失敗と転機
「み、三日振りです……オリヴェート王子……」
「……」
ルオラへの挨拶に、オリヴェートは完全無視だった。
「あの、無理を言って時間を作って頂き、ありがとうございます」
「……」
ルオラは自分が何を言っても、オリヴェートには届かないだろうと思った。
ヨハエルやルドマン執事から本当は優しくい方、だと言われたものの、どう相手と関われば良いのかさっぱり分からなかった。
オリヴェートの部屋らしき、この部屋にはテーブルと勉強机しかなく、さっぱりとしていた。
窓が少しだけ開けられているので、外の空気が適度に入ってくる。
もう、本当にそれだけの空間だった。
ルオラは何も考えていなかったので、助けを求めるように窓の方を見つめた。
すると、そこへ小鳥が飛んできた。
それを見たルオラは目を輝かせ、席を立った。
「や、ヤマガラだ……!」
ルオラは完全にティアナの振りを忘れて、素の感情で窓に近づいた。
屋敷にも沢山の種類の鳥がやってくるのだが、ヤマガラはあまりいなかった。
ヤマガラはまだ近くを飛んでおり、ルオラはポケットに忍ばせておいた巾着を取り出した。中に入っていた乾燥したトウモロコシを数粒手のひらに乗せて、「ニーニーニー」と鳥の鳴き真似をする。
口笛のような細い声は、鳥の鳴き声そっくりで、少し開いていた窓からその手を出していると、聞き付けたヤマガラが手の平に飛んできた。
「ふふっ、こんな高い所まで飛んでくるなんて、よっぽとお腹が空いていたんだね」
手の平でトウモロコシを啄むヤマガラを見て、ルオラは優しく笑った。
「……」
何やら視線を感じたルオラは、自分の置かれた状況を思い出した。
錆びたからくり人形のような動きで振り返ると、謁見の間で見た時と同じような鋭い視線を向けられていた。
「お、オリヴェート王子……これは、その……」
ルオラは血の気の引く思いだった。ティアナとしての自分を忘れていたこの数分、自分がどんな振る舞いをしていたかあまり覚えていない。
ただでさえ田舎貴族だというのに、鳥とお喋りするだなんて、きっと変に思われたはずだ。
言い訳も思い浮かばないし、ルオラはどうすれば良いのか分からず、不安と焦りで身体が震えた。
「……帰れ」
冷たい言葉が降りかかる。
「あの、でも……」
次に会う日を取り付けなければ、今度こそティアナ本人をオリヴェートと会わせなければならないのに……。
「帰れ」
はっきりと言われてしまった。
ティアナは何も言い返す事が出来ずに、オリヴェートの部屋を後にした。
ど、どうしよう……。
ルオラは自分のしでかした事の大きさに、頭が真っ白になっていた。
ルドマン執事に送られながら城の外に向かって歩いていた。
「オリヴェート様は、貴女を傷つけたい訳ではないのです。それだけは、ご理解下さい」
「……はい。それは、分かっている、つもりです……」
「あれ、ティアナさん!」
ルオラは一瞬自分に言われた言葉だと気づく事ができなかった。
「ティアナさんってば!」
声をかけられて顔をあげると、向かいからヨハエルが歩いてきた。
「こんなところで会うとは奇遇ですね。兄に会いに来ていたんですか?」
「……あ、はい。そうなんですけど……帰れ、と言われてしまって……」
「え! あの人そんな事言ったのですか?!」
「……私がそう言わせてしまったんです……オリヴェート王子に嫌われてしまったんです……」
ずーん、とルオラは落ち込んだ。
「元気出してくださいよ~! まだ諦めるのは早いですよ! あ、これからお茶会を開くんですけれど、来ませんか?」
「えっ?」
「折角だから兄さんも呼ぼうかなぁ」
「そ、それは本当ですか?!」
ルオラは、無意識にヨハエルの腕を掴んでいた。
「わっ! ……ティアナさん、握力強いですね……」
驚いたヨハエルは、ルオラの握力の強さに跳び跳ねそうになるのを何とか堪えた。
「あ、すみません」
「ささ、行きましょう!」
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