新しい関係を SIDE:レクシオン
セレイユが、やっと目を覚ました。
ずっと気が気じゃなかった。
身体の冷たさが、恐ろしかった。
いつ呼吸が止まるのかと考えると、私の心臓の鼓動も止まりそうだった。
眠ることも、食事をすることも、仕事をすることもできずに、ずっとセレイユのそばについていた。
屋敷の者はみな、気を遣って好きなようにさせてくれた。
目を覚ましてくれた嬉しさに、また涙が流れた。
思わず勢いに任せて抱きしめてしまったが、拒絶することなく抱きしめ返してくれた。
その温もりに、心底ホッとした。
「セレイユ……セレイユ……」
言葉が出ない私に、セレイユが背を撫でてくれた。
そんな些細なことが、とても嬉しかった。
セレイユを失うと思うと、世界が壊れる気がした。
それほど私にとって、セレイユは大事な存在になっていた。
もう、なりふり構っていられない。
今繋ぎ止めておかないと、きっとまたどこかへ行ってしまうかもしれない。
それは嫌だ。
どうか、2度と置いていかないでくれ。
「セレイユ……セレイユ……好きだ。セレイユが好きなんだ。愛しているんだ。どうか、置いていかないでくれ。頼むから。失いたくないんだ。」
「うへぇ!?」
ありきたりな言葉しか言えない。
今までこんな気持ちになったことがないから、なんて言えば正解なのかわからない。
正解がわからないから、思いの丈をぶつける。
否定やれるのが、拒絶されるのが怖い。
でもそれ以上に、いなくなるのがもっと怖い。
人を愛することがこれほど苦しいことなんて、思いもしなかった。
自分にこんな重たい感情があるなんて、想像もしていなかった。
離れることなんてもう、できない。
拒絶されても、諦められないだろう。
逃げられそうになったら、捕まえて鎖で繋いでしまうかもしれない。
私の愛は、ドロドロしてて醜い。
全然綺麗な愛じゃないけど、確かに愛しているんだ。
「愛している……愛しているんだ。私の幸せを願うなら、そばにいてくれ。セレイユがそばにいてくれないと、幸せになれない。私のことは愛さなくてもいい。嫌ってくれてもいいんだ。ただ、それでも離れることだけは、やめてくれ。」
「お、おう……」
醜い気持ちを曝け出すには、勇気がいる。
でも、どれほどの無様でも構わない。
どれほど醜くても構わない。
セレイユさえ、そばにいてくれるなら。
私はこれ以上何も望まない。
私の唯一無二の人を、奪わないでくれ。
セレイユ自身でさえ、私から奪うのは許さない。
あぁ……本当に、いつの間にこんなに育っていたんだろう?
気づいた時にはすでに遅くて。
本当の願いに気づいたのが、セレイユを失いそうになってからなんて。
あぁ……なんて私は、愚かだったのだろうか?
私が愚かだったから……セレイユを神に取り上げられそうになったのだろうか?
だが、もう間違えない。
セレイユは私の全てだ。
国よりも、身内よりも、私自身よりも、何よりも大切な人。
「えー……と、とりあえず、落ち着きましょう!」
「私は至極落ち着いている。落ち着いているからこそ、私の気持ちを伝えたんだ。もしかして、伝わらなかった?どうすれば伝わる?」
「つ、伝わってます!伝わってますから!!」
顔を上げて至近距離からセレイユを見ると、顔どころか耳まで真っ赤にして、目が潤んでいた。
可愛い……
食べてしまいたい……
背中をパシパシ叩いてくる手も、すごく可愛い。
これで全力なら、どれだけひ弱なのか。
こんなにか弱いなら、屋敷から外に出せない。
ずっと屋敷で囲っておかないと。
「セレイユ。始まりは君の力だったかもしれない。だけど、今の私は君自身を愛している。どうかもう一度、今度は新しい関係を始めたい。駄目だろうか?」
どうか了承してほしいとの願いを込めて、セレイユの目を見つめた。




