助け船
お茶会にやってきたのは、オリヴェートだった。
「……オリヴェート王子……」
ルオラは驚いた。
令嬢達も驚き、声すら出ないようだった。
「兄さん、来てくれたんですね」
一人、ヨハエルはにこりと笑ってオリヴェートに挨拶をした。
「これはどういう事だ」
オリヴェートの声に緊張感が走り、空気が重くなった。
「僕の婚約者を愚弄するとは、相応の処罰を受ける覚悟はあるのか?」
「しょ、処罰だなんて……私達は仲よく話をしていただけで……」
令嬢達はうろたえ始めた。
「仲良く話、だと?」
鋭い視線が令嬢達に突き刺さる。
「っ!」
「彼女は僕と婚約しているのだぞ。結婚すれば、王族になる。少し父親が名誉を授かったくらいで、王族を愚弄して良い事にはならない」
「も、申し訳ございません」
タルシアは慌てて謝罪を述べた。
ルオラは、ティアナを婚約者だと認めているオリヴェートに驚いた。
すると、ルオラはオリヴェートと目がばっちり合ってしまった。
「あちらに茶の席を設けました。行きますよ」
そう言ってオリヴェートは、ルオラに手を差し出してきた。
ルオラは驚いた。まさか、彼から歩み寄ってくれるとは思っていたなかったのだ。
「は、はい……」
ルオラはその手をとって立ち上がった。
「ワンワン!」
その時、突然犬が走ってきた。
「!」
オリヴェートは驚き、ルオラの手を離す。犬は、ルオラに一直線に走っていた。
「キャー!」「こっちこないで!」
令嬢達も苦手なのか、怖いのか各々悲鳴を上げる。
そして、犬はルオラに襲いかかった。
「!」
オリヴェートはルオラのすぐ隣にいるのに、一歩も動けずにいた。
「わっ!」
ルオラは犬に突進されて、尻餅をついた。
「誰か!」
オリヴェートが叫んだ。
「あはは! くすぐったいですよ!」
ルオラは、犬に迫られて笑っていた。
犬に顔をすんすん嗅がれて、くすぐったそうにしていたのである。
その事態に、周囲は呆気にとられていた。
オリヴェートも、驚いて目を大きくさせてルオラと犬を眺めていた。
すると、犬は口を開けて、ルオラの目の前にあるものを吐き出した。
……カブトムシだった。
「ひぃ!」「なんて事なの……!」
またしても騒ぐのは令嬢達。
「あ、こんなものを口にいれてはダメですよ。虫さんが可愛そうでしょうに……」
ルオラは、犬の口から吐き出されたそのカブトムシを手のひらに乗せて、保護した。
そのカブトムシは足が1つなく、羽もグシャグシャになっていた。
「あらら……」
ルオラは終始取り乱す事がなかった。
それを見たヨハエルは、驚くと共に、歯ぎしりをした。
(何故だ……! 女なら犬も虫も怖がるばすだろ! 兄さんに恥をかかせる計画が、パァじゃないか!)
ヨハエルは、この日の為にルオラの屋敷へ押し掛け、ルオラからハンカチを手に入れたのだった。
その臭いを犬に嗅がせて、意図的に襲わせた。更には、口の中に無理矢理カブトムシを入れて、わざと吐き出させた。
オリヴェートは、犬や昆虫が苦手だった。
もし、婚約者が犬に襲われていたとしても助ける事はしないだろう、とヨハエルは踏んでいたのだ。
婚約者を犬からも助ける事が出来ない王子、そうレッテルを貼らせるつもりだったというのに……。
計画が失敗したヨハエルは、怒りで震えていた。
「ヨハエル、すまないが僕たちはこれで失礼する」
「……はい」
オリヴェートの声に、瞬時に笑顔を取り繕ったが、ひきつっていた。
ルオラは手のひらに昆虫を乗せたまま、ルドマン執事が用意したお茶の席に着いた。
「あの、針金ってありますか?」
ルドマンが紅茶を淹れている時に、ルオラは話しかけた。
「針金、ですか? ……あるとは思いますが、どのくらいの長さをご所望でしょうか?」
「5cmもあれば十分です」
オリヴェートは眉にしわを寄せながら、二人の会話を聞いていた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました! ちょっと時間が飽きましたが、最後まで頑張ります! しゃす!




