第76話 〜脱獄〜
罪。
ノゾミはヤオの言った言葉の意味が理解出来なかった。
私が・・・殺した?
兵士、誰?
ノゾミは震える唇で言った。
ノゾミ
「嘘、よね?・・・」
ヤオは今にも泣きそうな顔をしていた。
ノゾミは悟った。
私は、
私は殺したんだ。
兵士を・・・
ノゾミは今のヤオを見てそう思った。
ヤオのこんな悲しそうな顔は今までに一度だって見たことがないからだ。
ノゾミを一気に全身の力が抜け膝を付く。
そして不意に言った。
ノゾミ
「誰を、殺ったの・・・?」
ヤオ
「それ、は・・・」
ヤオは語尾を小さくしながら答えた。
ノゾミは黙って返事を待った。
ヤオ
「マチ、前線副隊長、ナス、前線副隊長、・・・それと・・・アメス、後衛副隊長・・です。」
ヤオは言いおわる時には涙を流していた。
一方ノゾミは顔を上げ目を見開いていた。
ノゾミ
「ちょっ、待ってよ、・・アメスが?死んだ?・・・私が、殺した・・・?」
ヤオは涙を拭いながら静かに頷いた。
ノゾミ
「嘘よ、・・私がアメスを?・・」
ノゾミは一度区切り叫んだ。
ノゾミ
「そんなはずない!!私がアメスを殺すなんてありえない!!ねぇ、嘘って言って、ヤオ!!!」
ヤオは苦しそうに答えた。
ヤオ
「・・・るんです・・」
ノゾミ
「え?」
ヤオは叫んだ。
ヤオ
「見た人がいるんです!!貴女が彼女を殺したのを!!」
ノゾミは静かに聞いた。
ノゾミ
「だ、れが・・・?」
ヤオはそのままの勢いで答えた。
ヤオ
「千夜さんです!!本人から聞きました!!」
ノゾミは目を見開いたまま動けなかった。
千夜、・・・が?
見、た?
私が、
アメスを・・・・
殺した所を・・・?
ノゾミ
「・・・・・・」
ノゾミは何も言えなかった。
自分の仲間がそう証言した。
それは紛れもない、
事実。
ノゾミは最後の声を振り絞り言った。
ノゾミ
「私は・・・・どうなるんですか・・・?」
ヤオは一番苦しそうに答えた。
ヤオ
「明日、公開処刑になります・・・」
ヤオはそう言うと足早に去っていった。
ノゾミは一人残され足を抱え蹲る。
明日、処刑・・・かぁ・・
無理もないか、私は三人も殺した・・・
アメスを・・・
ノゾミ
「ぅっ、ぅっ・・・」
ノゾミは泣き続けた。
涙が、
枯れるまで、
ずっと。
ヤオ
「千夜さん・・・」
今ヤオは満月が見える夜に一テラスにいる。
そして先にいた少女を見ていた。
千夜
「・・・・、んっ?何か用?ヤオ。」
ヤオは千夜が泣いていた事に気付き、優しく言った。
ヤオ
「今、ノゾミさんに会ってきました。そして伝えてきました、殺したことを・・・」
千夜は暫らく黙りヤオが横に来てから答えた。
千夜
「そう、か・・・あいつ元気だったか?」
ヤオは思いもよらぬ質問に一瞬戸惑いつつ返した。
ヤオ
「・・・はい、元気でした。」
千夜
「なぁ、ヤオ・・・」
ヤオはなるべく優しく応対する。
ヤオ
「はい?なんですか?」
千夜
「ごめん。」
ヤオ
「えっ?」
ヤオはいろいろあり過ぎて何がごめんなのか分からなかった。
千夜
「私がもっとしっかりしてれば・・・・アメスは・・・!!」
千夜は思いっきり歯を食い縛った。
血が出る程に。
ヤオ
「千夜さんは悪くありませんよ、僕だって分かってます、本当は、ノゾミさんも・・・」
ヤオはそれ以上は千夜の前では続けることが出来なかった。
千夜
「それでも、ごめん・・」
ヤオはそんな千夜に何か思いついたように答える。
ヤオ
「もう謝らないでください、その代わり・・・」
千夜は不思議そうに言った。
千夜
「その代わり?」
ヤオ
「僕に一日付き合ってください。」
千夜は暫らくヤオを見ることしか出来なかった。
ヤオ
「千夜さん?」
千夜はそう言われた瞬間顔が一気に赤く染まる。
千夜
「え?あ、ばっ!!な、何言ってんだ!!付き合うって・・・」
ヤオはほほ笑みながら言った。
ヤオ
「駄目、ですか?」
千夜はさらに顔を赤くしそれを隠そうとヤオに背を向ける。
千夜
「べ、別に、だ、駄目じゃないけど・・・」
ヤオは語尾が弱くなったことに気付いた。
千夜
「ヤオは、アメスの事が・・・好き、だったんだろ?」
ヤオは少し千夜の背中を見つめながら黙った。
そして答えた。
ヤオ
「はい、僕はアメスさ、・・アメスが好きでした。」
千夜
「ならなんで・・・」
ヤオは千夜の前に周り言った。
ヤオ
「さぁ?僕にも分かりません、別にただお昼を一緒に食べるくらいで言っただけですから。」
千夜は前に周られた事に驚きながら言った。
千夜
「え、あ、そうなの?あははー・・・」
千夜は頭を掻きながら続ける。
千夜
「明日、でいいの?」
ヤオ
「はい。」
千夜
「分かった、じゃ、私行くね?」
ヤオは千夜に手を振りながら見送った。
千夜はすこし悩んだが考えていた場所に歩きだした。
コツ、・・コツ
ノゾミは近づく足音に目を覚ました。
こんな夜中に、・・誰?
ノゾミは目を凝らすが無論牢の中に灯りなどなく何も見えない。
そして徐々に灯りが見え自分の牢の前で誰かが立ち止まった。
ノゾミはその灯りを頼りに顔を探し、見つけた。
ノゾミ
「・・・え?・・」
ノゾミは目の前にいる人物がその人だと信じられないほどに驚いた。
???
「ノゾミ・・・」
ノゾミ
「千夜、なの?」
千夜は俯きながら頷いた。
ノゾミは今目の前にいる人物が分かった瞬間感情を押さえられなくなり牢の檻を掴み激しく暴れながら言った。
ノゾミ
「出せ!!私をここから出せ!!お前の性で私は・・私は!!」
千夜は俯いたまま口を開いた。
千夜
「ごめん、・・ノゾミ・・」
ノゾミはその言葉に一瞬安堵感に見舞われたが直ぐに別の感情に変わった。
ノゾミは檻から腕を伸ばし千夜の襟首を掴み引き寄せた。
ノゾミ
「ふざけないで!!何がごめんよ!?お前の性で私は殺さ」
バンッ!!
ノゾミは突き飛ばされ牢の中で尻餅を付いた。
ノゾミ
「つぅ・・・」
すると今度は千夜が檻を掴み激しく鳴らしながら叫ぶ。
千夜
「ふざけるな!!あんたの性でマチは、ナスは、アメスは死んだんだ!!お前が殺した!!三人を返せ!!返せよ!!」
ノゾミは体をビクビク震わせていた。
ノゾミ
「ぅ、・・うぅ・・」
ノゾミは無意識のうちに涙を流し目の前にいる物凄い形相と怒りを込めた目を見ていた。
千夜
「泣くな!!お前が泣いたってあいつらは帰ってこないんだ!!・・・」
千夜は急に黙り込んだ。
ノゾミはそれを体を震わせながら見ていることしか出来なかった。
千夜
「お前さえ、お前さえいなければ・・・」
カ、チャ。
千夜は銃をノゾミに向け構えた。
ノゾミ
「ひっ!!」
ノゾミは腕を前にして震えた。
千夜
「お前は私が、殺す!!」
ドンッ!!
ノゾミはその銃声で自分は死んだと思った。が痛みがないけとに気付き千夜を見ると千夜はヤオに押し倒されていた。
ヤオ
「千夜さん!!何してるんですか!!」
千夜はヤオの手を振りほどこうと暴れるが外れない。
千夜
「放せ!!私はこいつを殺す。殺してやる!!」
ドッ。
千夜
「がっ・・・・」
ヤオは千夜の腹を殴り気絶させた。
ヤオ
「千夜さん、すみません・・・」
すると一人の兵士がヤオの所に来た。どうやら警備兵のようだ。
警備兵
「これは・・・ヤオ隊長、一体何が・・・?」
ヤオは千夜を抱え警備兵に渡した。そして何かを伝えると警備兵は足早に千夜をどこかに連れていってしまった。
ヤオはそれを確認するとノゾミの方にしゃがみ言った。
ヤオ
「怪我はありませんか?ノゾミさん。」
ノゾミは震えながら激しく首を縦に振った。
ヤオはそれを見ると安心して去っていった。
ノゾミは一人取り残され震えていると自分の牢の中に黒い何かがあるのに気が付いた。
ノゾミはそれに恐る恐る手を伸ばし触れた。
ノゾミ
「・・・銃、・・・?」
翌日
警備兵
「ふぅああ、・・さてと見回りするか。」
警備兵は牢の中を一つずつ点検しながら進みノゾミの牢に来た。
警備兵
「(寝てる、か・・)」
警備兵はノゾミが床に寝ているのでそのまま次に行こうとした時
ノゾミ
「助け、て・・・」
警備兵
「どうし」
ドンッ。
警備兵は銃で撃たれ倒れた。
ノゾミは銃を構えながら倒れた警備兵の腰から鍵を取り出した。
そしてノゾミは牢から脱走した。
私は生きる・・・
死ぬもんか・・・
絶対に・・・!!
ノゾミはひたすらに出口を目指し逃げた。
ノゾミが通った道には銃声が何発も響き渡っていた。
第77話へつづく
長い逃避行の始まり。




