災い転じて福となす
「さあ、これが新しい足ですよ」
ルオラは、針金でカブトムシに新しい足を作ってあげた。
ルオラはもちろん鳥が一番好きだったが、犬も猫も、昆虫も大好きだった。
オリヴェートはルオラの動作をずっと、眉間に皺を寄せて見ていた。
ルオラはオリヴェートの刺さるような視線を向けられながら、足を作り終えた。
昆虫に義足を作るという発想は、昔母親が話していたことを思い出したからだった。
「ティアナ様、そのカブトムシはどうするのですか? 放すのでしたら、私が」
ルドマン執事がそう言ってきたが、ルオラは手の平に乗せたままだった。
「家で様子を見ます」
ルオラは大切そうに、カブトムシの頭を撫でた。
「でしたら、こちらの箱をご使用下さい」
「わざわざ、ありがとうございます」
ルオラはその箱にカブトムシを入れて蓋をした。
すると、オリヴェートはやっとお茶を口に運んだ。しかし、カチャカチャとカップとソーサーが触れあった。
それに気づいたルオラは、純粋に質問した。
「もしかして、虫が苦手なんですか?」
そう言った瞬間、オリヴェートは硬直した。そして、視線を外に向けた。
「……別に」
とても小さい声であったが、ルオラの耳にギリギリ届いた。
「そうですか? でしたら、箱の蓋を開けておいても良いですか? カブトムシにも太陽を感じてほしいので」
「……」
オリヴェートは密かに震えだした。
「ルオラ様、オリヴェート王子は虫の造形が得意ではないのです。カブトムシは私が責任を持ってお預かりします」
見かねたルドマン執事がやんわりと、そう言った。
「あ、そうだったんですね。気づかなくてすみません……」
ルオラは造形という言葉に首を傾げつつも、苦手である事は伝わったので、カブトムシの入った箱をルドマン執事に預けた。
「……」
カブトムシが居なくなって、オリヴェートはため息をついた。
ルオラは、申し訳ない事をしたなぁ、っと反省した。
「……君は、犬も虫も平気みたいだな」
今度はルオラが硬直する番だった。
やっと、オリヴェートが会話らしい会話をしてくれたのである。
「は、はい! 屋敷の中に畑があるので、虫には慣れています! それに、動物も好きです!」
ルオラは食いぎみに返答した。
「……そうか。畑か……」
さらにオリヴェートから返事が返ってきて、ルオラはとてつもなく嬉しくなった。
「はい! 自慢の畑なんです!!」
ぱあっ、とルオラは花が咲いたかのような表情になった。それを見たオリヴェートは、ルオラの輝きに驚き、何故か恥ずかしくなった。
すると、小鳥が近くの木の枝に止まった。その小鳥は、白いお腹に黒の線が中央に入っており、羽と頭が黒かった。
ルオラは「シジュウカラだ!」と、また少年に戻ってポケットから巾着を取り出そうとした。
するっと、それは手元を滑って地面に落ちた。
スカートの膨らみが邪魔して、なかなか椅子に座った状態から腕を伸ばしても巾着がとれなかった。
見かねたオリヴェートが、さっと巾着を拾ってルオラに差し出した。
「す、すみません……」
ルオラは、ティアナである事を思いだし、巾着をそのまま元のポケットに突っ込んだ。
「……今日は呼ばないのか?」
オリヴェートの言葉を聞いて、ルオラは彼の顔を見た。
「……よ、呼んでも良いのですか?」
「……好きにすれば良い……」
そう言って、オリヴェートはそっぽを向いてしまった。
ルオラは許可が出たと思って、さっそくシジュウカラを呼んだ。
「ヂヂヂヂ」
すると、すぐにシジュウカラはルオラの元に飛んできた。
「ははっ、素直な子」
ルオラは急いで巾着からトウモロコシを出すと、シジュウカラにあげた。
そのシジュウカラが「ジジジジ」と仲間を呼ぶ。すると、シジュウカラだけでなく、先程オリヴェートの部屋で会ったヤマガラも飛んできた。
ヤマガラは餌を横取りしようと、シジュウカラを威嚇した。
「ヤマガラってば!」
ルオラは、ヤマガラから守るように、シジュウカラの口許にトウモロコシを持っていった。
数匹の小鳥がルオラの周りで飛び交い、肩に止まる。
その姿は、絵本に出てくるお姫様のようで、オリヴェートは「ふふっ」と笑った。
「えっ!」
その表情をばっちり見たルオラが驚きの声をあげると、小鳥達も何事かといっさに羽をばたつかせて行ってしまった。
(今、笑った……よね?!)
ルオラは、オリヴェートが笑った方が何百倍も驚きだった。ドキドキと心臓が騒いだ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます! 頑張ります! しゃす!




