表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日の春風は今も  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
75/81

タイトル未定2026/08/10 21:19

 第49章 二試合目の現実


 復帰戦で同点ゴールを決めた柚月は、一気に注目を集めていた。


 ベガルタ仙台レディースは、磯村蘭のアディショナルタイム弾でベレーザを2-1で破り、勝ち点3を手にした。


 復帰初戦。


 途中出場。


 同点ゴール。


 あまりにも出来すぎた復帰だった。


 だからこそ、山田羽美監督は試合翌日のミーティングで最初に釘を刺した。


「昨日のゴールは、もう昨日の話です」


 柚月も分かっていた。


 一度の劇的な復帰だけで、完全復帰とは呼べない。


 本当に戻ったと証明するのは、次の試合からだった。


 1 研究される側へ戻った


 次節。


 柚月の出場時間は、十五分から二十分程度へ延ばされる予定になった。


 先発ではない。


 まだ試合終盤からの起用。


 それでも相手チームは、もう柚月を「けが明けの選手」とだけ見てはいなかった。


 前節の復帰ゴール。


 その後に見せた試合の落ち着かせ方。


 味方への声かけ。


 中盤でボールを失わない能力。


 すべてが分析対象になっていた。


 相手監督は試合前のミーティングで映像を止める。


 画面には、ベレーザ戦の柚月。


 中央でボールを受ける。


 相手が寄せる前に一度横へ逃がす。


 位置を変え、再び受け直す。


 別の場面では、右側へ展開すると見せて、左へ大きくサイドチェンジしている。


「大船に前を向かせるな」


 監督が言った。


「特に左足側を開けるな」


 選手たちがうなずく。


「シュートだけじゃない。こいつは一度顔を上げると、前線へ一本で通せる」


 さらに映像が変わる。


 柚月がボールを持つ。


 相手が中央へ寄る。


 柚月は無理に縦へ出さず、逆サイドへ大きく展開。


 そこからベガルタの攻撃が始まる。


「パスコースを潰せ。受けた瞬間に二人目も寄せる」


 一人が尋ねる。


「強く当たりますか」


「当然だ。ただしファウルはするな」


 復帰戦では、相手も柚月の状態を探っていた。


 今回は違う。


 最初から止めに来る。


 柚月は、サッカー選手としてもう一度警戒される立場へ戻っていた。


 2 目立たなくていい


 試合前。


 山田監督は柚月を呼んだ。


「相手はかなり警戒してくると思う」


「分かってるっちゃ」


「前節みたいなシュートコースは、まず空けてくれない」


「でしょうね」


「だから、ゴールを狙いすぎないこと」


 柚月は笑った。


「うち、そんなに欲張りに見える?」


 山田は即答する。


「見える」


「即答すんなぁ」


 二人とも笑った。


 それから山田は真剣な表情へ戻った。


「今日は、黒子でもいい」


 柚月は少し目を細める。


「黒子?」


「相手が柚月へ集まるなら、それを使う。ボールを簡単に失わない。味方を前向きにする。逆サイドを使う。守備陣形を整える」


 柚月はうなずいた。


「うちが目立たなくても、チームが勝てばいい」


「そういうこと」


 柚月は少し笑った。


「その役、嫌いじゃねぇっちゃ」


 3 二十分の開始


 後半二十五分。


 スコアは0-0。


 両チームとも決定機を作りながら、最後の一本が決まらない。


 山田監督が柚月へ声をかけた。


「準備して」


 柚月は立ち上がる。


 アップを終え、タッチラインへ向かう。


 相手ベンチも動いた。


 柚月が入る。


 それだけで守備側の選手たちが互いに確認し合う。


「大船入った!」


「中央締めて!」


「左足切って!」


 柚月には全部聞こえていた。


 交代。


 柚月がピッチへ入る。


 最初のボールタッチ。


 味方DFから中央へパスが入る。


 その瞬間、相手MFが背中から寄せる。


 さらに正面からもう一人。


 二人。


 柚月は無理に前を向かなかった。


 右足の裏でボールを止める。


 身体を入れる。


 相手の接触を受けながら、左足へ持ち替える。


 そして、後方へ戻す。


 相手は奪えない。


 柚月はすぐに位置を変える。


 もう一度受ける。


 今度はワンタッチで右へ流した。


 相手の二人が柚月へ寄った分、右サイドに空間が生まれている。


「そのまま!」


 柚月が声を出す。


 右サイドバックが前へ運ぶ。


 早速、相手の警戒を利用した。


 4 奪わせない


 数分後。


 再び柚月へボールが入る。


 今度は相手が真正面から強く寄せてきた。


 左足側を切る。


 もう一人が縦パスのコースを消す。


 柚月は一瞬で状況を見る。


 前はない。


 左もない。


 ならば、失わない。


 身体を相手とボールの間へ入れる。


 右足でボールを小さく動かす。


 相手が足を出す。


 柚月はその瞬間だけ、ボールを半歩後ろへ引く。


 空振り。


 相手の重心が前へ流れる。


 そこで横へ逃がす。


「ナイスキープ!」


 味方から声が飛ぶ。


 柚月は派手に一人を抜いたわけではない。


 それでも、相手二人を引きつけてボールを失わなかった。


 それだけで、別の場所に余裕ができる。


 柚月は走りながら周囲を見る。


 自分のところへ集まってくるなら、それでいい。


 味方が空けばいい。


「もっと寄ってこいっちゃ」


 小さくつぶやく。


 相手が柚月を警戒すればするほど、別の選手が生きる。


 それもまた、試合を動かす方法だった。


 5 わずかな隙


 後半三十四分。


 ベガルタが自陣でボールを回す。


 相手は柚月へのパスを警戒している。


 中央のコースはほぼ消されていた。


 柚月は一度、相手MFの背後へ入る。


 また離れる。


 さらに少し左へ。


 マーカーが迷う。


 ついてくるべきか。


 中央を守るべきか。


 その迷いが、ほんの一瞬だけ生まれた。


 味方DFから柚月へ速いパス。


 柚月は受ける前に前線を見ていた。


 FWが相手センターバックの背後へ動く。


 相手守備が一歩前へ出る。


 その裏。


 空いた。


 柚月はボールを止めない。


 右足のインサイドで、縦へ鋭いパスを送る。


 二列の間を通る。


 FWへ届く。


「前!」


 FWが反転。


 シュート。


 惜しくもGKに止められる。


 スタンドから大きな歓声。


 山田監督はベンチでうなずいた。


 柚月は一秒も長くボールを持っていない。


 それでも、その一瞬の隙を見逃さなかった。


 6 サイドを変える


 相手はさらに中央を締めてきた。


 柚月が入ってから、ベガルタは中央で簡単にはボールを失わなくなっている。


 そこで相手は、中央へ人数を集める。


 柚月はすぐに気づいた。


 右側へ相手が寄る。


 ベガルタも右へ人が集まる。


 左サイドには、大きな空間が残っている。


 味方から柚月へボール。


 相手が前へ出る。


 柚月は正面を見たまま、右へ出すような身体の向きを作った。


 相手も右へ一歩動く。


 その瞬間。


 柚月は身体を開き、大きく左へ蹴り出した。


 長いサイドチェンジ。


 ボールが空中を横切る。


 左サイドの味方がフリーで受ける。


 一気に前へ。


 相手守備が慌てて戻る。


 クロス。


 中央で競る。


 ゴールにはならない。


 それでも、相手の守備陣形を完全に横へ揺さぶった。


 葵が柚月へ声をかける。


「今の、よく見えてましたね!」


「相手が右に寄りすぎてたべ」


「私、全然気づかなかったです」


「ボールだけ見ないっちゃ」


 柚月は笑う。


「守備の形ごと見るんだべ」


 7 大きく蹴る理由


 後半三十八分。


 今度はベガルタが相手のプレスを受ける。


 自陣深く。


 細かくつなごうとすれば、危険な位置だった。


 柚月は味方DFへ声をかける。


「無理しなくていい! 前へ蹴って!」


 ボールが柚月へ入る。


 相手がすぐに囲みに来る。


 一人。


 二人。


 三人目も近い。


 柚月は細かくつなごうとはしなかった。


 大きく前へ蹴り出す。


 相手最終ラインの背後。


 FWが追う。


 相手DFも戻る。


 一見すると単純なロングボール。


 しかし、その間にベガルタの守備陣形が整う。


 後ろの選手たちが押し上げる。


 中盤の距離も縮まる。


 山田監督が声を出す。


「それでいい!」


 柚月は、前へ大きく蹴ることを逃げだとは思わなかった。


 危険な場所で無理をしない。


 味方が整う時間を作る。


 それも中盤の仕事だった。


 8 味方の守備陣形を見る


 後半四十分。


 相手がボールを保持する。


 ベガルタは守備へ切り替える。


 柚月は、ボールだけを追わなかった。


 味方DFラインを見る。


 左サイドバックが少し前へ出すぎている。


 センターバックとの間が広い。


「左、少し下がって!」


 声を飛ばす。


 次に中盤を見る。


 葵がボールへ寄りすぎている。


「葵、中央残って!」


 葵が位置を修正する。


 相手は中央へパスを出そうとしたが、コースが消えている。


 外へ出す。


 ベガルタは全体で横へ動く。


 柚月もついていく。


 速く走りすぎない。


 必要な場所へ移動する。


「無理に奪いに行かなくていい!」


 相手に持たせる。


 でも、危険な場所は使わせない。


 柚月は自分がボールを持っていない時間にも、味方の守備を整え続けた。


 葵が隣で言う。


「柚月さんがいると、どこに立てばいいか分かりやすいです」


「いつか、うちが言わなくても分かるようになってけろ」


「はい!」


 その返事を聞いて、柚月は少し笑った。


 9 黒子に徹する


 試合は終盤へ入る。


 0-0。


 柚月は復帰戦のような得点を決めていない。


 シュートすらまだ一本も打っていない。


 それでも、試合の流れは少しずつベガルタへ傾いていた。


 相手は柚月を警戒する。


 柚月へ寄る。


 そのたびに、ほかの選手が空く。


 柚月は自分で突破しない。


 空いた味方を使う。


 中央が詰まればサイドへ。


 サイドへ寄れば中央へ。


 味方が疲れていれば一度後ろへ。


 守備が整っていなければ大きく前へ。


 その判断を繰り返す。


 山田監督はベンチでつぶやいた。


「今日は、完全に黒子だね」


 スタッフが答える。


「でも、一番試合へ影響しています」


 山田はうなずいた。


 ゴールを決めた前節よりも、この日の方が柚月の本来の価値が見えていた。


 自分が主役になる必要はない。


 チーム全体を動かす。


 そこに、柚月の成熟したプレースタイルがあった。


 10 最後の一手


 後半四十四分。


 ベガルタが右サイドでボールを持つ。


 相手は中央を警戒し続ける。


 柚月が低い位置へ下がる。


 一人がついてくる。


 もう一人も意識を向ける。


 その瞬間、前線のスペースが広がった。


 柚月は味方へ声をかける。


「今、裏!」


 右サイドからロングパス。


 FWが抜け出す。


 相手GKが前へ出る。


 FWは直接狙わず、中央へ折り返した。


 走り込んだ葵。


 シュート。


 ゴール。


 1-0。


 スタジアムが沸く。


 葵は両腕を広げて走る。


 柚月も笑顔で追いかける。


 しかし、得点に直接アシストしたのは柚月ではない。


 記録には残らない。


 それでも、柚月が相手を引きつけたことで生まれたスペースだった。


 葵が柚月へ抱きつく。


「柚月さん、裏って言ってくれたから!」


「決めたのは葵だべ!」


「でも見えてたの柚月さんです!」


「なら半分だけうちのゴールってことで」


「それは違います!」


 二人は笑った。


 11 勝ち点3と、ゴールのない評価


 試合終了。


 ベガルタ仙台レディース、1-0。


 勝ち点3。


 柚月は得点なし。


 公式なアシストもなし。


 それでも、ロッカールームへ戻ると山田監督が最初に柚月へ声をかけた。


「今日の方がよかった」


 柚月は少し驚く。


「復帰戦より?」


「うん」


「ゴール決めてないけど」


「だから」


 山田は笑った。


「相手が柚月を止めに来た。その中で、無理に自分を出そうとしなかった」


 失わない。


 引きつける。


 味方を使う。


 守備を整える。


 一つ先を見る。


「代表で求められるのは、こういう試合もできることだと思う」


 柚月は静かにうなずいた。


 派手な結果ではない。


 それでも、自分自身も分かっていた。


 今日はサッカーができた。


 前節よりも、ずっと。


 12 代表合宿で流された映像


 代表候補合宿。


 原町監督は、早川莉奈と宮野沙季ら中盤の選手たちへ映像を見せていた。


 最初に流れたのは、柚月の復帰ゴール。


 しかし、原町はすぐに映像を止める。


「ここじゃない」


 次の試合へ切り替える。


 柚月が相手二人を引きつける。


 横へ出す。


 サイドチェンジ。


 危険な場所では大きく前へ蹴る。


 味方の守備位置を修正する。


 そして、葵の決勝ゴールへつながる前の動き。


 原町監督が言う。


「これが経験だ」


 早川は画面を凝視する。


「ゴールを決めていません」


「だから見せている」


 原町は答える。


「経験のある選手は、得点しなくても試合を変えられる」


 宮野が言う。


「相手が大船さんを警戒すること自体を利用してる」


「そうだ」


 原町は早川を見る。


「莉奈。お前ならどうする」


 早川は少し考える。


「私なら、もう少し自分で前へ運ぼうとしてしまうと思います」


「悪いわけではない」


 原町は続ける。


「ただし、大船は自分が運ばなくても前へ進める状況を作っている」


 早川はうなずく。


 自分が目立たなくても、チームを前へ進める。


 以前、柚月から聞いた言葉だった。


 触らない時間も攻撃の一部。


 黒子になることも、代表では必要になる。


 原町監督は最後に言った。


「だが、経験だけで代表の席は決まらない」


 画面には、柚月。


 早川。


 宮野。


 それぞれの名前が表示される。


「全員、自分の価値を結果で示せ」


 13 早川からの電話


 その夜。


 柚月のもとへ、早川から電話が入った。


「試合、見ました」


「ゴールなかったべ」


「そこじゃありません」


 柚月は笑う。


「原町監督と同じこと言うなぁ」


「今日の映像、合宿で見ました」


 早川は少し興奮した声で続ける。


「相手が柚月さんへ寄るのを、全部利用してましたよね」


「全部ってほどじゃねぇべ」


「私なら、自分で前を向こうとしてたと思います」


「莉奈はそれが武器だから、悪くないっちゃ」


「でも、前を向かなくても試合を動かせることを、今日すごく感じました」


 柚月は少し黙ってから答えた。


「黒子になるのも楽しいぞ」


「楽しいですか?」


「自分がボール触ってないのに相手が勝手に動いて、味方が空くんだべ」


「言い方がちょっと悪役っぽいです」


「サッカーは駆け引きだからな」


 二人は笑う。


 早川が真剣な声へ戻る。


「柚月さん、代表候補合宿の発表、もうすぐです」


「うん」


「戻ってきてください」


 柚月は少し微笑む。


「戻るっちゃ」


「私、同じピッチで競争したいです」


「うちもだよ」


 少し間を置く。


「でも、負けねぇからな」


「私もです」


 14 原町監督の評価


 試合後の状態確認も問題はなかった。


 右ふくらはぎには通常の疲労感。


 強い張りなし。


 痛みなし。


 代表スタッフにも報告が届く。


 原町監督は資料を見ながら、岩出コーチへ言った。


「二試合目の方が重要だったな」


「はい」


「復帰ゴールの次に、同じことを狙わなかった」


「相手の警戒を使っています」


 原町はうなずく。


「試合を読む力は落ちていない」


 岩出が尋ねる。


「候補合宿へ呼びますか」


 原町監督は、しばらく柚月の名前を見つめた。


「身体の状態をもう一度確認する」


「問題がなければ?」


 原町は答えた。


「呼ぶ」


 15 ユリへ話した黒子の仕事


 夜。


 名取百合子の遺影の前。


 柚月は試合映像を流していた。


「ユリ。今日はゴールなかった」


 胸の中で、すぐに返事が来る。


「だから?」


「いや、もうちょい残念がってくれねぇかなと思って」


「チーム勝ったんだべ?」


「勝った」


「ならいいっちゃ」


 柚月は笑う。


「今日はずっと黒子だった」


「柚月にしては珍しいな」


「失礼だなぁ」


「昔なら何でも自分でやろうとしてたべ」


「昔の話ばっかり掘り返すなっちゃ」


 少し笑ったあと、柚月は静かになる。


「でも、今日は楽しかったよ」


「何が?」


「相手がうちを警戒するたび、ほかが空くんだべ。それを見つけるのが面白かった」


「ちゃんと試合見えてるな」


「うん」


「なら戻ってきてるっちゃ」


 柚月は右ふくらはぎへ手を添える。


 戻っている。


 身体も。


 感覚も。


 判断も。


 ただし、まだ終わりではない。


「代表合宿、そろそろ発表だって」


「呼ばれるといいな」


「呼ばれる」


 柚月は言い切った。


「自信あるな」


「そのために戻ってきたんだべ」


 机の上には、ワールドカップの金メダル。


 その隣には、復帰戦の記念ボール。


 そしてロードマップ。


 そこへ新しい項目を書き込む。


 公式戦二試合出場。


 身体反応、問題なし。


 次の欄。


 代表候補合宿。


 柚月はペンを置いた。


 黒子に徹した二十分は、派手な復帰ゴールよりも確かな一歩だった。


 次回予告

 第50章「名前が戻る日」


 公式戦二試合を問題なく終えた柚月。


 一試合目は復帰ゴール。


 二試合目は相手の厳しいマークを利用し、黒子としてチームの勝利を支えた。


 そして、ロサンゼルスオリンピック予選候補合宿の招集メンバーが発表される。


 早川莉奈。


 宮野沙季。


 森岡美里。


 伊達葵。


 そして、その一覧の中に再び刻まれる名前。


 大船柚月。


 長い離脱を経て、柚月はなでしこジャパンへ戻る。


 しかし、原町監督は初日のミーティングで告げる。


「戻ってきたことを祝う場所ではない。ここから競争だ」


 代表の練習強度。


 クラブとは違う速度。


 久しぶりに同じピッチへ立つ早川莉奈。


 二人は笑顔で再会し、すぐに競争相手の顔へ戻る。


「柚月さん、おかえりなさい」


「ただいま。で、席は返してもらうっちゃ」


「簡単には返しません」


 そして、代表の練習着にもう一度袖を通した柚月は、胸のエンブレムへ手を置く。


 次回、

 第50章「名前が戻る日」


 戻ることがゴールではない。


 代表へ戻ったその日から、オリンピックへの本当の競争が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ