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13.疑惑の深化と化学の匂い

ヴォルフ博士は挫けなかった。彼は、ララの献身的な看病のふりをして、修道院の薬草園、そして調合が行われるとされる地下室に入り込んだ。

薬草園は完璧に整備されており、一般的な治療に用いられるハーブしかなかった。しかし、地下室の一角で、ヴォルフは奇妙な感覚を覚えた。

「この匂いは…ただの薬草ではない。これは、何らかの化学的な処理が行われた痕跡だ。」

彼は、微量に残された残留物を秘密裏に採取し、分析にかけた。結果は驚くべきものだった。採取した物質には、強力な神経毒性を持つ植物由来のアルカロイドが、当時の抽出技術では考えられないほどの高純度で検出されたのだ。それは、致死量をはるかに下回る微量ではあったが、長期間にわたって摂取した場合、脳と神経系に不可逆的な影響を及ぼす可能性を示唆していた。

「まさか。彼女は、薬草を装って、毒を盛っているのか?」

ヴォルフの合理的な頭脳は、恐ろしい可能性に直面した。そして、彼は、病の新たな症状と、この毒物の性質が恐ろしく一致していることに気づいた。

集団的な幻覚症状。奇妙な衰弱。これらは、単なる感染症ではなく、慢性的で意図的な汚染の結果ではないのか。さらに、ヴォルフはチュディ医師が残した手記の断片(アンナ・ゲルディの裁判記録と、彼女が使用したとされる薬草のメモ)を入手していた。そのメモには、ララが現在使用しているのと酷似した植物の名称が記されていた。

「ゲルディの娘…彼女は、母が魔女とされた知識を使って、病を治すふりをして、民衆を呪っているのかもしれない。」

しかし、この疑惑は、証拠としてはあまりにも脆弱で、公にすれば、自分自身が「聖女を誹謗した者」として、チュディ医師と同じ運命を辿ることは明白だった。グラールスは、もはや理性ではなく、ララという名の絶対的な信仰によって支配されていた。

負傷で動けないララは、自らの計画の最終段階が、外部の理性的な探求者によって崩壊させられようとしていることを知っていた。彼女の心は、焦燥ではなく、むしろ冷たい歓喜に満ちていた。

「もう遅い、ヴォルフ博士。あなた方の理性が真実に到達する頃には、この民衆は、私を神として崇めているでしょう。そして、その信仰の深さこそが、彼らが自らに下す、最も残酷な呪いとなるのです。」

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