕は君の自由に生きてほしいと心から願い続けている」

アメス「…」

黙り込むアメスに座している人物は少しため息をつく。

???「そうだ、君が会ったもう一人」

アメス「…、あれは、あなたの」

???「ああ、そうだ、あれは私の―――」



俊也は途方に暮れていた。

なぜなら、格好をつけて千夜に台詞をはき、銃を撃ち、穴に飛び込み、青春真っ

盛りの言葉を撒き散らし、その挙句、飛び込んだ先の何もない空間に、置き去り

にされていた。

普通ならこういう流れの場合、相手が消えれば自然ともといた場所に戻るなど、

お決まりの流れが

あるはず、だが、現実そうはならず、その場に座り込み頭を抱えているのが現状

である。

俊也「ひょっとして、取り残されてること、忘れられてない??

   まさか、このまま一生ここで…」

その先は考えただけでも恐ろしく、口にするのをやめた。

しばらく、といっても小1時間程度時間が過ぎ、とりあえず歩くだけ歩いてみた

俊也だったが、一向にどこかにたどり着く気配もなく、また座り込もうとしたときだった。

俊也「んあ?!」

急に右足が地面に飲み込まれ体勢を崩す。

俊也「落とし穴!?や底なし沼!?」

次いで左足が同じように地面に飲まれ、腰のあたりまで地面に入っていく。

俊也「ちょ、これ、やば」

俊也の次の台詞は聞こえることはなかった。



俊也「いてっ!!」

俊也は地面に飲み込まれ数秒後にどこかの地面にたたきつけられていた。

目を開くと、そこは見覚えのある世界のある場所にそっくりだった。

俊也「ここは、図書館…?」

俊也は辺りを見渡し本棚に所狭しと並ぶ古書とラックに並べられた雑誌、図書館独特の本の匂い

それらの視覚、嗅覚すべてが自分が元いた世界のときに訪れた図書館と記憶が一致していた。

俊也「まさか、このタイミングで…?」

俊也が状況が飲み込めず混乱していると、急にチャイムが鳴り始めた。

俊也「これは、学校の…」

音がその場所に響き続ける中、俊也はある違和感に気づく。

それは図書館に誰も人がいる気配がしないことだった。

俊也「誰も、いない…?」

俊也は少し不気味に感じるチャイムの音を聞きながら、図書館の本棚の間を歩く。

ふと目に留まった古書を手に取ろうとした瞬間。

???「何かお探しですか?」

俊也「どわっ?!」

俊也は驚きのあまり取ろうとした本棚に背中から思い切りぶつかる。

その衝撃で本棚がゆれ上段にあった本が大量に頭上に落下する。

???「危ない!」

その声と瞬間的なサンライトブルーの光が見えたかと思うと、頭にあたる直前で落下してきていた本はすべて空中で動きを止めていた。

驚きのあまり倒れこんでいた俊也はゆっくり目を開けその人物を見る。

俊也「千、千夜…??なのか…??」

その女性は千夜と同じ金髪で腰の下までの長さがあり首には淡いオレンジ色の古ぼけたマフラー、

服装は冬のコートのようなものと黒赤色のロングスカートに茶色のブーツ、ただ、身長は千夜より大きく、俊也と同じくらいの背の高さ、顔つきもほとんど千夜そっくりだが、知っている千夜と比べると幾分か大人びて見える。

???「どなたかと、間違われているのではないですか?」

その女性はそう答えると右手に持っていた20cmくらいの木の棒らしきものを一振り、その瞬間浮かんでいた本がすべて本棚へと戻っていく。

唖然とその光景を見ていた俊也に、その人物はゆっくりと手を差し伸べる。

???「お怪我はございませんか?」

俊也「だ、大丈夫、です…」

俊也はしどろもどろになりながら伸ばされた手につかまりゆっくりと立ち上がる。

俊也「えと、あなたは、その、あ、ここってどこ、ですか?」

???「自己紹介がまだでしたね、大変失礼しました」

その女性は一例して一度コホンと軽く咳払いをしてから話し始める

???「改めまして、こんにちは、私は千波と申します」

俊也「はじめまして、俊也っていいます」

千波「俊也さん、良い名前ですね」

俊也「あ、ありがとうございます」

千波「立ち話もなんですし、こちらへどうぞ」

俊也は千波に案内されるがままにあとをついていき、図書館内の喫茶スペースらしきところの椅子に腰かける。

千波「さて、俊也さん、ここにいらしたのは初めて、でしょうか?」

俊也「あ、はい」

千波「ではこの場所に関して、まずはご説明いたします」

千波はそういうとまた先ほどの木の棒を手に取り、一振りする。

同様にサンライトブルーの光が木の棒から周囲に飛んでいき、球体のガラスのようなものがいくつも現れる。

千波「この世界はいくつもの空間、新世界と、その狭間にある原世界から成っています

   よろしいですか?」

俊也「えと、すみません、全然わかりません」

千波「簡単にいうと生まれたあとの世界が新世界、生まれる前の世界が原世界です」

俊也「…、な、なんとなく、分かりました」

千波「そうですか、話を続けますね、その原世界というのは世界に成る前の世界、

   言い方は悪いですが、世界に成れなかった世界ということです」

俊也「とりあえず、最後まで聞いてから質問します…」

俊也は一度理解するのをあきらめとりあえず千波の話を聞いてみる決断をした。

千波「わかりました、その出来損ないの世界の中でも、生物は存在しております、しかし

   新世界とは大きな違いがあるのです、それは…」

言葉のあと、再び木の棒を一振りすると、浮かんでいた球体が砕け散り俊也の前で

ひとつの球体へと変化し、その中には古びた図書館らしき建物が映っていた。

千波「これがこの書庫、サウザーヴ書庫です、そして」

さらに木の棒をふると横にあった窓が開け放たれ、俊也はその窓の外を見て言葉が出なかった。

千波「出来損ないの世界には、ここしかありません、生きているのも私だけ

   たった一人の世界です」

外にはなにもなかった、先ほどまで窓から見えていた景色はまぼろしだったのか、他の窓の先にも暗闇しかみえなかった。

千波がもう一振りすると窓が閉まり、先ほどまどに映っていた外の木々がそこには映っていた。

千波「私しかいないのですから、ここは私が思うとおりになります、私は本が好きだったので

   このような場所にしています、あなたのようにたまに迷い込んでくる方を

   もてなしたことも何度か」

千波は立ち上がり一度背を向けてから俊也のほうへ向き直る。

千波「さて、この場所の説明はこんなところでしょうか?俊也さん、ご質問はありますか?」

俊也はいろんな感情と思いが浮かんでいたが聞かなければ成らないことをひねり出す。

俊也「同じようにここに来た人は、今どこにいるんですか?」

俊也の質問に千波の顔は曇り、また椅子に腰を下ろし問いに答える。

千波「そうですね、ある人は、その窓から外に出て戻ってきていません

   もう一人はこの閉ざされた世界に耐え切れず自ら死を選びました

   その後に来られた方は、この世界から出て行きました

   次に来たのが俊也さん、あなたです」

俊也「おれの前に来た人、世界から出て行った、っていうのは、どうやって?」

千波はその質問にすこし沈黙を空け、俊也の問いに答えた。

千波「…、申し訳ありません、言い方を訂正いたします、その子は自らの力で

   狭間に穴を空け、出て行きました」

俊也「それ、どうやったら出来ますか?おれにも出来ますか?」

千波「分かりません、私にもどうやってあの子がその力を行使したのか理解できませんでした

   お役に立てず、ごめんなさい」

俊也「い、いや、千波さんが謝る事じゃないです、こちらこそ、なんかすみません」

千波「いいんですよ、久しぶりに誰かと話せて、私は十分楽しいんです」

千波の笑みから何かを感じ取った俊也は質問をやめた。



俊也がアメスの作った穴に消え、幾ばくかのときが過ぎ、日が暮れかけていた。

千夜「…」

千夜はしゃがみこんだままだったが、次の瞬間、千夜のお腹が鳴った。

真実「何で2人とも、お腹が空いているのに戻ってこないのかしら」

千夜「…」

真実は静かに返事をしない千夜の横にしゃがみこむ。

真実「俊也くん、どっかいっちゃった?」

真実のその言葉に、先ほどまで収まっていた千夜の涙腺が緩み始める。

千夜「あい、つは、アメスを、友達を…」

真実「落ち着いて、ゆっくりでいいから、話してみて?」

千夜は真実に促され、ゆっくりとその場で起こったことを説明し始めた。

説明が終わるころにはすっかり辺りは暗くなり、二人を照らすのは月灯りだけだった。

真実「なるほどね、よし、千夜ちゃん、そういうことならお姉さんに任せなさい!」

千夜「え?」

真実「こう見えて私はあの子の師匠なのよ?」

そう答えると真実は立ち上がり、そのまま空を飛んだ。

千夜「は?え?と、飛んでる?」

千夜の驚きの声に真実はゆらりと千夜を見下ろしにこりと笑みを浮かべる。

真実「そりゃそうよ、だって私、魔法が使える魔女なんだから?見ていなさい?」

そういうと真美の振りかざした右手の人差し指の先に丸い光の輪が現れる。

それをくるくると回し始め、序々にその輪が大きくなる。

千夜は何が起こっているのかわからず、思わず立ち上がり光の輪を見つめる。

真実「これくらいかしらね?いつでも準備OKよ!」

真美の上には人ひとり分が通れるくらいの輪が出来ていた。

真実「千夜ちゃん!あなたは待つくらいなら自分から行く子でしょ?」

千夜「それは…」

真実「行きなさい、後先考えるのはあなたじゃないわ、出たとこ勝負よ?」

千夜は真実がなぜ自分のことをそこまで理解しているのか、疑問を抱いたが

掛けられた言葉こそ、次に自分が取るべき行動を指し示していた。

千夜は一度腰を落とし、次の瞬間、真実の作った光の輪めがけて飛び上がった。


繋がれ、2つの世界。

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