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銀狼討魔録 ~傭兵の母娘と謎の盗賊団~  作者: 松木 一
第一章 商人と盗賊

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第20話 決着1

 剣を抜き、身構えたロディの横にマーシアが立ち、彼女も怪物共を注視しながら左手にショーテルを構える。

 彼女が、アネモスに何か話しかけると、頷いたアネモスが姿を消した。


 マーシアの横に並んだアリシアは、傘を魔法の品らしき鞄に仕舞った後、腰に下げた二本の短剣を両手で逆手に構えた。どうやら二刀流らしい。


 皆の準備が整ったのを見て、ロディが怪物に駆け出そうとした時、偽ラングドンを守るよう戦っていた怪物共の動きに変化が起きた。


 どうやら、奴等は盗賊達を放って逃げる事にした様だ。

 行く手を阻む盗賊達を蹴散らしながら、道路に近いこちらへ向かって来る。


 怪物を阻む邪魔者は、もうロディ達三人だけ。

 しかも、二人は若い女性なので、侮っているのだろう。


 それを見た盗賊達から「お前ら、危ないから下がれーーっ!」とか「その怪物は強いわ! 逃げてーーっ!」とか、先程までロディ達を殺そうとしていたのを忘れたかのような、こちらを案ずる声が次々と上がる。


 それを見るに、盗賊達は本当に、自分達に潜む怪物共を知らなかったのだろう。



「では、アリシアさん! 行きます!」


 迫る怪物共を見たロディは、先頭を走る山羊頭の大男を目指して駆け出した。




 夜の雨の中、眩い稲光に照らされ、目指す山羊頭の大男の異形の姿が、禍々しく浮かび上がる。


 ロディの剣の間合いに入る直前で、その大柄な山羊頭の怪物が、獰猛な咆哮を上げながら剣を振り下ろしたが、それは十分予想できた動きだ。

 軽く剣を掻い潜って、がら空きの横腹を切り裂く。


 怪物が、絶叫を上げて膝から崩れ落ちた所で、ロディの剣が素早く怪物の首を刎ねた。


 切り落とされた首が、近くの地面に落ちて転がる。

 盗賊達は、闇夜の激しい雨のせいで、何が起きたか見えなかったらしい。

 皆で驚いた様に、稲光に照らされた、崩れ落ちる怪物を見つめている。



 最初の怪物を仕留めたロディの横で、アリシアとマーシアが身構えた。

 最初に動いたのは、短剣を持つアリシアだ。

 彼女が、素早く一匹の怪物を指さす。


「焼き払え! サラマンダー!」


 彼女が指さした山羊頭の足下から、猛烈な雨を物ともしない巨大な火柱が、轟音を上げながら立ち上がり、周囲に猛烈な熱気を振りまいた。

 大きな火柱の中で、それから逃れようと激しく藻掻いた怪物だが、すぐに力尽きて崩れ落ちるように地に伏せていく。


 それを見た盗賊達から、驚愕したような大きなどよめきが上がる。



 仲間を炭に変えられた怪物共も、驚いた様に動きを止めたが、すぐに偽ラングドンが何か指示を出したようだ。

 怪物共が怒り狂った様な咆哮を上げ、自分達に襲いかかって来る。



 山羊頭の怪物が一匹、剣を構えてマーシアへ駆けたが、彼女は迫る怪物を前にしても慌てる素振りすら見せず、落ち着いて剣を持つ左手を怪物に向けた。


「穿て! ネロ!」


 敵を指すマーシアの指先に、一瞬で小石程度の水玉が出来る。

 次の瞬間、その水玉が凄まじい速度で撃ち出され、敵の胸から血が噴き出した。


 屈み込んだ敵を見て、彼女は仕留め損ねたとみたのか、膝を突き、胸の傷口を押さえる怪物へ走り、左手のショーテルを振りかざす。


 それを見た怪物は、頭を守るように弱々しく剣を持ち上げたが、マーシアは即座に剣を振り下ろす位置を変え、がら空きの怪物の胸から腹を斬り裂いた。

 斬撃を受けた怪物が短い悲鳴を上げて剣を落とし、胸と腹を押さえながら崩れ落ちていく。



 ロディが二匹目の山羊頭と斬り結んだ直後、アリシアが、偽ラングドンの妻らしき女悪魔を爆音と共に大きな火柱に変えた。


 その横から、一匹の山羊頭がアリシアに駆け寄って剣を振り下ろしたが、彼女は軽くそれを躱し、逆手に構えた短剣で怪物の腹を斬る。

 悲鳴を上げて踞った怪物を見て、彼女は屈み込んだ怪物の背中から、心臓の位置に素早く短剣を突き刺した。


「うおおぉぉぉーーーーっ! あいつら、スゲぇ!」


「やれっ! やっちまえーーーーっ!」


 火柱の光に照らされ、怪物が大量の血を吐いて地に沈むのを見た盗賊達から、喜びと興奮に満ちた大歓声が起きる。




 先程から、アリシアとマーシアの術と思しき技が炸裂しているが、彼女達に呪文を詠唱している様子は無い。

 相手を指して、一言二言叫ぶだけで怪物共が倒されていく。


 ロディは、今までこんな術は見た事が無い。



 呪文は、詠唱を間違えれば、何も起きず時間を浪費しただけになる。

 味方の窮地や敵に狙われた焦り、呪文をド忘れした等で詠唱を失敗するのは、ベテランでも偶(たま)にある失敗だが、その欠点が無い有利さは簡単に想像がつく。



 戦いを見守る盗賊達は、興奮を抑えられないのか白熱の声援を送り、怪物が倒される度に大喝采が起きる。

 その声援を受けながら、ロディは二匹目の山羊頭を剣の錆に変えた。


 先陣が壊滅した怪物共は一瞬たじろいだが、偽ラングドンの指示を受け、ロディ達を迂回する様に二手に分かれ始めた。

 勝つことを諦め、どちらかが逃げ延びれば良いと考えたのかも知れない。


 チラと横を見ると、アリシア達は、彼女達の横を通り過ぎようとする山羊頭五匹を相手にするつもりらしい。

 もう、彼女達の強さに疑いは無い。

 この程度の怪物なら、楽勝だろう。


 ロディは、近付く偽ラングドンと山羊頭一匹を見て、どう戦うか素早く頭を巡らせた。


 ラングドンに化けていた怪物は、以前、同じ種族の奴を倒した事がある。


 あの時は、初めての敵にかなり苦戦したが、勝てない相手ではない。

 山羊頭と二匹なら、一匹ずつ対処できれば勝てるだろうし、勝てなさそうなら時間稼ぎに徹し、アリシア達と倒すという手を取れば良い。

 彼女達なら、あの五匹を倒すのに、それほど時間は掛からないだろう。


「ロディ君! その二匹はお願い! 無理なら足止めを!」


「了解!」


 アリシアの叫びに、ロディが応えた。

本日は投稿が遅れ、誠に申し訳ございませんでした。

明日からの投稿は、いつも通り12時か12時10分頃に

投稿させて頂きますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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