第四話 安土城ハローワーク
なんで男子高校生ばっかなんだろうな。国会議事堂にトラック突っ込めば良いのに。あるいは大企業の役員会議してるとこ。鳶職の技術とかは重宝するよな。建築現場に転生トラック突っ込まねえかな。
俺が職業への敬意を最も最低な形で妄想していると、蘭丸が興奮して飛び込んできた。
「お館様、ついに偉人が転生してきました!」
「偉人!? ついに来た!? やったー! 偉人さんいらっしゃーい!」
ついに来たか! 野口英世か? 渋沢栄一か? 岩崎弥太郎か?
「秋山真之殿です!」
うっわー、すごいとこ来たな。なんだっけ? 海軍の人だっけ? 騎馬隊の人?
昭和部屋に司馬オタクいただろ? 『坂の上の雲』を十四回読み返したって奴。あいつ連れてきてくれ。予習しとく。
えーと、あ、騎馬隊は好古さんのほうなのね。
近代海軍か。ちょっと微妙かなー。近代って俺からいうと超未来だもんな。
大丈夫かな。動力オールですっつって怒らないかな?
「あ、どうも、織田信長です」
「秋山真之です。ここは……尾張?」
「あ、いえ滋賀県です。もう引っ越したあとで。あ、秋山さんだと滋賀県じゃなくて彦根藩ですかね? 廃藩置県って終わってました?」
「ああ、滋賀県で分かります。失礼しました。ということはこちらは安土城?」
「そうなんです、ほらあれ琵琶湖です。いやいや、お会いしたかったんですよ。『坂の上の雲』を十四回読んだ男の知り合いの織田信長です」
「坂の上の雲は私も読みました。あれ面白いですよね」
「ですよね! あれ最高ですよね!」
ん?
「……あれ? 読んだことあるんですか? 書かれたの死後……」
「はい、私の父が『坂の上の雲』のファンで、それで私の名前もこうなりました。兄は好古なんですよ、ははは」
ど、同姓同名なだけじゃねえかああああああああああ!
蘭丸! テメー、本当にBLのウケにしてやろうか! 信蘭さすぞコラ!
蘭丸は手で顔を覆いながら天を仰いだ。
そこに光秀が割り込んできた。
「次の方、ご案内してもよろしいでしょうか。『近代の偉人』を自称する方が一名、タイムスリップ枠で面談をご希望です」
自称ねえ。偉人は普通自分のことを偉人って言わないけど。
ま、連れてきてよ。
「えーと、『元・大手銀行の窓口係で、自称・令和の渋沢栄一を目指していた男』とありまして……」
「目指してただけの一般人かよ」
ん? でも大手銀行のテラー?
これ使えるんじゃないの?
「為替とか手形分かる?」
「窓口ではシステム入力してました」
「融資は?」
「担当外です」
「銀行作れる?」
「無理です」
そりゃそうだよね。でもなんか便利そうな予感がする。楽市令で規制緩和してから貸付の業務自体は人が足りないんだよね。
だからこれ多分、実務の人材だわ。渋沢栄一を目指してなんでテラーにいたのかは分からんけど。ま、目指すのは自由だからね。
安土第一銀行を作るのはまだまだ先のことになりそうである。
というか、共通の通貨が先なんだけどさ。始皇帝あたり来ねえかな。あれ? 実務は李斯だっけ?
じゃなくてなんで紀元前に人材求めてるんだ俺は。
完全に脳味噌が混乱していた。




