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銀狼討魔録 ~傭兵の母娘と謎の盗賊団~  作者: 松木 一
第一章 商人と盗賊

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第25話 単独行動の理由

 ロディが休み無しで働いていると聞き、アリシアとマーシアのロディを見る目に、気の毒そうな色が浮かんできた。



「あ、いえ……休み無しなのは、個人的な理由です……上司からは、少しは休みを取れって言われてましたし……」


 多額の借金を抱え、返済の為に走り回っている事を話すのは気恥ずかしいが、マーシアが、急に魔力切れを起こしたロディを不安に思うのも当然だ。

 正直に話さないとダメだろう。


「警備局の給料は、任務成功で上がる歩合の額が大きいんですけど、一人でこなせる仕事は安い物が多くて……この義手の支払いが苦しくて、少しでも多く案件をこなすよう寝る間を惜しんで走り回ってたから、最近、疲れが取れなくて魔力も回復しにくくて悩んでたんです……あの時は魔力の回復薬も飲んだし、いつも通り一回だけなら大丈夫って思ったんですけど、元々魔力が低くてダメだったみたいで……ご迷惑を、お掛けしてすみません……」



「ああ、それはもう気にしなくていいから……君が、借金で苦しんでるのは聞いたし、私も駆け出しだった頃は、お金が無くて苦労したから、少しは辛さが分かるけど……無茶をして死んだら何にもならないわよ? 神話や、おとぎ話みたいに、生き返る魔法や道具なんて無いんだから」


「……はい」


 アリシアが諭す様に言う正論に、ぐうの音も出ない。




「……そう言えば……」


 何かを思いだした様なアリシアが、不思議そうに尋ねた。


「確か、ロディ君はチームを組んでないって言ってたわね? 剣も魔法も中々の腕だし、悪い人にも見えないから、仲間を集めるなんて簡単だと思うんだけど、何故かしら? チームで仕事をすれば、大きな案件も担当できて、支払いが楽になるんじゃないの?」



「それは……」


 セオから、ロディを雇いたいと詰め寄られた時、そんな事を言った気がする。


「一人の方が気が楽ですから……最初は、腕利きだった両親と三人でチームを組んでたんですけど、両親が病気で亡くなってから、他のチームに呼ばれたり自分のチームを立ち上げたりしたんです。客や自分の命が掛かる仕事ですから、チームや仲間も、能力や実績を見て選んで……」


 脳裏に、今までチームを組んだ色々な人の顔と、思い出がよぎっていく。


「だけど、彼等は両親と違って、仕事中の態度とか作戦案で対立したり雰囲気が悪くなる事も多くて……もう、一人でやる方が良いと思って半年ほど単独なんです。王立警備局は、任務を、ある程度選べますから……」


 ロディの口から、小さく溜息が漏れた。


「でも、今も言いましたけど、一人でこなせる任務は安い物が多くて……覚悟してたつもりでしたけど、少し前から支払いを考えて、単独行動は止めようとしてた所なんです……」



「なるほどね……でも、それは仲間の選び方が悪かったのかも? 君の言うとおり能力も大事だけど、性格や考えが合わない人と一緒にいるのは、凄く辛いわよ?」


 アリシアが、遠い目を浮かべて言葉を続けた。


「私も、色々な人と組んで嫌な思いも沢山したわ。違う意見を言ったら機嫌を悪くする人とか、私が女だからって見下してくる男とか……性格や考えが合わない人といるのって本当に辛いし、出来れば二度とやりたくないわ!」


 何か嫌な記憶を思い出したのか、アリシアが一瞬顔をしかめたが、すぐに彼女は何か思いついたように表情を改め、ロディを見た。


「……そうだ! ロディ君。チームを率いた経験があるなら、テッド商会へ行く時は、リーダーを、お願い出来ないかしら?」




「え? いや……あの有名なタイレル傭兵団で少佐をされてる、アリシアさんの方が、冷静で凄く強くて適任だと思いますけど?」


「私を買いかぶりすぎよ。それに傭兵の私が、王立警備局の人を部下に従えるなんて、他の人が見たら変に思われるわ」


「……うーん……まぁ……そうですかねぇ……?」


「困った時は補佐するから言って。仲間だったら、支え合うのは当然でしょう?」


「……分かりました。では、お役に立てるか分かりませんが、奪還に行く時はリーダーをさせて頂きます。でも、僕の判断がマズいと思ったら言って下さいね」


「ええ、分かったわ」


 その時、壁の振り子時計から、十時半を告げるチャイムが鳴った。


「……ねぇ、母さん。次の予定が無かったら、そろそろヴェルゴーへ行く準備をしない? 色々買っておく物とかあるでしょ?」


 会話が途切れたのを見たマーシアが、笑顔を浮かべながら尋ねる。


「そうね……じゃあロディ君。君の服は、そこのタンスに入れてるから、着替えたら一緒に行きましょう。私達は一旦部屋に戻るわ。この部屋の左隣だから、準備が出来たら呼んで頂戴」


「はい。分かりました」


 アリシアがゆっくりと席を立つと、マーシアもそれに続く。

 二人が静かに部屋を出た後、ロディは彼女が示したタンスを開けた。


 服は、偽ラングドンとの戦いで足払いを食らった時に、泥水で酷く汚れたと思うが、綺麗に洗われて畳まれ、破れた所も丁寧に治されている。


 後で、誰が服を洗って繕(つくろ)ってくれたのか聞き、その人にお礼を言おうと考えながら、ロディは手早く着替えを始めた。

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