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実家に帰って、一週間がすぎたころ。
「ねえねえ、いつまでこっちにいるの? 向こうに帰らなくていいの?」
何も知らない真紀が、口の中いっぱいにスナックをほおばりながらたずねてきた。わたしもこたつの上に置かれた缶ビールを手に取り一口飲む。
「うん、そのうちね。休みが終わったら、ちゃんと帰るよ」
心配をかけないようにうそをついた。
「お母さんだって心配しているんだよ。何も言わないけど、お父さんだって」
「もう、しつこいなあ。いいでしょう、人のことは? そういうアンタだって、勉強の方は大丈夫なの?
お姉ちゃんが教えてあげようか?」
真紀がしつこく言ってきたので、弱点を突いた。そうしたら、真紀は怒って立ち上がった。
「ふんだ。もう知らない! お姉のバカちん!!」
捨て台詞を残し、二階の部屋へ上がって行く。
妹がいなくなったら、テレビのついていないリビングはシンとしていて、やけに静かに思えた。
はあ、ちょっと油断していたな。
いけない。家に閉じこもって酒を飲んでばかりいたら、家族に変だと思われてしまう。もうやめなければ。
そうだ、どこかに行こう。外へ出れば、ふさいだ気分を変えることができるかもしれないから。
わたしは彼を忘れるために行動を起こした。
その日から、毎日化粧をして出かけることにした。
早起きをし、シャワーを浴びて身支度を整える。化粧をいつもより濃い目にして、派手な女を演出する。
化粧台の鏡の中には、微笑みをたたえた知らない女がいた。




