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あの日の春風は今も  作者: リンダ


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ベスト4をかけた死闘

ベスト4をかけた死闘


日本対ブラジル――後半25分まで


1.ハーフタイム――二点差は安全圏ではない


前半終了。


日本 2―0 ブラジル。


柚月の低いミドルシュート。

そして、前半アディショナルタイムに西野が決めたペナルティーキック。


数字だけを見れば、日本にとって理想的な前半だった。


しかし、ロッカールームへ戻る選手たちの表情に、二点差の余裕はなかった。


前半だけで、ブラジルは何度も日本のゴール前へ迫っている。

葵の好セーブがなければ、スコアはまるで違うものになっていた。


ベンチへ引き揚げる途中、柚月が美里へ声をかける。


「向こう、後半は最初っから全部出してくるべな」


美里は汗を拭いながら、短くうなずいた。


「うん。二点を一気に取り返すつもりで来る。最初の十分、絶対に受け身にならないよ」


日本のロッカールームでは、原町監督が選手たちを拍手で迎えた。


「よくやった。二点とも狙い通りだ」


それから、声をわずかに低くする。


「でも、この試合はまだ半分しか終わってない。むしろ、ここからが本当のブラジルだ」


岩出コーチがスクリーンに前半のデータを映す。


ボール支配率はブラジルが六十七パーセント。

シュート数もブラジルが上回っていた。


だが、決定機の質とゴール前での冷静さでは、日本が勝っている。


「ブラジルは後半、間違いなく前線の人数を増やしてくる。ルアナ・フェレイラを一列上げて、ベアトリスとカロリーナをより内側に入れてくる可能性が高い」


岩出がマグネットを動かす。


「そうなれば、中央の圧力は強くなる。ただし、両サイドバックの背後はさらに空く。守るだけじゃ駄目だ。奪ったら必ず出口を作る」


原町が続ける。


「二点あるから守ろう、とは考えるな。そう思った瞬間、二点なんかすぐ消える。ブラジルは一点取ったら、スタジアム全体を味方につけてくる」


選手たちの顔を一人ずつ見る。


「三点目を取りに行け。ただし、熱くなるな。相手の熱を使え」


葵がグローブのベルトを締め直す。


「来た分、全部止めます」


原町は葵へうなずき、最後に全員へ告げた。


「この試合、きれいには終わらないかもしれない。打ち合いになっても驚くな。最後に一点多く取った方が勝ちだ」


その言葉が、やがて現実になることを、この時点では誰も知らなかった。



2.後半開始――開催国の反撃


両チームがピッチへ戻る。


スタンドは、前半よりもさらに騒がしくなっていた。


ブラジルのサポーターが黄色と緑の旗を振り、太鼓を打ち鳴らす。

二点を追うホームチームを、声で押し戻そうとしていた。


実況


「さあ、後半が始まります。日本が二点をリードしていますが、ブラジルはこのままでは終われません!」


解説


「最初の十分が非常に重要ですね。ブラジルが一点を返せば、スタジアムの雰囲気が一気に変わります。日本は引きすぎず、三点目を狙う姿勢も必要です」


主審の笛。


ブラジルのキックオフで後半が始まった。


開始直後から、ブラジルは前半とは明らかに異なる立ち位置を取った。


アンカーのアナ・クララが最終ライン近くまで下がってボールを引き出す。

両サイドバックは高い位置へ。

ルアナ・フェレイラは日本のボランチと最終ラインの間へ入り、前を向く機会をうかがう。


右のベアトリス・シルヴァが内側へ絞る。

左のカロリーナ・ジェズスも中央へ寄り、マリアナ・コスタの近くで第二のストライカーのように動く。


ブラジルの前線に、四人が並ぶ。


美里が叫んだ。


「中央、人数増えた! 受け渡しはっきり!」


柚月も周囲を見渡す。


「ルアナ、離すな! 前向かせねぇぞ!」


しかし、ブラジルのパススピードは前半より速かった。


一度外へ出す。

日本が寄る。

その瞬間に中央へ戻す。


ルアナがワンタッチで前を向く。


ほんの一瞬だった。


だが、世界のトップレベルでは、その一瞬で十分だった。



3.後半2分――ブラジル、反撃の一撃


後半二分。


ルアナが中央で受け、右へ流した。


ベアトリス・シルヴァが日本の左サイドバックと向き合う。


一度、縦へ行くふりをする。

次の瞬間、右足の裏で内側へボールを引いた。


日本の守備者の重心が、わずかに外へ流れる。


その隙に、ベアトリスがペナルティーエリア右角へ侵入した。


実況


「ベアトリス、切り返した! 中へ入る!」


解説


「ここは危険です! シュートも、折り返しもあります!」


西野が前へ出る。


ベアトリスはシュートを打たない。


ゴール前へ、速いグラウンダーを送った。


中央のマリアナ・コスタがニアへ走り、國武を引きつける。

しかし、マリアナも触らない。


ボールはその後ろへ流れる。


ファーサイドから、カロリーナ・ジェズスが飛び込んでいた。


右足を合わせる。


葵が反応する。


だが、至近距離だった。


ボールは葵の左手の先を抜け、ゴール右隅へ転がり込んだ。


後半2分。

日本 2―1 ブラジル。


実況


「ブラジルが返した! 後半開始わずか二分! カロリーナ・ジェズスのゴールです!」


スタジアムが揺れた。


音ではなかった。

巨大な圧力が、ピッチ全体へ落ちてきたようだった。


ブラジルの選手たちはボールを拾い、急いでセンターサークルへ戻る。


一点差。


日本のベンチで原町が、両手を下へ向けた。


落ち着け。


美里も同じ合図を送る。


「大丈夫! 想定内! 顔上げて!」


葵は悔しそうに唇を噛んだが、すぐに声を張った。


「次、止める! 切り替えよう!」


柚月はセンターサークルへ戻りながら、胸の中でつぶやく。


(ユリ。やっぱり、簡単には勝たせてくれねぇな)


風は答えない。


だが柚月は、ほんの少し笑った。


(面白くなってきたべ)



4.日本の返答――熱に付き合わない


日本のキックオフ。


スタジアムの大歓声を受け、ブラジルが一斉に前へ出る。


前線から三人。

その後ろからルアナ。

さらに両サイドバック。


日本からボールを奪い、同点へ持ち込もうとする圧力だった。


だが、日本は慌てて前へ蹴らなかった。


美里から柚月。

柚月から國武。

一度、葵まで戻す。


観客席から大きなブーイングが起きる。


それでも、葵は急がない。


左へ。

西野へ。

西野が日比谷へ縦を入れる。


日比谷は背中で受け、ワンタッチで美里へ戻す。


ブラジルの五人が、日本のパスを追って動かされる。


解説


「日本、非常に冷静ですね。一点を返されましたが、相手の勢いに合わせて速くしていません」


実況


「むしろブラジルを走らせています!」


ブラジルの守備が右へ寄る。


美里は一度、右を見る。


出さない。


さらに一拍待ち、逆の左へ大きく展開した。


日比谷がフリーで受ける。


ブラジルの右サイドバックが慌てて戻る。


その背後へ、渡瀬が走り出した。


「行ける!」


日比谷から縦へ。


渡瀬が追いつき、ペナルティーエリア左へ入る。


中央へ柚月。

その後ろから美里。


ブラジルの守備が戻る。


渡瀬はクロスを上げると見せて、マイナスへ戻した。



5.後半6分――日本の三点目


ボールを受けたのは美里だった。


ペナルティーアーク手前。


ブラジルのアンカーが正面から寄せる。


美里は右足でシュートを打つ構えを見せた。


相手が身体を投げ出す。


その瞬間、左へ短く流した。


日比谷が再び走り込んでいる。


日比谷は左足で低く折り返す。


ゴール前。


渡瀬がニアへ。

柚月が中央へ。


ブラジルDFの視線が二人へ集まる。


しかし、その後ろから一人、遅れて入ってきた。


相沢紗英。


日比谷の折り返しに、右足のインサイドを合わせる。


強く蹴らない。


GKカミーラ・ロシャの逆を取るように、ゴール左隅へ置いた。


ネットが揺れる。


後半6分。

日本 3―1 ブラジル。


実況


「日本、すぐに突き放した! 相沢紗英! ブラジルが一点を返してから、わずか四分です!」


解説


「いやあ、素晴らしいですね。一点を取られた後に慌てず、ボールを動かしてブラジルを走らせました。最後は遅れて入った相沢。完全に日本の狙い通りです」


相沢が両腕を広げて走る。


柚月たちが一斉に集まる。


美里は相沢の頭を両手でつかみ、笑った。


「最高! あの入り、完璧!」


「日比谷の折り返しが全部です!」


柚月も肩を叩く。


「よぐ見でだな! 浮がねぇで、次も取るべ!」


三点目。


再び二点差。


だが、試合の速度は落ちなかった。


むしろゴールが生まれるたび、両チームの攻撃意欲は強くなっていった。



6.ブラジルのフィジカルが日本を押し込む


ブラジルは、二度目の二点差にも折れなかった。


開催国として、このまま終わるわけにはいかない。


マリアナ・コスタが最前線で、日本のCB二人を背負う。

アナ・クララがロングボールを入れる。


マリアナは國武と身体をぶつけながら、胸でボールを落とした。


そのボールをルアナが拾う。


日本の中盤が寄せる前に、ルアナが左へ展開する。


カロリーナが受け、縦へ加速。


一歩目で抜き切れなくても、身体を当ててボールを守る。

日本の守備者が足を入れても、簡単には倒れない。


前半より、明らかに強度が上がっていた。


実況


「ブラジルの攻撃が止まりません! カロリーナ、強引に持っていく!」


解説


「日本は今、ボールを奪い切れない時間ですね。ブラジルの選手がフィジカルで保持しています」


カロリーナが左からクロス。


中央のマリアナが國武より高く跳ぶ。


ヘディング。


ボールはゴール右へ。


葵が横へ飛び、両手で弾き出した。


実況


「葵が止めた! ブラジル、またも決定機!」


葵はすぐに立ち上がる。


「マーク確認! まだ来るよ!」


その言葉通り、ブラジルの攻撃は続いた。



7.後半12分――ブラジル、再び一点差


ブラジルの右コーナーキック。


キッカーはルアナ。


右足で、ゴールから逃げるアウトスイングのボールを蹴る。


日本は國武、西野を中心に高さへ備える。


だが、ブラジルは空中戦だけを狙っていなかった。


ニアへ走ったイザベラ・モラエスが、日本の守備者を二人引きつける。


ボールはその頭上を越え、ファーサイドへ。


マリアナが折り返す。


中央で混戦。


西野がクリアしようと足を伸ばす。


ボールがブラジル選手の身体へ当たり、ペナルティーエリア外へこぼれた。


そこに、アナ・クララが待っていた。


右足を振り抜く。


地面すれすれの低いシュート。


日本の選手たちの足の間を抜ける。


葵はボールが見えた瞬間、左へ飛んだ。


だが、わずかに届かない。


ゴール左下へ突き刺さる。


後半12分。

日本 3―2 ブラジル。


実況


「ブラジル、また一点差! アナ・クララの強烈なミドルシュートです!」


解説


「葵からは見えなかったでしょうね。複数の選手が前にいて、最後の瞬間までボールが見えていません」


アナ・クララが拳を突き上げる。


黄色いスタンドが沸騰する。


三対二。


再び一点差。


ブラジルは同点を信じ、ボールをすぐにセンターへ運んだ。


原町はベンチ前へ出る。


「慌てるな! 打ち合いでいい! 最後に一点多く取るぞ!」


その言葉は選手たちへ届いた。


美里が大きくうなずく。


「聞こえたね! 次はうちら!」



8.ピッチの中央が消える


後半十五分を過ぎるころ、試合は戦術の枠を飛び越え始めた。


日本がボールを奪えば、ブラジルの背後へ走る。

ブラジルが奪い返せば、フィジカルとスピードで日本のゴールへ迫る。


中盤でボールを落ち着かせる時間がない。


攻撃。

守備。

再び攻撃。


両チームの選手が、ピッチを何度も往復する。


実況


「これはものすごい試合になってきました! 両チーム、まったく手を緩めません!」


解説


「本来なら、どちらかが一度落ち着かせたいところです。ただ、ブラジルは開催国として前へ行くしかない。日本も守り切るのではなく、空いた場所を狙っています」


柚月は息を切らしながら、美里へ言った。


「向こうの左、戻り遅ぐなってる!」


美里が一度だけ右を確認する。


「次、そこ使うよ!」


日本は危険を感じながらも、次の得点機を探していた。



9.後半18分――四点目、再び突き放す


ブラジルが左サイドから攻める。


カロリーナが日本の右サイドバックをかわし、中へ切り込む。


だが、美里がカバーへ入った。


カロリーナの足元から、美里がボールをつつき出す。


こぼれたボールを柚月が拾う。


柚月はすぐに前を向いた。


ブラジルの左サイドバックは、高い位置に残っている。


その背後へ、渡瀬が走った。


「ひかり、行げ!」


柚月の長い斜めのパス。


ボールはブラジルDFの頭上を越え、右サイドの空いた場所へ落ちる。


渡瀬が追いつく。


GKカミーラは、ゴール前から出るかどうか迷う。


中央では日比谷が走る。

反対側から相沢も入る。


渡瀬は一度、日比谷を見る。


ブラジルCBが中央へ絞る。


次の瞬間、渡瀬はニアへ強いボールを入れた。


日比谷が右足を出す。


しかし、触らない。


ボールは日比谷の後ろを通過する。


ファーから相沢が飛び込む。


左足で押し込んだ。


後半18分。

日本 4―2 ブラジル。


実況


「日本、四点目! 再び二点差です! 相沢、この試合二点目!」


解説


「見事なカウンターです。柚月の斜めの展開、渡瀬の判断、日比谷のスルー。ブラジルの守備を完全に横へ動かしました」


相沢がネットの中からボールを見つめる。


そのまま両腕を広げ、仲間たちのもとへ走った。


柚月が笑いながら叫ぶ。


「今日、二点目だべ!」


相沢も笑う。


「まだ取れます!」


四対二。


しかし、誰も試合が決まったとは考えていなかった。


この日のブラジルには、二点差を安全圏に変えさせない熱があった。



10.開催国の執念


ブラジルは前線の選手を交代させた。


新たに入ったのは、快速FWのソフィア・アウヴェス。


小柄だが、低い重心からの加速が鋭い。

交代直後から日本の最終ラインの背後を狙う。


さらに中盤には、強烈なミドルシュートを持つエロイーザ・リマが投入された。


ブラジルは守備の人数を削ってでも、攻撃の圧力を上げようとしていた。


実況


「ブラジル、二枚替えです! ここで攻撃的なカードを切ってきました!」


解説


「四対二ですが、ブラジルはまだ諦めていません。むしろ、ここから守備を捨ててでも点を取りに来るでしょう」


ソフィアが右へ流れ、ベアトリスと位置を入れ替える。


日本のマークが一瞬ずれる。


そこへ、ルアナが縦パスを通す。


ソフィアがペナルティーエリア右へ抜け出した。


西野が必死に戻る。


葵も前へ出る。


ソフィアはシュートを打つと見せて、中央へ折り返した。


マリアナが走り込む。


國武が身体を投げ出してブロック。


ボールはこぼれる。


さらにエロイーザがシュート。


今度は美里が足を出す。


ボールは日本の選手に当たり、ゴールラインを割った。


ブラジルのコーナーキック。


スタジアムの太鼓が、さらに速くなる。



11.後半23分――ブラジル三点目


左コーナー。


ルアナがキッカーを務める。


日本はゴール前へ人数を集める。


葵が声を張る。


「ニア、國武! 西野、中央! ファー確認!」


ルアナがボールを蹴る。


ゴールへ向かって巻いてくるインスイング。


ニアでイザベラが飛ぶ。


國武も競る。


二人の頭上を、ボールが越えた。


ファーサイド。


マリアナが西野を背負いながら、頭で中央へ折り返す。


その落下点へ、途中出場のエロイーザが入っていた。


胸で一度落とす。


日本の守備者が寄せる前に、左足を振り抜く。


ボールは國武の身体に当たり、コースが変わった。


葵は右へ動き始めていた。


しかし、ボールは逆の左へ。


葵が足を踏み替える。


届かない。


ネットが揺れた。


後半23分。

日本 4―3 ブラジル。


実況


「また一点差! ブラジル、エロイーザ・リマのゴール! この試合、とんでもない展開になりました!」


解説


「シュートが日本の選手に当たって、コースが変わりました。葵としては非常に難しかったですね」


エロイーザがボールを拾う。


ブラジルの選手たちは、喜ぶ時間すら惜しんでセンターサークルへ戻る。


一点差。


スタジアムの音が、さらに大きくなる。


日本の選手たちは互いに顔を見合わせる。


疲労はある。

足も重い。

守備ラインの呼吸も、わずかに乱れ始めていた。


だが、美里は笑った。


「すごい試合になったね」


柚月も息を切らしながら笑い返す。


「ユリ、絶対喜んでるべな。こういう試合、大好きだったもん」


ゴール前から葵が叫ぶ。


「感想はあと! 次、絶対止めるよ!」


その一言に、全員が再び集中する。



12.後半25分――一点差のまま、次の波へ


後半二十五分。


スコアは、日本 4―3 ブラジル。


後半だけですでに五点が動いていた。


日本が三点目を奪えば、ブラジルが返す。

日本が四点目を奪えば、またブラジルが返す。


二点差が安全圏にならない。


一点が入るたびに、試合の温度がさらに上がる。


実況


「残り二十分とアディショナルタイム。日本が一歩リードしていますが、まったく予断を許しません!」


解説


「ここからは交代策と体力ですね。両チームとも中盤がかなり開いています。日本としては、一度ボールを長く持って落ち着かせたい。ただ、ブラジルがそれを許してくれないでしょう」


ブラジルのキックオフ。


アナ・クララからルアナへ。


再び、前へ。


ソフィアが走る。

ベアトリスが内側へ入る。

マリアナが最終ラインを背負う。


日本も下がるだけではない。


渡瀬が前線に残り、ブラジル守備陣へ背後の恐怖を与える。

柚月はセカンドボールを拾い、次のカウンターの起点を探す。

美里は中央で、崩れかけるチームの距離を必死に整える。


「あと二十分! 面、狭くするよ!」


柚月が返す。


「奪ったら一回持つ! でも空いだら刺すべ!」


葵はゴール前で両手を叩く。


「絶対、もう入れさせない!」


だが、誰もが心のどこかで感じていた。


この試合は、まだ点が動く。


四対三。


ベスト4をかけた壮絶な打ち合いは、

ここからさらに激しさを増し、やがて五対四という、誰も予想できなかった結末へ向かっていく。


スタンドの片隅。


徹はユリの遺影を胸に抱きながら、ピッチを見つめていた。


写真の中のユリは、恐れているようには見えなかった。


まるで、心の底からこの激闘を楽しむように、優しく微笑んでいた。

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