プロローグ
心は晴れやかだった。
こころだけは・・・。
カタカタカタ
もう深夜近くになっているオフィスビルで、
やっと、終わりが見えてきた仕事に向けてラストスパートをかけていた。
周りに見える範囲では人がいなく、
俺一人になっている。
カタカタカタカタ
目にクマができ、正直疲れが出てきているが、
もう少しと思って仕事に取り組む。
あともう少しで終わる。
もう少しで仕事を終わらせるんだ。
この仕事自体を。
カタカタカタ
「龍人、お前まだ残っていたのかよ。また、無理をしているんじゃないか?」
振り返ると、ほらよと缶コーヒーを渡してくる。それを受け取りながら声を返す。
「松岡さん、いつも有難うございます。この前なんかとくに・・・」
この人は松岡 大樹さん。俺とは違うチームの先輩だが、何年か前に合同でチームを組んで仕事をしたときに、なにかと目をかけてくれた人だ。
仕事には厳しく注意や言葉も投げかけられたが、この会社に入って初めて優しく接してくれた。俺に気遣いをしてくれる、唯一の先輩で俺は松岡さんを心から尊敬している。
チームが別れて仕事では接点がなくなったが、会社内ですれ違ったときとや時々励ましに来てくれたり。
今みたいに差し入れを持ってきてくれたりと、今でも俺に気遣いをしてくれる感謝しても、したりない人と想っている。
「龍人。この前話した時より・・顔色良くなってるじゃないか。その様子じゃ・・・」
「えぇ…踏ん切りがつきました。聞いてくださいよ松岡さん。この前の久しぶりの休みの日に大学の時の友達と会って、居酒屋で今の会社の事とかいろいろ話したんですよ。」
『龍人、いゃやぁあ久しぶりだな。驚いたよ居酒屋で飲まないかって。お前に誘われるのは、そもそも龍人と会うのは。何か月ぶりいや、一年以上前のことになるんじゃないか?それで、どうしたんだよ・・・急に俺を呼び出して?』
こいつは大学で友達になった日野 翔。大学を卒業してからもしばらくは何か月おきに会っていたが、それが一年に一回、一年以上会わない感じにになって来ている。
『聞いてくれるか翔。俺さ今の会社辞めようかと考えているんだよ』
『龍人は確か・・・ゲーム会社で働いているんだったか?』
『あぁ、中堅だけどな。それよりうちの会社ブラックの・・・・・
ブラック!ブラック会社なんだよ!』
『圧がすごいなぁぁ』
『休みは二週間に一回が普通、繫忙時期は三週間に一回。一か月に一回しか休みないんだぞ。それに残業は2・3時間は当たり前、繫忙期は3・4時間以上。それどころか泊りがけでやったこともある。』
『今でもあるところにはあるんだな、ブラック会社』
『ある先輩と違う先輩では、指示が全然違うだ。こっちの指示でやるとあっちの先輩が怒る。あっちの指示でやると、こっちの先輩が怒るんだよ。それに言い方がきつい。なになにやれ、これやってないのか、まだ出来ていないのかって、なんでも上から目線でオラオラなんだよ。』
『いるよな、どこにでもマウント取りに来るような人』
『しかも、自分で考えて行動も出来ないのかって言うから。指示される前に自分なりに考えて動けば、なに勝手に一人で動いてんだって怒鳴りつける。理不尽なことばかり言ってすぐ怒ったり怒鳴りつける。俺の事は周りに、あいつはこれもやっていない、あれも出来ないって言いあったりしている。』
『会社の同僚は自分の事かげで、何言ってるか分かったもんじゃないからな』
『それに何より、2・3週間の一回の休みになる日。休みの前日、仕事が終わったらほぼ強制的に飲みに誘われる。二次会三次会も強制的で、解放されるときには朝の3時・4時・5時。終電は終わってるからビジネスホテルに泊まったり、始発まで待って家に帰って寝たりするんだけど、寝て起きれば午後すぎたりすることがよくあるんだよ。そうなると、あと数時間もすれば明日の仕事のために眠らなきゃいけない時間。そう考えると気が休まらない、休日だって気がしないんだ。貴重な休みの日だっていうのに、その休みの前日にほとんど強制的に飲みに誘われて、出なきゃいけないんだよ。
それがストレスで‥‥ストレスで‥‥』
『それが長い月日続けば・・・精神的に来るな』
『だから最近までは、しばらく精神的にも肉体的にもボロボロだったんだ。
だけど・・・そんな時に』
『そんな時に・・・どうしたんだよ』
『会社で俺に唯一、気遣ってくれる頼りになる先輩がいるんだ。俺がボロボロになっている時に、それに気が付いた頼りになる先輩が声を掛けてくれたんだ。』
「龍人、大丈夫か?目のクマも凄いし顔色が青白いぞ。ちゃんと食べてるか?」
「なんか悩みがあるなら、俺に話せるのであれば話してくれ真剣に聞くからさ」
『前から時々、その先輩に俺の我慢してる悩みを相談することはあったんだよ。でもその時はとくに精神的にまいってたから正直泣きそうになった。俺は先輩に、最近仕事が厳しくてつらくて辛くてしょうがないんです。って伝えたんだ。』
「そぉおぉか、・・・それほど思い悩んでるんなら。」
「龍人。この会社の事ではなく、お前がやってみたいこと。
夢とかはないのか?」
『それで俺は、前から興味を持っていることはあります。学生の頃から興味を持っていた事はあったんですが、どうせなれるはずがない・仕事にできはずがないって諦めてたんです。でも・・・時々ふっと思い出す時があるんです。だから俺にとって夢はなにかって聞かれたら・・・・・・
それは 』




