プロローグ ②
『だから俺にとって夢はなにかって聞かれたら・・・・・
それは 』
『 イラストレーターです 』
「イラストれー・・・って、つまり絵の事か?」
『漫画っぽいキャラクターみたいな絵を、学生時代の頃に暇を見つけては絵を描いていました』
『でもイラストレーターで、絵を描いていくだけで生活は出来ないんじゃないか。ましては、プロのイラストレーターになる事さえ難しい。出来るはずがないと諦めていました。なので俺の夢で思いつくことは、絵を描くことだったと』
「龍人。今の会社がつらくてきついと思うのなら、いっその事会社を辞めてしまうことを考えてみたらどうだ?」
「前に龍人が話してたじゃないか。生活費と休みの日に飲み屋で使う金だけで、他に金を使う暇も気力もないって、言ってただろう。それはつまり使わない金がある、金が貯まっているって事だろう」
「しばらく生活できるだけの金が貯まっているなら、今の仕事をきっぱり離れるっていうのも手だと思う」
「・・・ほらぁやっぱり、金が貯まってるんじゃないか・・・・・何、贅沢しなければ2・3年生活していけるだけの金が貯まってるて。それなら・・・」
「一回仕事とから離れてみて。働くことから離れてみて、何か月間か学生の頃に興味があったイラストを描いて過ごすというのはどうかな。今だったらイラストを描いてネットに挙げる事ができるんだろう。どうせならイラストだけで暮らせるような、プロを目指してみたらどうだ?」
「・・・龍人が確かにそ言うのもわかるよ、イラストで生活していくのは相当に難しいことなんだと思う。失礼なこと言うけど、イラスト・・れーーたになれる・なれないかはどっちでもいいと思っている」
「大事なのは龍人が、この仕事に離れてイラストみたいな熱中できるものと向き合うこと、向き合う時間を作る事だ。今までの仕事業務や人間関係から離れる事、離れて自分が熱中できる時間を持つことだ。それはイラストにこだわれとは言わない。今までやれなかった事、興味があった事、挑戦してみたかった事、今だからこそ出来る事を思いつく限りやってみたらどうかな?」
「龍人はまだ30だろう、若い。まだまだ若い」
「30なら1年、いや2・3年やりたい事に時間を使っても良いと思う。イラストに取り組んでプロになれなかったとしても、すぐに仕事は見つかる。今じゃ60歳過ぎてもフルタイムでは働いてる人もざらにいる。龍人が30後半、40になってもまだ色々な職業からすぐに仕事が決まる。だから金に余裕がある期間は、やりたい事。自分磨きに時間を使ってみた方が良いと思う」
「龍人は独身で、付き合っている彼女もいないって言ってたから実感がないかもしれないけどな。自分磨きに使えるような、自分の時間を自由に使えるときなんて、今の時だけなんだぞ。
結婚して家族を持ったり、病気にかかったりケガをして傷を負うことあるかもしれない。年を取っていけば身体のあっちこっちが痛んだり、支障をきたす様になったりする。金銭面や環境でいろいろな問題が起こってくるかもしれない」
「そうなれば、いろいろな責任やしがらみ・人間関係の問題・仕事や立場での問題・家族間の問題・身体的リスクで、自分の考えで自由に動けなくなる。自分のやりたい事を追求できなくなる。
だから大きく動けるのは、自分のやりたい事をとことん自由に使えるのは・・・今だけだ。
やりたい事をやれるのはやりきれるのは、今だけなんだと思っていた方が良い」
「まずは熱中できることに取り組んでみたらどうだ。それはイラストもそうだし、興味がある事・今やりたい事・今だからこそ出来る事。とにかく思いつくだけやってみろ、挑戦して見ろ。
いっっっぱい失敗しろ・恥をかけ・思いっきり悩め。それが経験になる、貴重な経験にな。今自分がどこまでできるかを知れ、それでも自分はもっとできると信じて手を伸ばしてみろ」
「あがけよ・もがけよ、もう自分はここまでだと思って悟るな。もっと・・・
じたばたしろよ・悪あがきしろよ。自分のやりたい事、情熱のマグマが枯れるまで取り組んで見ろよ。自分がもう駄目だと思うまで挑戦して見ろ」
「龍人、やりたいことをやれるだけやってみろよ」
と俺は、思い返しながら夢中で語り続ける。
『つてさ、俺言われて。涙が出た、涙が出ちゃいました』
いつしか飲んでいる酒の量も増え、酔いが回って来ている。
『だからさ翔、俺は決めたんだよ。今の会社を辞めようと決めた。しばらくはイラストを本格的に始めて見ようと思っているんだ。仕事にできるかは考えないで、今までの事を忘れるくらいイラストに熱中して取り組んで見ようと思っている。自分の気が済むまでな』
『そうか、もう覚悟を決めてるんだな。そう言えば龍人は、大学の時も暇があれば絵を描いてたよな。それで会社の方には辞めるって伝えてあるのか?』
『いいや、まだ話していない。まずは翔に、俺の今まで溜まり溜まった気持ちを吐き出して、覚悟を決めてから会社の方に辞めることを伝えようと思っていたんだ。でもこれで、覚悟は決まった。来週中には俺、辞表を出すよ』
『・・・龍人が自分で決めた事なら、俺は応援するさ。金銭的に困ってきたら、少しくらいなら融通してやるから。龍人が気の済むまで、やってみたら良いさ』
『ありがとうな翔。おれ、挑戦して見るよ』
「と言うようなことを、大学の友達と話し合いまして。自分自身の整理も出来、心の決心も決まりました。明日、社長に会って辞表を出そうと思っています」
俺は松岡さんから貰った、缶コーヒーを握りしめながら伝える。
「・・そうか、決心がついたんだな。それなら、龍人がさぁ。会社を辞めても、困ってることが出てきたら。遠慮なんかしないで、俺に連絡よこせよ。メールでも・電話でも何でも良いから。そうしたら、必ず返事を返すからさ。何かあったら連絡をしろ、絶対だぞ」
「はい、何かあったら連絡します。松岡さん今まで、
ありがとうございました。 」
俺は今までお世話になって来たことを考えながら頭を下げ、顔を上げると。松岡さんが笑顔で。
「龍人。イラストでもなんでも・・・
やりたいことやれるだけやってみろ!! 」
俺も笑顔で、大きな声で答える。
「はい、思いきって・・・ 挑戦してきます!! 」
俺は翌日、社長室の前に立っていた。片手には辞表を持ち、大きく深呼吸をする。そして扉をたたき、「すいません、失礼します」と言ってから。扉を開け社長室の中に入る。
社長室の中に入ったのだが、白い・・・・・・・まっしろい。って言うか眩しい。
そもそも・・・建物がない、地面がない。
「うっわぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は真っ逆さまに落ちていった。




