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11.異変の兆候と疑惑の影

ヨハン・ヤコブ・チュディ医師が狂気に駆られた民衆によって断罪されてから、グラールス州は奇妙な静寂に包まれていた。黒幕が処刑されたことで、人々は「聖女ララ」への信仰をさらに深めたが、その裏側で、ララが国中に播いた「不治の病」の種は、予測を超えた形で成長を始めていた。

ララは腹部の深い傷を負い、修道院の奥で療養を強いられていた。彼女が動けない間に、民衆の間で新たな異変が報告され始めた。初期の病から回復したはずの者が、今度は説明のつかない奇妙な衰弱と集団的な幻覚症状に襲われ始めたのだ。

「聖女様の薬が効かない。また、悪魔が戻ってきたのか?」

民衆の間に、再び不安の波が広がり始めた。そして、この混乱は、外部の静かな「理性」の介入を招くことになった。

チュディ医師の処刑は、啓蒙思想が広がりつつあった当時のヨーロッパにおいて、時代錯誤で野蛮な事件として隣接州に報じられた。州当局は、この事件の背景にある「不治の病」と「魔女信仰の再燃」という異常事態を重く見て、調査団をグラールスに派遣した。

調査団のリーダーは、バーゼル大学出身の若き医師、アンドレアス・ヴォルフ博士だった。彼は合理主義者であり、迷信を科学で打破することを自らの使命としていた。ヴォルフ博士にとって、グラールスで起こっていることは、「前時代の無知と狂信の残滓」に他ならなかった。

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