ルオラの頑張り
オリヴェートは自室の窓から外の景色を眺めていた。
するとドアをノックする音が聞こえた。
「何だ」
「ルドマンです。ティアナ様がお目通りしたいそうです」
「……通せ」
オリヴェートは、少しだけ窓を開けたままにし、腕を組んで仁王立ちとなった。
扉が開いてやってきたのは、先程倒れたティアナ・バレッティ。
謁見の間で一ミリも興味がない事を分からせてやったはずだというのに、今さら何をするつもりなのだろうか。
「……先程は、失礼しました、オリヴェート王子。ティアナ・バレッティと申します……」
ティアナは、スカートを広げて挨拶をした。オリヴェートはその姿を流し目程度に聞き流す。
「……あっ、あの……。オリヴェート王子……おr、じゃなくて、私に興味ないのは分かりました。ですが、日を改めてもう一度会っては頂けないでしょうか?」
「……」
日を改める、だと? オリヴェートは眉をひそめた。
「一週間後、いえ五日後など都合のつく日はありますか?」
ティアナは必死に交渉しているつもりのようだが、オリヴェートは一切聞き入れるつもりはなかった。
「そ、それなら三日後でもいいので!」
「……」
オリヴェートは無視を決め込んだ。
「その、今日の私は私……のようで、実は違っている……と言いますか……」
おどおどとティアナは良く分からない事を口走っている。
全く、落ち着きのない娘だ、とオリヴェートは心の中でため息をついた。
このような娘が王宮に入れば、いい笑い者だ。婚約の話をさっさと諦めてもらえなければ。
「つ、つまり、もう一度お話しする機会を下さい!」
ばっ! とティアナはオリヴェートの両手を掴んで懇願してきた。
「っ!」
「お願いします!」
きゅっと掴んできたティアナの手に、オリヴェートは驚いた。
剣術の稽古で鍛えられているオリヴェートの手の平よりよっぽど固かった。
「オリヴェート様!」
ぐぐぐ、とティアナの手に込める力が強くなった。
「……わ、分かった」
オリヴェートは早く手を離してほしくて、無言を貫くはずが、そう呟いていた。
ルオラは三日後に何とか約束を取り付けた事で、バレッティ卿の機嫌を損ねずに済んでいた。
バレッティ卿も三日あれば、娘を探すのに十分だろう、と思っていた。
一日目、貴族の権力と金に物を言わせて匿名で警察に失踪届けを提出。全国での一斉捜索が始められた。
しかし、有力な手がかりは掴めず。
二日目、同じく朝から捜索が始まる。最低限の者を残して使用人も駆り出され、余計な仕事が増えた事に、一部の使用人は腹を立てていた。
どうやら港町で男性といる目撃情報が入ったが、近くの宿舎を探すも見つからず。もしかしたら、隣の国に逃げたのではないかと推察された。
三日目、バレッティ卿本人がまたも貴族の権力と金に物を言わせて船を出させ、隣の国へ出発した。隣の国まで半日なので、夜中に見つかれば、午後のオリヴェートとのお茶会には間に合う、とうい計算だった。
ルオラはこの三日間、いつもと同じ生活を送っていた。畑仕事と生ゴミの焼却。また、使用人の代わりに窓ふきや床磨きも手伝った。
ルオラが厨房で遅めの昼をとっていると、こそにいつものコガラが飛んできた。
「もしかして、俺を探してくれたのか? いつもこの時間は小屋にいるもんな」
コガラはすっかりルオラに慣れており、近づいて頭を人差し指で撫でさせてくれた。
ルオラは自分の昼食である食パンを小さくちぎり、コガラにあげた。
「ティアナ様、帰ってくるよね? 何か知らない?」
ルオラはコガラに話しかけた。コガラはパクパク食パンを頬張っている。
「って、分かるわけないよなぁ……」
ルオラは、窓の縁に肘を乗せて、頬杖をついた。
すると、コガラは食べ途中だというのに、突然飛んでいってしまった。
その瞬間、ドタドタと厨房の方へ走ってくる足音がした。
「た、大変よ!」
血相を変えたメイド長が、慌てた様子でルオラに叫んだ。
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