第八話 殿、戦国自衛隊が来ました!
「殿、大変です!」
秀吉が今度は息を切らせて、額にびっしり汗をかきながら飛び込んできた。
「はいはい、何? 今度は何が落ちてきたの? 宇宙ステーション? それともガンダム?」
「いえ、自衛隊なんですが……なんか様子がおかしいんです!」
「自衛隊? 前に来たじゃん。みんな今、農政課で働いてくれてる。ガチで体鍛えてるし、組織行動ができるからめっちゃ重宝するよ。自衛隊、大歓迎よ」
「それが、違うんです! なんか妙に黒くて禍々しい装甲車を引き連れてて、隊長らしきオッサンがめちゃくちゃイキり散らしてるんですよ。『歴史を修正する』とか『神になる』とか叫んでて……」
「……あー、それ、映画化されたやつだ」
俺は眉間を揉みながら天井を仰いだ。なんか面倒くさい世界線が接続されてる。
「確かさ、人工磁場シールドかなんか作って富士山のふもとに巨大な要塞建てちゃうタイプの自衛隊でしょ?」
「ええっ!? なんで知ってるんですか殿!」
「平成中期の転生者が文庫本置いてったんだよ。で、その隊長の名前は?」
「ま、的場……とか名乗ってましたね。一佐だそうです」
「あー、的場一佐ね。完全に『1549』のほうじゃん。あいつ自分が信長になる気満々で来てるタイプだよ。一番めんどくさいやつ」
俺はため息をついて、脇に置いてあったパンシロンの箱を秀吉に突き出した。
「これ光秀に持ってって。『また本能寺どころじゃない案件来たから、今日は定時で帰っていいよ』って伝えて」
「光秀様、また胃に穴が空きますね……。で、殿、どうします? 相手は近代兵器で武装したガチの反乱軍ですよ? こっちの火縄銃じゃ歯が立ちません!」
「いや、放っとけば自滅するでしょ」
「えっ?」
「だってさ、あいつら『ロメオ隊』とかいう後発の救出部隊に追われてるはずじゃん。江口洋介みたいな顔した隊長がヘリで乗り込んでくるフェーズが絶対あるのよ」
「エグチヨウスケ……?」
「そう。だから俺らがわざわざ血を流して戦う必要ゼロ。燃料と弾薬を無駄遣いさせて、内ゲバで疲弊したところを保護するのが一番コスパいいんだよね」
秀吉はぽかんとした顔で俺を見つめている。
「とりあえず、その的場くんの要塞の周りに看板立てといて」
「看板、ですか?」
「うん。『本物の織田信長です。歴史改変ご苦労様です。当城では三食昼寝付き、社会保険完備で元自衛官の中途採用を行っております。なお、燃料切れによる投降は大手門にて二十四時間受付中』ってデカデカと書いといて」
「殿、それ一番プライドへし折られるやつです」
「大丈夫、一ヶ月もすればガソリン尽きて、カップ麺恋しさにトボトボ歩いて出てくるから。あ、あと迎撃用のチャフだけは用意しといてね。ヘリが飛んできたらキラキラさせて歓迎してやろうぜ」
キーラキラ、はいキーラキラ。
秀吉と蘭丸と三人でチャフダンスを陽気に踊っている姿を、柴田勝家が泣きそうな目で見つめていた。




