14.聖王祭の栄光
グラールス大聖堂の前の広場は、歴史上かつてない熱狂に包まれていた。法皇の来訪、そして聖女ララの功績を讃える聖王祭。この閉鎖的な州にとって、それは神の祝福そのものと受け止められていた。民衆は、長引く病の不安を打ち消すかのように歓喜し、ララがもたらした「救済」を心から信じて疑わなかった。
ヴォルフ博士は、広場の一角で冷たい汗をかきながら立っていた。彼の懐には、ララの秘薬から検出された神経毒の分析結果が隠されている。その小さな紙片こそが、この聖なる祭りの裏側にある、恐るべき真実の証明であった。しかし、群衆の熱狂は、彼の理性の声が届く余地など微塵も残していなかった。彼は、チュディ医師の運命が、まさにこの狂信的な信仰によって決定づけられたことを知っていた。
祭壇の上、豪華な装飾と聖歌隊の厳かな声が響く中、法皇が玉座に着いた。続いて、白い法衣をまとったララが、聖職者たちに付き添われながら姿を現した。彼女はまだ完治しておらず、わずかに足元がおぼつかない。その姿は、無理を押して民衆のために出席した「真の殉教者」として、一層、人々の涙を誘った。
法皇は立ち上がり、ララの前に進み出た。彼は、彼女の功績、慈愛、そして信仰の深さを称賛する言葉を述べた。
そして、運命の瞬間が訪れた。
法皇は、聖なる油をララの額に塗り、厳かに宣言した。
「神の御名において、我はここに、汝、ララ・ゲルディを、その献身と奇跡の功績により、聖なる祝福を与える。汝こそ、この時代の真の聖女である。」
広場は、割れんばかりの歓声に包まれた。民衆はひざまずき、涙を流し、「聖女ララ!」と叫んだ。彼らの希望は、今、頂点に達した。彼らの信仰は、神の代理人によって、絶対的な真実として保証されたのだ。




