第六話 安土城の換金所はどこですか
「ワンピ考察班が戦争始めたって? 火縄銃持ち出した?」
「いえ、イングレスで」
「GPSないのに!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
「お館様、やつらの執念を舐めちゃいけません」
秀吉が、手書きの超精密な近江国陣取りマップをバッと広げた。
「スマホのGPSが死んでるんで、やつら『狼煙と歩測』でリアルタイムに緯度経度を人力測定(三角測量)してます。青陣営(レジスタンス:Dの意志=古代兵器説派)と、緑陣営(エンライテンド:ひとつなぎの大秘宝=宇宙空間説派)に分かれて、安土城下の神社仏閣を勝手に『ポータル』に指定してリンク貼りまくってます」
「そんな測量技術があるのかよ! 職業ちゃんと申告してねえ奴がいるじゃねえか! それやめさせて日本地図作らせろよ!」
「お館様、日本地図はめちゃくちゃ精密なのが全員のスマホにありまして……」
「あ、ああそうだっけ。16世紀だと思ってた。いや16世紀なんだけど。これで18世紀に伊能忠敬生まれてくるんだろ? あいつなにするんだろうな?」
大体ワンピの結末はどっちでもねえよ。
多分、ロジャーが言ってた場所にいったら女物のワンピースが一着置いてあって、ルフィーがそれ着て、
「なんじゃこりゃー!?」
で、チャンチャンだろ。
世界のすべては女性用ワンピースなんだよ。
「お館様、新しい転生者なんですが……」
「うん、なんだった?」
「パチプロです」
「パチプロ? あの、朝から並んでタバコ吸いながらパチンコ打つ以外に社会的な生産性が一切ない、無職の最上位職の?」
「はい! 平成のCR機全盛期から令和のスマパチまで、期待値だけを追って20年間生き抜いてきた『釘読みと止め打ちのガチ勢(42歳・無職)』です!」
襖がガラリと開き、ドル箱柄のサンダルを履き、耳に耳栓を詰めた男が、虚無の目でペコペコしながら入ってきた。
「あ、どうも……織田さん? すいません、ここ換金所どこっすか? あとこの城の周り、非等価っすかね? ボーダー回らないなら打たずにハイエナに徹するんすけど……」
「鉄砲撃つわけでも、田んぼ耕すわけでも、小説書くわけでもない! ただ期待値のプラスの台に13時間ケツ貼り付けてハンドル固定してるだけの生き物じゃねえか!!」
光秀が震える手でパチプロの履歴書を見る。
「お、お館様……特技欄に『目押し』『止め打ちによる玉減り防止』『宵越し天井狙い』と書いてあります……。この時代のどの職種にも1ミリもコンバートできません……!」
でもなんかあるんじゃないか?
期待値ってことはあれだ。統計を信じて、試行ごとの結果に一喜一憂しない忍耐力──どんなリーチに煽られても微動だにせず、ただただドアノブを握り続けられる鋼のメンタル。
「ないな」
なかった。どう考えてもできるのは案山子くらいだ。
しかしカラクリ賭博ってのは何かありそうなんだけどな。そこに何か発想が隠れていそうだが。
取り敢えずパチプロは、『自分でなんとかしてるタイプの社会不適合者部屋』に入れておいた。




