第77話 〜理由〜
過去編最終話。
千夜
「ん・・・・」
千夜は目を覚ました。
どうやら感触で自分のベットに寝ていることが分かり半分体を起こしぼーっとしていると突然誰かが部屋に入ってきた。
ヤオ
「千夜さ・・・!!って銃下ろしてくださいよ・・」
千夜は無意識にヤオに銃を向けていた事に言われてから気付き銃を下ろす。
千夜
「悪ぃ悪ぃ、ついね?で、どうしたんだ?こんな朝っぱらから。」
ヤオはそれですよ!と言ってから話し始めた。
ヤオ
「今朝、ノゾミさんが脱走したんです!!」
千夜はその言葉に飛び上がりヤオに駆け寄る。
千夜
「脱走って・・・どうやって!?」
ヤオ
「よく分からないんですが報告によると警備兵を隠し持っていた銃で射殺し鍵を奪い脱走し城内で会った兵士にも銃を撃ち重傷を負ってます、今必死に探しているんですが・・・」
千夜はそれを聞きおわる前に部屋を飛び出ていた。
千夜
「はっ、はっ・・・!!」
千夜は走っていた。
ノゾミ!!
どこにいるんだ!!
千夜
「くそっ・・・」
千夜はまたテラスにいた。
あの後ノゾミは見つからなかった。
最後にノゾミが見かけられたのがラビリスの森の入り口。
もう森に逃げられたら探すのは困難・・・
千夜
「くそっ・・・」
千夜は手摺りを拳で殴る。
ヤオ
「千夜さん・・・」
千夜は後ろにヤオがいることに気付き振り向く。
千夜
「見つかったか?」
ヤオ
「いえ・・・でもかならず見つけだします。」
千夜
「なぁ、ヤオ、頼みがあるんだけど・・・」
ヤオは千夜の真面目な顔に一度頷き待った。
千夜
「あいつを、・・ノゾミを指名手配にしてくれる?」
ヤオ
「なっ!?本気ですか!?」
千夜は尚も真面目な顔で答える。
千夜
「うん、これが私の最後の頼みだから。」
ヤオはその言葉に疑問を抱き聞き返す。
ヤオ
「最後って、一体どうゆうことですか・・・?」
千夜はヤオから目を逸らし遥か彼方の空を見つめながら答えた。
千夜
「私は、隊長を辞める。」
ヤオは千夜の思いもよらない言葉に黙っている事しか出来ない。
千夜
「そして、ノゾミを探し出す!!そして・・・」
ヤオはごくり、と唾を飲み込み次の言葉を待つ。
千夜
「この手で・・・この銃であいつを殺す!!」
ヤオは千夜の肩を激しく揺らしながら怒鳴る。
ヤオ
「何で、何で殺さなきゃいけないんですか!?そんなことをして、何が・・・何が変わるんですか!?」
千夜はヤオの手を静かに退けて言った。
千夜
「何も変わらない、だけど、私の生きる理由はそれしか見つからないんだ。」
ヤオは不思議に思った。
何故、
何故、千夜は
笑っているのか。
何故、こんなにも優しい笑顔で笑えるのか、
不思議だった。
そして気が付いたときには千夜の姿はどこにもなかった。
現在
俊也
「・・・・・」
刃界
「・・・・・」
二人は黙っている俊也と刃界の反応を待った。
すると俊也は立ち上がり言った。
俊也
「二人共、凄いな?」
言われた千夜とノゾミを含め刃界までもが唖然としている。
千夜
「どういうこと?」
俊也
「だってさ、普通そんな事になったらまず間違いなく俺は立ち直れない、ましてや生きてることすら嫌になる。」
俊也は一度区切りノゾミと千夜を一度見てから続けた。
俊也
「それでも二人は今、こうして生きてる。それって凄い事だろ?」
千夜
「かっ」
ノゾミ
「簡単に言わないでよ!!」
千夜はノゾミに遮られ黙った。
俊也はノゾミに質問する。
俊也
「別に簡単になんか言っ」
ノゾミ
「言ってるよ!!いくら私達の過去を聞いたからってすべてが分かるわけじゃない!!俊也は・・俊也は結局何も分かってない!!」
バタン!!
ノゾミはそう言うと勢いよ部屋から出ていった。
俊也
「ノゾ、ミ・・・」
俊也はベットに座り込んだ。
すると刃界は立ち上がり俊也を見ずに言った。
刃界
「姫が心配だ、探しに行ってくる。」
ガチャ、バタン。
そう言うと刃界はノゾミのローブを手に取り部屋から出ていった。
俊也は頭を抱えながら呟いた。
俊也
「・・・千夜は、言わないのか?」
千夜は足を抱えたまま答える。
千夜
「ノゾミに全部言われちゃったしね。付け加えるとしたら・・・『あんたなんか大っ嫌い!!』、かな。」俊也
「はは、確かにそうだな・・・」
俊也は千夜を見ないように体を寝かせ横を向いた。
千夜
「それで終わり?」
俊也
「へ?」
俊也は一瞬何を言われたのか分からず素っ頓狂な声を上げ千夜の方に体を向ける。
すると千夜は立ち上がってこちらを見下ろしていた。
千夜
「へ?、じゃないわよ、それで終わりでいいわけ、あんたは。」
俊也は千夜の目から顔を背けて答えた。
俊也
「いいわけ、ないだろ・・・?でも・・・」
千夜は腰に手を当て怒鳴る。
千夜
「あ、もう!!あんたも男ならはっきり言いなさいよ!!」
俊也は少しカチンときて体を起こして負けじと怒鳴った。
俊也
「でも俺にだって出来ないことは出来ないんだよ!!」
千夜
「まだやってもないのに出来ないなんて言ってんじゃないわよ!!やりもしないでどうして分かるわけ!?」
二人は知らない間に顔が寸での距離まで近寄っている事に気付かずに怒鳴り合う。
俊也
「だからやることも分からないのに出来るわけないだろ!?」
千夜
「ならやることを探す努力はしたの!?私には諦めただけにしか見えない!!」
俊也はそこで黙ってしまった。
俊也
「それは・・・」
千夜は黙り込む俊也に聞こえるくらいにため息をつき呆れながら言った。
千夜
「はぁ、・・・ガキってのは世話がやけるねぇ、ガキ。」
俊也
「・・・・」
俊也は怒る事もせず黙っていた。
ガッ!
俊也
「ぅっ!!」
俊也は突然千夜に襟首を捕まれ引き寄せられる。
千夜
「ガキは当たって砕けりゃいいのよ!!分かった!?」
俊也は千夜の睨みに頷いた。
千夜
「返事は!?」
俊也
「ひゃ、ひゃい!!」
俊也は思わず声が裏返る。
千夜は笑いながら俊也の襟首を離した。
千夜
「ぷっ、あはは!!何今の?おっかしい」
俊也
「う、うるさいなぁ、声が裏返っただけだよ!!」
千夜
「ぷぷっ、はいはい。分かってるからさっさと玉砕されてきな!」
バシッ、と背中を叩かれ俊也は背中を擦りながら答えた。
俊也
「わ、分かったから叩くなよな・・・」
ガチャ、バタン。
俊也は愚痴を言いながら部屋を後にした。
一人残された千夜はため息をつきベットに飛び込む。
千夜
「本っ当に世話がやけるんだから・・・」
千夜は複雑な心境で呟いた。
確か姫はこっちに・・・
刃界は姫を探し真夜中の街に繰り出していた。
刃界
「いねぇな・・・」
刃界は何故か淋しくなり足を早めノゾミを探し始めた。
あ。
するとどうやら街の中央にある噴水の石の所にノゾミが俯き座っていた。
刃界は声を掛けようとした時後ろから走ってくる人物を右腕で止めた。
俊也
「痛てっ、って刃界さ、むぐっ!?」
俊也は刃界に口を封じられ藻掻いている。
刃界
「静かにしやがれ、小僧。」
俊也は手を離され小声で答える。
俊也
「ど、どうしたんですか?」
と刃界は何も言わずにノゾミのローブを渡し去っていった。
俊也
「じっ、・・・」
俊也は呼び止めるのをやめローブを見つめやっと理解した。
俊也は刃界に一礼するとノゾミの方に走っていった。
その音を聞きながら刃界は呟く。
刃界
「ったく世話のやける小僧だな。あ、俺ぁ何してんだ・・・まったく。」
刃界はそんな事をぼやきながら宿に戻った。
ノゾミ
「はぁ・・・」
私、バカだなぁ・・・
俊也が悪気がないことぐらい分かってるのに怒鳴っちゃたりしてさ。
と考えていると聞いたことがある声が聞こえてきた。
???
「ノゾミ!!」
ノゾミ
「俊、也・・・」
俊也はノゾミの前で膝に手を乗せ肩で息をしていた。
どうやらかなり走ったらしい。
すると俊也は何も言わずにノゾミにローブを掛けた。
ノゾミ
「えっ?・・・持ってきてくれたの?」
俊也はノゾミの横に座り答えた。
俊也
「えっと・・、まぁそんなとこ。」
ノゾミはローブを深く被り答えた。
ノゾミ
「あ、ありがと・・」
俊也
「え、あ、うん・・」
・・・・、沈黙。
二人の耳には噴水の流れる水の音しか聞こえなかった。
俊也&ノゾミ
「「あ、あのさ(ね)、さ、さっきはごめん(ね)!!」」
二人は見事に同時に喋り同時に頭を下げていた。
俊也&ノゾミ
「「え?な、何?」」
またもや二人の声は重なりあまりにも不自然だった。
第78話へつづく
そして物語は再び動き始める。




