第67話 〜苦悩〜
雨が、降っています。
千夜
「・・・ふぁ・・」
千夜はベランダから差し込む朝日に照らされ目を覚ました。
千夜
「・・・・ヤオ?」
千夜が見たベランダにはヤオが昨日と同じように手摺りに腕を置き立っていた。
ヤオ
「・・・後少し。」
「・・、・・・・・?」
ヤオ
「ん?、あぁ、確かにな。考えておこう。」
「・・・、・・・・!」
ヤオ
「おいおい、何も怒らなくてもいいだろ?わかったよ、あの娘も計画に考慮しておくよ。」
「・・・・・・・?」
ヤオ
「あぁ、その点はぬかりはない。安心しろ。」
ヤオ、誰と話してるんだ?
それに計画って何だ?
あの娘・・・誰の事?
千夜がそんな事を考えながら見ているとその視線に気付いたヤオは振り向かずに言った。
ヤオ
「・・・おはよう、千夜さん?」
千夜は気付かれていた事に動揺しつつも答える。
千夜
「お、おはよう・・」
するとヤオは部屋に入りながら言った。
ヤオ
「そう言えば昨日渡しそびれていた教材、分けてそこに置いときましたから。」
千夜はヤオが指差す方向を見ると部屋の隅に綺麗に並べられた教材が置いてあった。
千夜
「・・・ありがとな。」
するとヤオは少し申し訳なさそうに言った。
ヤオ
「あ、後迷惑かと思ったんですが名前も書いておきました。」
千夜はいくつか教材を取り後ろを見ると名前が男とは思えないくらい綺麗に書いてあった。
千夜
「何かいろいろ悪いね。」
ヤオ
「いいんです、僕には・・・っとそろそろ時間ですね。」
千夜は不思議そうに聞いた。
千夜
「時間って?」
ヤオは玄関に向かいながら答えた。
ヤオ
「教習授業の、です。」
千夜は思い出したかのように言った。
千夜
「そうだったね。・・・時間は何時から?」
ヤオは靴を履きながら答える。
ヤオ
「えっと8時には教室に集合ですね。今は7時40分ですからまだ余裕はあります。」
千夜は少し安心しながらも聞く。
千夜
「って、教室ってどこ?」
ヤオはドアに手を掛けながら答えた。
ヤオ
「3階の左です。それじゃ。」
ガチャ、バタン。
千夜
「3階の左って?まぁその前におこしますか!」
千夜は二人を起こした。
意外にも二人の目覚めは早かった。
ノゾミ
「ぅ・・・おはよ〜」
アメス
「ん・・おはようございます。」
千夜
「おはよう、で教習授業ってのがあるから行くよ?」
二人の頭の上にはハテナマークが見えた気がした。
千夜
「ともかく!早く準備して!!」
二人は千夜の少し曖昧だがそれなりな指示に従い準備を終え時間は7時50分である。
三人は立ち上がり言った。
千夜
「忘れ物は?」
ノゾミ
「ないよ。」
アメス
「ありません!」
千夜
「じゃ、行きますか?」
ノゾミ
「そだね。」
ノゾミ
「はい!」
三人は部屋を出、階段を降り始めた。
するとアメスが唐突に言った。
アメス
「何か余裕があるなんて珍しいですよね?」
千夜
「確かに。」
ノゾミ
「最近は忙しなかったからね。」
そんな会話をしながら三人は三階の脱衣所前に来ている。
千夜
「右が昼食室、前は風呂場、左は・・・」
二人は千夜が向くままに左を見ると一つのドアがあった。
ノゾミ
「あそこなの?」
アメス
「どうなんですか?」
二人は千夜に押し寄る。
千夜
「と、とにかくいってみよ?」
三人は少し不安げにそこに入った。
ガチャ、バタン。
マリー
「へぇ?貴方達が5分前に来るなんて珍しいわね?」
そこに居たのはいつもと違う服を着て眼鏡まで掛けているマリー教官だった。
千夜
「・・・どうも。」
ノゾミ
「・・おはようございます。」
アメス
「おはようございます、教官。」
マリー
「おはよう、じゃ、貴方達はこの席ね。」
この教室はまぁまぁ広く長机が真ん中に道を挟み6個づつあり椅子は全部繋がっていてなんとも殺風景な教室だ。そしてマリー教官が指差したのは最前列の席だった。既にヤオが一人座っていたが。
千夜
「何で前?」
マリー
「無駄口叩くな早く座りなさい。」
三人は渋々席に座り奥から順にヤオ、アメス、千夜、ノゾミとなっている。
カーン、カーン、カーン・・・・
とチャイムらしき鐘が鳴り一同は静まりマリー教官が言った。
マリー
「はい、それじゃ授業を始めます!まずは歴史書Iを出してください。」
一同は手際よく取出し机に置いた、少し戸惑いながらもあの三人も置く。
マリー
「じゃあ今から一時間それ読んで置くこと、一時間後にテストをします。ちなみに50点以下を取った場合は厳しい罰があります。それでは。」
そう言いおわるとマリー教官は教室から出ていった。
少しの間沈黙が流れたが皆それぞれ読み始めた。
千夜
「・・・・・」
ノゾミ
「・・・・・」
アメス
「・・・・・」
ヤオ
「・・・・・」
千夜
「・・・・」
ノゾミ
「・・・・」
アメス
「・・・・っ。」
ヤオ
「(か、開始30秒で二人共アウト・・・ある意味凄い・・・)」
そんな二人はさておき時間は30分程経った頃アメスが言う。
アメス
「あ、あの・・ヤオ君、これなんて読むんですか?」
ヤオはその場所を覗き込み答える。
ヤオ
「まり、ですね。」
アメス
「ありがとう。」
ヤオ
「いえ。」
アメス
「・・・・・」
ヤオ
「・・・・・」
アメス
「・・・・・」
ヤオ
「・・・・・」
アメス
「(き、気まずい・・・)」
ヤオ
「・・・・・」
アメスはちらりと二人の方を横目で見る。
千夜
「くー、くー・・・」
ノゾミ
「すー、すー・・・」
二人は歴史書を枕代わりにして気持ちよさそうに寝ている。
アメス
「はぁ・・・」
ヤオ
「あの、アメスさん。」
アメスはちょっと驚きながら答えた。
アメス
「な、何ですか?」
ヤオ
「お二人、起こさなくていいんですかね?」
ヤオも二人の事が心配のようだ。
アメス
「う〜ん、起きてくれない気が・・・」
そう言いながらも二人の肩を揺するアメス。
アメス
「千夜さん、ノゾミさん?起きて下さい。」
千夜
「くー、くー・・・」
ノゾミ
「すー、すー・・・」
二人には起きる気配はないようだ。
アメス
「やっぱり駄目です・・・」
ヤオ
「あの・・・ちょっと考えがあるんですけど。」
アメス
「考え?何ですか?」
アメス
「確かに。効果的かもしれませんね。」
ヤオ
「じゃ、やってみてください。」
アメス
「は、はい。」
アメスは二人の耳元近くで言った。
アメス
「ご飯だよ二人共。」
千夜
「・・・・っ・」
ノゾミ
「・・・ぃ・・」
アメス
「食べちゃいますよ?お二人の分。」
千夜
「・・させるか!!」
ノゾミ
「・・あげない!!」
まったく食い意地の張った二人である。
ヤオ
「起きましたね。」
アメス
「はい。ヤオ君のお陰ですね?」
ヤオ
「う、うん・・・」
そんな二人の会話を遮るように言う。
千夜
「アメス!!」
ノゾミ
「ご飯は!?」
アメス
「え、いや、だから・・」
ここまで信じるとは馬鹿を通り越している二人。
ヤオ
「二人を起こすための口実です。」
二人のテンションは一気に下がった。
千夜
「何だ・・・嘘か・・」
ノゾミ
「はぁ・・・嘘なんだ・・」
千夜&ノゾミ
「「はぁ・・・」」
アメス
「何かこっちに罪悪感が・・・」
ヤオ
「今は早く勉強しないと。」
アメス
「そうですね。お二人共、勉強しませんと。」
千夜
「えー。」
ノゾミ
「嫌だ。」
本当に勝手な二人だ。
アメス
「いいから最初だけでも読んでください。」
千夜
「ぶー」
ノゾミ
「ぶー」
二人はその後何とか寝ずに読んでいた。
そして時間を迎えた。
ガチャ、バタン。
マリー
「はい、それじゃ歴史書閉まって。」
一同は素早く閉まう。
マリー教官は各列にテスト用紙を配り終え教壇に手をつき言った。
マリー
「時間は10分、全部で10門、1門10点。それでは、始め!!」
各自問題を解き始める。
1門目:今何年?
2門目:歴史書は全何ページ?
3門目:教官のフルネームは?
4門目:髭の教官の本名は?
5門目:タゴ焼きの値段は?
6門目:この塔は全何階?
7門目:歴史書P122の最初の文字は?
8門目:教材は何冊?
9門目:歴史書に書いてある事はすべて真実か?理由を作文にしなさい。
10門目:兵士になりたい理由は?
一同は思う。
・・・・テストなのか?これ。
10分後
マリー
「終了!後ろから前に用紙を回して。」
用紙を貰い整えながら言う。
マリー
「はい。じゃあ午後の授業まで解散!」
一同は複雑な気持ちで教室を出ていく。
千夜
「いやー終わったね。」
ノゾミ
「まぁ出来たからいいや。」
アメス
「うぅ・・・」
ヤオ
「はぁ・・・」
四人は部屋に戻った。
第68話へ続く
止みません。




