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銀狼討魔録 ~傭兵の母娘と謎の盗賊団~  作者: 松木 一
第二章 謎の町ヴェルゴー

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第45話 再会

 夜霧の向こうから、小さな明かりがやってくる。

 やがて、その明かりの向こうに、若い男女の姿が現れた。


 彼等を見たマーシアの顔に、喜びの笑みが浮かぶ。


「あなたはケネスさんだっけ? 隣がロージーさんよね? 無事だったのね!」


 駆け寄ってきた二人の若者を見て、マーシアの声に少し元気が戻った。


「ええ! 僕達は、仲間がヴェルゴーに来たに違いないと思って助けに来たんですけど、マーシアさんが来られるなんて……ひょっとしてアリシアさんも?」



「そうよ……でも……あ!」


 表情を曇らせたマーシアが、何かに気付いた様にロディを見た。


「ロディ君は、彼等と会うのは初めてよね? 彼等は奪還隊の人よ。二人とも以前四年ほど傭兵をやってたんだって」



 ケネスは、二十代半ば位の筋肉質な金髪の男性。

 ロージーも同い年位の中肉中背の女性で、ポニーテールにした茶色い髪を持つ。 二人共、硬い皮鎧と弓、剣で武装していた。


「僕は、ロディと言います。皆さんは仲間を助けに来たって言ってましたけど、なぜ僕達がヴェルゴーに来た事や、襲われた事が分かったんです? それに、皆さんは今まで何処で何を……?」



「その辺は、話すと長くなりそうなので……ここは、まだヴェルゴーに近くて安全とは言えませんし、先に彼等と会って頂けませんか?」


 後ろの人々を指さしたケネスは、ロディを見て、声を落として言葉を続けた。


「それと、すいませんが後ろの彼等には、僕達がラングドン一家って事は黙ってて下さい。僕達は、盗まれた銀灰(ぎんかい)を探す為に雇われた傭兵で、ここに辿り着いたって事にしてますので。皆さんも一家の名前は出さないで下さい」


 確かに、有名な盗賊団のラングドン一家とバレれば色々マズいだろう。

 注意した方が良い。

 横に立つマーシアが、事情が分かったように頷いた。


「……ところで……他の仲間は……?」



「未確認ですが……僕達以外は全員怪物に捕まったり、殺されたようです……」


 その言葉に、ケネス達の表情が沈む。


「仲間は、ルパートさん、ターナーさん、トニーさん、ネリーさん、クレアさん、アリシアさんですが……残念ながら、ネリーさんとターナーさんは怪物に殺されたようです……そうだ! 僕達は訳あって、一家の皆さんが扮した旅商人と途中で偶然出会い、一緒に来たって事にしてますから、他人の前でこの話になった時は注意して下さい。それと彼等は偽名を名乗る事にしてますから、何かに備えて、この紙に書いている名前を覚えて下さい」



「……旅商人と偽名の件、了解です……これは……いつもの偽名ですね……」


 ウェストポーチから出した皮紙を、沈痛な表情のケネスが受け取り、手にしたランタンのか細い明かりで、ロージーと共に目を通す。


 この紙は、ロディが一家の偽名を覚える為に書いた物だ。


 ロージーが、ケネスを見て合図をするように小さく頷くと、彼は紙をロディに返して、表情を改めて再び口を開いた。 


「そういう事でしたら……銀灰を奪還に来たロディさん達とはともかく、銀灰を奪還に来た傭兵を装う僕達と、旅商人を偽装するルパート様達とは赤の他人と言う事にした方が良いですね……」



「……そうですね……それが良いと思います」


「分かりました。じゃあ、後ろの皆さんを呼びます」


 ロディが紙をポーチに仕舞ったのを見て、ケネスが後ろを向き、彼等を招くように、光を絞ったランタンを振った。


 早朝の薄明るさの中でも、霧のせいで見えにくいが、四、五十パスル(約十二から十五メートル)ほど後ろに十人位いて、こちらを注視しているようだ。




 彼等を見ていると、二人が小走りで近づいて来た。


 姿を見て驚いたが、間違いなくドワーフだ。

 二人とも髭を蓄えた若い男で、動きも機敏で音を抑えるように動き、隙が無い。

 二人とも、それなりの実戦経験を積んでいるのだろう。


 その動きや、戦斧や胸当て鎧等の、まともな武具で武装している所を見ると、彼等の戦闘経験や能力は、ノーマンの村にいた自警団とは雲泥の差だと思う。


「すまんが、この聖水を手に掛けて良いか? 怪物が化けていては困るからな」


 警戒しているのか、険しい顔をした若者が、鞄から小瓶を出して蓋を開け、小声で尋ねる。


「ええ、良いですよ」


 ロディは、マーシアと共に手を差し出した。

 ドワーフ達が、差し出された手に聖水を少し掛けたが、当然何も起きない。


 それを見て安堵の表情を浮かべた彼等は、後ろを振り向き、ケネス達と同じく、無言のまま手に持ったランタンを招く様に振った。


 それを見て、残りの人々が小走りで静かに近づいてくる。

 全員が武装したドワーフで、彼等の動きも機敏で隙が無い。

 彼等はロディ達の前に並ぶと、立派な髭を蓄えた中年男が一歩前に出て、小さく声を上げた。



「ワシは近くの里の族長イーゴリだ。あんたら昨日ヴェルゴーに来た人だろう? 怪物に襲われたのか? 町を見張ってたら火事が起きたし、夜霧の向こうに何度か火の術の光が見えたから、誰か助けられる奴がいないか、見に来たんだが?」

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