第78話 〜行先〜
これまでの過去編の暗さが嘘のように。
二人はお互いが恥ずかしくなり顔を赤らめながらそっぽを向いた。
あー、何で俺っていっつもこうなんだろ・・・
私、何でこんなにタイミング悪く・・・
二人が自分の事をあーだこーだ反省していると二人の間に夜中特有の寒い風が通り抜けた。
俊也
「へ、へっくしょん!!」
俊也は余りの寒さにくしゃみをしてしまった。
まぁそれもそのはず俊也は半ば追い出されるような形で宿を出て来たためローブを着ていないからである。
するとノゾミがそーっと俊也の方を向き心配そうに見ている。
ノゾミ
「ローブは・・・?」
俊也は鼻水を啜りながらノゾミの方を向く。
俊也
「いや、その・・・着れなかったというか着る暇がなかったというか、その・・・」
俊也は言っている途中で自分が何を言っているのか分からなくなりしどろもどろしている。
するとノゾミが俊也の方に近付きローブをそっと俊也に掛けた。
俊也
「えっ・・・?」
俊也は思わずノゾミを見つめる。
ノゾミ
「これで大丈、・・へ、へっくしょん!!」
ノゾミは言っている途中にかなり大きなくしゃみをし鼻から鼻水が垂れている。
俊也はローブをまたノゾミに掛けた。
俊也
「あのなー、自分の事も考えろよな?」
ノゾミは鼻水を啜りながら笑った。
ノゾミ
「えへへ、だね。」
俊也は満月の光に照らされながら笑うノゾミに見惚れた。
ノゾミ
「どうしたの?」
俊也
「え、あ、いや、別に、何でもない・・・」
俊也は照れながら頭を掻いた。
するとノゾミは少し不安げな顔をし俯いた。
ノゾミ
「あのね?さっきは怒鳴ったりしてごめんね・・・私、どうかしてた・・・」
俊也は急に謝られ何のことかを思い出すのに時間が掛かった。
俊也
「あ、あぁ、あれは俺の方こそ簡単に言っちゃってごめん・・・」
するとノゾミは自分が謝られるとは思っていなかった様で急に顔を上げる。
ノゾミ
「ち、違うよ!私が悪いの!俊也は悪くない!」
俊也はそれに対抗する。
俊也
「いいや、俺が悪いんだ!ノゾミの事を知ったような口で簡単に言ったから・・・」
するとノゾミはローブが落ちたことも気にせずに立ち上がった。
ノゾミ
「だから私が悪いって言ってるでしょ!?」
また俊也も負けじと立ち上がる。
俊也
「何でノゾミはいっつも自分のせいにするんだ!!」ノゾミと俊也はまた例の如く顔を至近距離まで近付けていることにはまったく気付いていない。
ノゾミ
「そーゆう俊也こそ自分が悪い、悪いって言ってばっかりじゃない!?」
俊也とノゾミの顔は既に鼻がくっつく所まで近づいている。
何故気付かないのだろうか、この二人は。
俊也
「違う!!!!」
ノゾミ
「違わない!!!!」
俊也
「だから違うって!!」
ノゾミ
「ちがう!!」
最早この二人の会話は痴話ゲンカにしか見えない。
俊也
「あ、もういい!!俺帰る!!」
ノゾミ
「私だって帰る!!」
と二人は足早に宿に向かって歩きだした。
俊也
「何で付いて来んだよ!!」
ノゾミ
「そっちこそ付いて来ないでよ!!」
二人は同時に立ち止まり睨み合う。
俊也
「じゃあノゾミ先行けよ、俺が後から行くからさ!!」
ノゾミ
「えぇ、行きますよ、行かせてもらいますーだ、べー。」
ノゾミは俊也にあっかんべーをしながら足早に宿に戻っていった。
俊也
「俺、何しに来たんだっけ?」
俊也はそう考えながら歩いて宿に戻った。
ガチャ、バタン。
俊也
「(・・・ん?)」
俊也は部屋の様子がおかしい事に気が付いた。
刃界さんとノゾミが・・・
いない・・・?
俊也が今し方着いた部屋は間違いなく四人が泊まる筈だった部屋である。
が、しかし千夜は布団にいるようだが他の二人が見当たらない。
俊也は少し不安になり部屋の明かりを付け(そうしないと真夜中なので辺りがよく見えない)千夜を起こしに掛かった。
俊也
「おぉーい、千夜。ちょっと起きてくんないか?」
俊也は起きた瞬間に殴られるのは嫌だったので軽く肩を揺らす。
が千夜はうん、と唸るだけで起きる気配はない。
どうしたもんか・・・
俊也が千夜の起こし方に悪戦苦闘していると
千夜
「俊也・・・・」
俊也
「わっ!?何だよ、起きてたならそう言っ・・・れ?」
俊也は言っている途中で千夜の寝言であることに気付いた。
何故ならその本人がまた、先程と同じ様に気持ち良さそうに寝ていたからである。
俊也
「寝言かよ・・・はぁ・・」
俊也は深くため息を付き覚悟を決める。
こうなったら・・・
無理矢理にでも起こす!!
でも、防御態勢は崩さずに・・・
と、俊也は心に決め少し声を張り上げながら肩を揺らす。
俊也
「千夜!!起きてくれ!!」
すると千夜の目蓋がゆっくり開くのを確認すると俊也は一瞬にして後ろに下がり両の腕を構える。
千夜
「ん、誰??」
千夜は意外にも普通に目を擦りながら応対した。
俊也は内心ほっとし両の腕の警戒を解きベットに座る。
俊也
「あのさ、さっき戻ってきたら刃界さんとノゾミがいなくてさ、千夜、知らないか?」
千夜はまだ目を擦りながら必死に頭を抱え悩んでいる。
千夜
「私、知らない、あ、眠い・・・」
と千夜は既にウトウトしていた。
俊也
「そうか・・・、俺、ちょっと探してくる。」
と俊也が立ち上がり部屋から出ようとすると千夜が袖を掴んできた。
千夜
「明日でいいじゃない?別に。」
俊也
「何かさ、胸騒ぎがして・・・」
何か、とても嫌な感じがする・・
もう二度と会えないような、感じ・・・
俊也は千夜の手を振りほどこうとするが千夜は離してくれない。
寝起きなのに力は変わっていない。
俊也
「なぁ、離してくれよ?」
俊也は少しいらつきながら千夜を見る。
千夜
「・・・・・嫌。」
俊也
「は?」
俊也は千夜がおかしいことに気付いた。
俊也
「何でだよ?」
千夜は暫らく俯いて答えを返さなかった。
俊也はいい加減痺れを切らし力づくで振りほどこうとしようとした時だった。
千夜
「あいつら、帰ったんだよ。自分の国に・・・」
俊也は振りほどこうとした手を止め千夜を見る。
俊也
「知らないんじゃなかったのかよ!!」
俊也はいらつきが最高潮に達し怒鳴る。
が、千夜は驚かずに俊也を見る。
千夜
「俊也が来る、数分前にノゾミが帰ってきたんだ・・・」
ガチャ、バタン。
千夜はその音で少しだけ目を覚ましていた。
刃界
「姫、話しは付きましたか?」
ノゾミは急に話し掛けられ少し驚いた。
ノゾミ
「え?あ、はい・・・」
刃界はノゾミの返事を確認すると荷物を抱えた。
刃界
「それでは行きましょう。」
ノゾミは不思議そうに尋ねた。
ノゾミ
「どこに・・・?」
刃界
「王が待っている、故郷ゼバリースに、です。」
ノゾミは驚きを隠せなかった。
ノゾミ
「え!?そんな急に、せめて明日でも・・・」
刃界
「私は王に言われ貴女をずっと探してきました、それが王の願いだったから、姫、貴女は王に、いえ父に会いたくないのですか?」
ノゾミは正直どう答えればいいのか分からなかった。
確かに、父上には会いたい、でも二人を置いていくなんて・・・
ノゾミ
「父には・・会いたいです。でも二人を置いていくなんて私は嫌で」
刃界
「二人は関係ありません、貴女は一国の姫なんです。それに、この際言いますが二人に迷惑を掛けているのは貴女です。」
ノゾミ
「それは・・・でも!!」
刃界はため息を付いた。
刃界
「お願いします、そうでなければ王は・・・もう・・・」
刃界は珍しく俯きながら声を窄めた。
ノゾミ
「父が、何ですか?」
ノゾミは聞きながら自分の心臓がやけに大きな音をたてている事に気付いた。
刃界
「王の命はそう長くありません・・・」
衝撃だった。
ノゾミは余りの事に声が出せないでいた。
頭でも理解が追い付いていかない程の衝撃。
刃界はそんなノゾミに助けを縋るように見つめた。
刃界
「来て、くれますか?」
ノゾミは胸の前で手を握り締めていた。
ノゾミ
「わかり、ました・・」
千夜
「そして二人は部屋から出ていった・・・」
俊也は千夜の説明は理解していた。
がある事に怒りを感じていた。
俊也
「何で止めなかったんだ!!」
千夜
「止めてどうなるの!?第一私達に付いていく理由なんてないじゃない!!」
俊也
「理由なんてない!!けど・・・こんな別れ方は間違ってる!!」
そう言うと俊也は千夜の腕を掴んだ。
千夜
「え?ちょっ――」
俊也
「今ならまだ・・・!!」
そして二人は部屋を飛び出た。
第79話へつづく
疾走感ある終わりっていいですよね。




