↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀狼討魔録 ~傭兵の母娘と謎の盗賊団~  作者: 松木 一
第一章 商人と盗賊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/47

第8話 奪還チーム結成1

「……有難い話なんですけど……すいませんがオレ達は、ちょっと無理です。今朝お伝えした様に、明日からレンストンで次の任務があるんで……」



「あっ! ……そうだったな。すまない」


 フィルにすまなさそうに誤ったロバートが、表情を改めてロディを見た。


「ロディ君はどうかな? 急な頼みで本当に悪いんだが……難しいだろうか?」



「僕は……まだ次の任務が決まってないですから、僕を指名して警備局と契約して頂ければ出来ますけど……すいませんが、ちょっと色々あって……本部に戻ってから考えさせて頂けませんか……?」


ロディの表情と声には、心苦しさが漂う。

 盗賊のアジトへの潜入と奪還など、アジトの場所さえ分かれば、難度はオークの巣窟の殲滅と大して変わらないし、何度か一人でやった事もある。


 しかし、困っている人を見捨てるようで悪いのだが、ロディは多額の借金を抱える身。

 次の支払いのメドが立たず、自分の人生が崖っぷちに立たされている事を考えると、本部で他に少しでも良い案件があれば、そちらを優先せざるを得ないのだ。




「……ロディさんと言いましたか? 警備局の方のようですが……その腕章を見ると、六等警備局員で?」


 誰も、危険を犯して奪還に向かうアリシア達を手伝うと言えず、気まずい沈黙が漂い始めた頃、セオが尋ねるように声を掛けてきた。 


「ええ。昇格して、もう一年位になります」


「なるほど……六等なら中々の腕前ですね。私も、何度も警備局のお世話になりましたから、階級を聞けば大体のお力は分かるつもりですが……盗賊とか怪物の巣に潜入しての討伐とか奪還も、やった事がおありで?」


「はい。何度も……今日も、オークの巣窟を殲滅した帰りでしたし……」


「えっ! ……まさか……まさか君一人で、そんな凄い事をやったのか?」


 ロバートが、目を丸くして呟く。

 セオ商会の他の面々やマーシアも、驚いた様な顔でロディを見つめている。


「ええ……僕はチームを組んでないのでいつもの事ですし、相手がオークでしたから……」


 自分としては、特別凄い事をしているつもりは無い。


 確かに危険だが、鍛錬を積み、警備局が支給する特別な装備があれば、オークや盗賊の巣窟位なら、油断しなければ一人でも潜入や殲滅は出来ると思う。

 実際、人付き合いが煩わしいのか、単独行動する警備局員は他に数名いる。


「一匹狼で有名な、銀狼(ぎんろう)のロディさんなら、オークの巣窟ぐらい楽勝でしょ?」


 茶化す様なフィルの言葉で、ロバート達のロディを見る目に敬意の色が浮かぶ。


 ロディが単独でオーク退治をした事に加えて、銀狼(ぎんろう)なんて強そうな二つ名で呼ばれている事を知った彼等には、自分が凄い人に思えるのだろう。


「え? ……いや、あの……銀狼(ぎんろう)なんて二つ名は見た目で付けられただけですから。普通の警備局員ですから誤解しないで下さい。実際、名前負けしてるってよく言われますし……」


 妙な期待をされても困る。

 慌てて取り繕うロディを見ながら、セオが言葉を続けた。



「いやいや……一人でオークの巣窟を殲滅とは凄い。私達にはとても……」


 凄い人を見るような眼差しのセオの声には、感服の色が窺える。


「ロディさん。急に無理を頼んで本当に申し訳ございませんが……やむを得ない事情が無いのであれば、どうか……どうか引き受けて下さりませんか? ロディさんが手伝って下さるなら安心です。お忙しい時に、急なお願いで本当にご迷惑とは存じますが、警備局とは必ず契約させて頂きますし、急に無理をお願いする分、お金は規定の三倍、いや五倍払わせて頂きますから、どうか先に私共を助けて頂けませんでしょうか? お願いします!」



 座り込んでいたセオが懇願するように語りかけ、隣の妻と共に姿勢を改めて、深々と頭を下げる。


「えっ? 五倍? そ、そんなに貰えるなら……凄く助かりますけど……」


 常々返済をどうするか頭を悩ませていたロディは、思わぬ福音を前に、つい本音をこぼしてしまった。


 今は一年でも忙しい時期で、本部に戻れば、いつも以上に色々な案件がある。

 だが、内容にもよるが、良い案件は他人が請けて消えるのも早い。


 セオの提示する条件は、かなり良い方だ。

 返済を考えれば、本部に戻って、もっと良い案件を探す方が良いか、このまま請けた方が良いのか悩ましい。


 悩むロディを見て好機とみたのか、顔を上げたセオが懇願するように尋ねる。


「助かるって事は……欲しい物があるとか、お金に困ってるとかですか? もしそうなら、奪還して下さったら、金額によっては私がそれを払わせて頂きます! 勿論、警備局の料金もです。他にも何か必要なら、それも言って下さい! 何が幾ら必要なんです?」




「……あの……実は……今月末までに……金貨七十枚も必要なんです……」


 俯いたロディの声には、力が無い。

 博打のような後ろめたい理由で出来た物では無いが、借金の事など他人に言いたくないからだ。


 それにお金が欲しいのは山々だが、助けて欲しくば金を寄こせと、他人の弱みにつけ込んでせびっているようで、気恥ずかしさと心苦しさで、まともにセオの顔を見られない。


「以前……仕事で大怪我をした時に出来た借金があるんですけど、今月分を払うメドが立たなくて……今月末に、それだけ払えないと奴隷になるしかないんです」



「……なるほど……私でも、その金額は痛い……でもロディさんは、それが払えないと奴隷に売り飛ばされ、私も納期に間に合わなければ、夜逃げのあても無いし、首を吊るしかなくなる……そうなればロバート達や、その家族も路頭に迷う……」


 ロディの言う金額に少し引いたのか、セオの声のトーンが落ちる。

 彼は、そのまま真剣な表情で思案し、少ししてから、横に座る妻と小声で相談した後、何かを決意したかの様に重々しく口を開いた。


「…………分かりました。一週間後の納期までに銀灰(ぎんかい)を奪還し、その後、納品先まで護衛して下さり、納期内に無事納品が済めば、それから三日以内に、警備局の依頼料に加えて、金貨七十枚を耳を揃えて払わせて頂きます。如何でしょう?」



「……お金なら払います! どうか……どうかお助け下さい! お願いします!」


 セオの言葉の後、彼の妻が頼み込むように、両手と頭を地につけた。


「いや、あの……奥さん、土下座なんてしないで下さい……それと、銅貨や銀貨じゃ無くて金貨七十枚ですよ? そんな大金を本当に……本当に良いんですか?」


 戸惑いを隠せないロディの確認する様な問いに、セオは重々しく頷いた。


「ええ。これで私とロディさんは一蓮托生。あなた方が失敗すれば私達も未来はありません。お互い未来を切り開く為には、こうするしか無いでしょう?」

本日は、2話投稿します。

次の9話目は、本日17時頃に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。