↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀狼討魔録 ~傭兵の母娘と謎の盗賊団~  作者: 松木 一
第一章 商人と盗賊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/48

第21話 決着2

 ロディに向けて、山羊頭が一匹と偽ラングドンがやってくる。


 奴等は、山羊頭を先頭にして、ロディを迂回するように走っていた。

 太った偽ラングドンは、足が遅いのか山羊頭の少し後ろを走り、その差は徐々に広がっている。


 上手く行けば、一匹ずつ対応できそうだ。

 山羊頭より強いであろう、偽ラングドンとの戦いに専念する為、山羊頭とは素早くケリをつけたい。


 駆け出したロディに、山羊頭が剣を振り下ろした。

 ロディが身を守るべく掲げた盾に、剣が叩き付けられ、鋭い火花を散らす。



 その瞬間、山羊頭が後ろから強烈な跳び蹴りでも食らったか、強く突き飛ばされた様に飛び出して、ロディと激しくぶつかった。



 予想もしなかった強烈な体当たりを受け、ロディは、どうと後ろに倒れる。


 辛うじて転倒を免れた山羊頭も、何が起きたのか分からないらしい。

 激しい雷雨の中で、狼狽した様に周囲を見回したが、地面に転がるロディを見て好機と判断したのか、慌てて剣を振り上げた。



 立ち上がるまでに、奴の斬撃が来る。

 回避しても、偽ラングドンが来て二匹から攻撃を受ける。



 ロディは、素早く義手を怪物に向けて、僅かに気合を込めた。

 義手の前腕に空いた小さな穴から、クロスボウの矢が打ち出される。

 一本しか撃てない奥の手だが、カートリッジでは間に合わない。


 矢は、油断していた怪物の腹に刺さり、くぐもった悲鳴が上がる。

 ロディは、その隙に素早く立ち上がり、怯む怪物を袈裟斬りに斬って捨てた。



 山羊頭が地に伏せて気付いたが、奴の後ろにいた偽ラングドンの姿が無い。

 夜闇の中、激しい雨に打たれながら偽ラングドンを探そうとした時、闇の向こうから何かが凄い早さで突き出てきた。


 緑色の大きな手だ。


 それが、凄い力でロディの義手をがっちり握ったと同時に、鋭い足払いを食らって仰向けに転ばされた。

 雷雨で出来た水溜まりに、泥水の飛沫が上がる。


「くっ!」


 ロディが見上げると、義手を掴んでいるのは偽ラングドンだ。


 次の瞬間、奴が義手を握ったまま剣を奪い、奴の片足が、叩き付けるような勢いで、ロディの胸を踏みつけた。


 ロディは、偽ラングドンから逃れようと足掻いたが、義手を握る力と踏みつける力が凄まじく、どう体を動かしてもビクともしない。

 それを見た偽ラングドンが、奪った剣をロディの首筋に当てて怒声を上げた。




「テメェら、武器を捨てて両手を上げろっ! でないと、この小僧を殺すぞっ!」


「僕は良いから、コイツを……」


 踏みつけられたロディが叫んだが、その言葉が終わる前に、偽ラングドンがロディの生身の左腕に剣を突き刺した。

 周囲に、苦痛の悲鳴が響く。


 奴は、苦痛に顔を歪めるロディを、下らない物を見るような冷たい目で見下ろした後、再び剣を首筋に当てた。


「……仕方無いわね……」


 アリシアの声の後、何かが地面に落ちた音がした。

 彼女達が、武器を捨てたのだろう。


 雷雨の中、戦いを見守っていた盗賊達から「畜生!」「卑怯だぞっ!」という様な、非難の声が次々に上がる。


「何とでもほざけ! お前達からは、逃げられそうにないのでな。ここで始末しておく。大人しくすれば、楽に死なせてやるから動くな!」




 早く、この状況を打破しないと、彼女達が殺される。

 脱出しようと懸命に足掻いたが手は振りほどけず、踏みつける足をどかせようとしてもビクともしない。


 何かを呟き始めた奴の前に、術の赤黒い揺らめきが生じた。

 それを見たロディの脳裏に、ふと考えが浮かぶ。


 奴は、こちらを見ていない。


 剣で戦っていたロディが術を使うなど、思ってもいないのだろう。

 今、強い術を使えば切り抜けられると思うが、残っている魔力が少し心配だ。


 出発前に少し仮眠を取ったが、最近、休み無しで朝早くから夜まで駆け回っているせいで、寝不足気味で疲れも溜まっている。

 それを考えると、魔力はあまり回復していないだろう。


 他に手が無いか悩んだその時、ジャイアントワームを倒した後、魔力の回復薬を飲んだのを思い出した。

 それを含めれば、一昨日と同じく、強い術も一回だけなら大丈夫だと思う。


 それに、激しい稲光が頻繁に光るのをみるに、雷術詠唱中に起きる光も、偽ラングドンには気付かれないだろう。



 手を考える内に、偽ラングドンの手の先に浮かぶ赤黒い揺らめきの光が、徐々に強く大きくなってきた。


 もう、考える時間は無い。

 この状況を切り抜けるには、一か八かになるが、これしか手は無い。



 術の失敗を防ぐため、確認する様に唱える呪文を思い浮かべた後、偽ラングドンに術を気付かれないよう左の掌を静かに地面に向け、傷の痛みに耐えながら、祈るような気持ちで慎重に呪文を囁いた。



「天にまします大いなる裁きの神よ……請い願わくば信徒たる私めに……邪悪を裁く……その偉大なる雷のお力を与えたもう」


 詠唱が進むにつれて、地面に向けた手のひらに熱が伝わる。

 魔力は何とか足りたらしい。

 術は、無事に発動しそうだ。


 偽ラングドンが思い出した様にロディを見たのと、詠唱を終えたロディが刺された痛みに耐えて左手を上げ終えたのは、ほぼ同時。


「大雷撃!」



 ロディの叫びが轟いた瞬間、凄まじい閃光と落雷の轟音が轟いた。

 ジャイアントワーム二匹を黒焦げにした、今の魔力のロディに使えるだろう最強の雷の術だ。


 迂闊にも稲妻を直視し、目が眩んだせいで周囲の様子が分からないが、肉の焦げる嫌な匂いが立ちこめた後、奴がフラつき始めて首筋に当てられた剣が落ちた。

 程なく、奴が義手を掴む力と、胸を踏みつける力が弱まっていく。




 どうやら、上手くいったらしい。

 だが、安心した次の瞬間、急に凄い目眩が始まり、高熱を出した時の様に頭が朦朧として耳がガンガン鳴り始めた。


 意識が、徐々に薄れ始める。


 マズい事に、魔力が尽きたらしい。

 魔力が尽きれば失神してしまう。


 一回だけなら大丈夫だと思ったが、溜まった疲労は思った以上に体を蝕み、魔力の回復を阻んでいたようだ。


 その時、アリシアの怒りに満ちた叫び声がして、偽ラングドンが強く弾かれた様に、大きくよろめいて体勢を崩した。

 彼女が何か術を使って、奴を攻撃したのだろう。


 体勢を崩した偽ラングドンは、そのまま後ろに倒れている様だ。

 奴に捕まれていた右手が離され、力無く地に落ちる。


 どうやら決着が着いたようだが、急速に視界が霞んで暗くなっていく。

 周囲の音も遠のいていく。

 失神しないよう気力を振り絞ったが、ダメらしい。


 どこか遠くで……マーシアが、心配そうにロディを呼んでいる気がする。

 アリシアも……ロディの名を叫んだ気がするが……すぐに、全てが音の無い闇に閉ざされた。

ここまで読んで下さり、誠に有り難うございます。

読んで下さる皆様には、大変、感謝いたしております。


もしよろしければ、ブックマークを入れて下さったり評価を頂けますと

凄く励みになりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。