第93話 〜疑惑〜
過去の
俊也
「ふぅ〜、寒っ!!」
俺はあまりの寒さに体を震わせる。
俊也
「そうだ、川に行ってみるか!」
俺は顔でも洗って目を覚まそうと思い、川に向かった。
すると森の奥には霧が立ちこめている。
俊也
「すげー霧、前が見えないや……」
俺は木と木を手探りで探しながら川のある方向へ足を進める。
何度か転びそうになりながらもどうにか川に辿り着くことができた。
辺りは小屋を出たときより幾分か朝日が差し、霧がキラキラと輝いて見える。
俺は取り敢えずその景色を見ながら腰を下ろす。
俊也
「綺麗だなぁ……」
俺はそう思いつつ川の水で顔を勢い良く洗った。
俊也
「冷たっ!!」
俺はそう感じたが、何度もやる内にさっぱり気持ち良くなってきている。
俊也
「ふぅ、さっぱりした」
俺は袖で顔を拭き、腰を上げようとした時、草が動く音を聞き、動きを止める。
俊也
「何だ……?」
俺は辺りをおもむろに見渡し違和感を探す。
が、辺りには何もいないようだ。
俊也
「気のせいか……」
俺は今度こそ立ち上がり歩きだそうとした時だった。
???
「コヒィーン!!」
突如川の向こう側から勢いよく奇声が聞こえる。
俊也
「この声は……、鳥馬?!」
俺が振り替えると見覚えのある鳥馬がこちらを見ていた。
俊也
「げっ!まじかよ……」
どうする!?
この間よりは強くなったとは思うが……
自信ねぇ……
俺はやはり無理と決断し森の中に走りだす。
するとやはり背後から鳥馬が追ってきた。
鳥馬
「コヒィーン!!」
鳥馬はどうやら俺を逃がす気はないような勢いだ。
俊也
「くそっ、どうすれば……!!」
俺は霧の中思うように早く走れずに焦っていると、足に違和感を感じた。
俊也
「しまっ……!!」
俺は思いっきり顔から地面にダイブする。
俊也
「痛てぇ〜、はっ!!」
俺が痛みを感じている間に背後に鳥馬がいる事を忘れていた。
鳥馬
「コーー、ヒィン!!」
鳥馬は自慢の鋭く尖ったくちばしを大きく振り上げる。
俺は咄嗟に両腕を前で構えて言った。
俊也
「吹き飛べっっ!!」
次の瞬間俺の体は宙に浮き上がり後ろに吹き飛んだ。
鳥馬が振り下ろしたくちばちは見事に躱され地面に突き刺さる。
俊也
「あ、あぶなかった……」
俺は数m程後ろの位置で尻餅をついていた。
そうだ!逃げなきゃ!!
俺は慌てて立ち上がり刺さったくちばしを抜こうとして藻掻いている鳥馬を一瞬見て走りだす。
が、そううまくはいかなかった。
振り替えるとそこにはもう一頭の鳥馬が既にくちばしを振り上げている所だった。
俊也
「しまっ……!!」
すると目の前に黒い影が現れくちばしを真っ二つにした。
鳥馬
「コヒィィーン……」
と、言うか細い断末魔と共に鳥馬は倒れてしまった。
俊也
「や、槍……??」
俺の右にある木には深く刺さった槍が刺さっていた。飛んできたって事は……
俺は槍が飛んできたと思われる方向を見てみると少し遠いが人の姿が見えた。
俊也
「あ、あのー!!、あなたが助けてくれたんですか!!」
俺が叫ぶと、その人はこちらに近付きながら返してきた。
???
「助けられて良かったです!!」
その人はどうやら声で女性だという事が分かった。
するとその女性が俺の前まで来て立ち止まる。
俊也
「こ、こんにちは」
???
「こんにちわ、怪我はないですか?」
そう言ってほほ笑みかけてくれた女性は俺より背が大きく、髪は千夜よりは短いがかなり長い、色は水色でしっかりした瞳、服は真っ黒の上下の服に上から少し年代ものらしきコートを羽織っていた。
俊也
「は、はい……」
と、俺はある事に気付き木に刺さった槍を手にする。
俊也
「今取りますから、ふぬぬぬっっ!!」
俺はかなり力を入れて抜こうとするが、びくともしない。
???
「ちょっといいですか??」
俺は槍から手を離し一歩下がると女性はいとも簡単に槍を木から抜いてしまった。
俊也
「あ、あはは〜」
俺、力無いな、情けない……。
そう思っていると女性が言う。
???
「あの、君の名前、教えてくれませんか??」
急に言われ、焦りつつ答える。
俊也
「と、俊也です……!!よろしく」
俺が名前を言った途端彼女の目が見開き一歩下がっていく。
俊也
「え、……あの、どうかし」
俺が聞きおわる前に彼女は物凄い速さで森の中に消えていった。
俊也
「……、何かおかしかったか??」
俺は心の中でもう一度感謝し、小屋に向かって歩きだした。
そのころ川辺に息を切らしながら座っている女性がいた。
???
「そんなっ、何で、どうして……」
あんな、あんなに似てるなんて聞いてない。
私を苦しめる為?
それとも偶然?
彼に、似ているなんて……
私は口に出さないと決めた言葉を噛み締める。
???
「っ、……、」
彼女はあまりの衝撃に涙を流す他、気持ちを押さえる方法を知らなかった。
俊也
「ただいまー……、で、いいのか?」
俺は小屋のドアを開け思わず言ってしまった言葉に疑問を浮かべる。
俊也
「まぁ、いいか、別に」
と結局対して気にもせず、部屋に入る。
俊也
「あ」
とそこには千夜と真実さんがこちらをじっと見つめて座っていた。
どうしよう、心配されたのかな……
俺が声を掛ける前に千夜が喋りだす。
千夜
「どこいってたのよ」
千夜は少し起こり気味なようだ、目で分かる。
俊也
「いや、まぁ、散歩だよ……」
すると今度は真実さんが言う。
真実
「服、泥だらけになる散歩??」
俺は言われて、転んだ時の事を思い出した。
俊也
「いや、途中で鳥馬に出くわしちゃって……」
千夜
「倒したの?、あれ」
千夜は意外そうな感じで言う。
俊也
「それがさぁ、でっかい槍を持った女の人が助けてくれたんだよ」
真実
「あら、その方はどこに?お礼を言わなきゃ」
俺は少し悩んでから答える。
俊也
「それが、名前教えたらどっかに行っちゃいました……」
真実
「そう、残念ね、千夜ちゃん」
すると千夜はまったく反応見せずにこちらを睨んできた。
千夜
「そいつ、どんなやつだった??」
俊也
「え?あぁ、後確か髪が水色で長い髪だったよ、たぶん旅人じゃないか?ローブ羽織ってたし」
それを聞いた千夜は急にポケットに指だけツッコミ宝石を取出し中から一枚の紙を出した。
千夜
「もしかして、この槍じゃなかったか??」
千夜はその紙、その写真の大部分は指で隠し槍の絵だけを見せてきた。
俊也
「あ!これだよこれ、何で分かったんだ!?」
すると千夜は今度は写真をすぐに宝石にしまい、立ち上がる。
俊也
「千、夜……?」
千夜
「ちょっと、行ってくる」
千夜はそう言うと部屋を飛び出していった。
真実
「……行ったほうがいいんじゃないかしら?」
真実さんはこちらを見ずにそう言った。
俊也
「……はいっ!」
俺は返事をするや否やすぐ千夜の後を追い掛け走りだす。
小屋を出ると意外にも千夜は草の上で立ち止まっていた。
俺はゆっくり近付き声を掛ける。
俊也
「千夜、……どうしたんだ?」
千夜は黙ったまま振り返ろう共しない。
俺は千夜の真後ろまで近づく。
俊也
「千夜??」
俺は千夜の肩を軽く掴みこちらを向かせた。
俊也
「!!」
驚くしか、なかった。
千夜が、あの千夜が。
どうしようもなく、押し黙って、歯を噛み締めて。
ボロボロと涙を流し、泣いている。
千夜
「バ、カよね、何、勘違いして、るのかし、ら……あいつは、あいつ、が、いるわけ、ないのにっ……!!」
千夜は言い終わるとそのままこちらにしがみついて、今度は声を出して大声で泣いている。
俊也
「ちょっ、わぁっ、えっと千夜!?え、あ、な、泣くなって、な!?」
俺は幼い子供をあやすように千夜の頭を撫でる。
とにかく今は理由はどうでもよくて、只、千夜が泣き止んでくれる為に頑張ろうと必死になる事しかできなかった。
第94話へ続く
亡霊




