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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第23話・お前のせいやで

 次の瞬間、セイバーは俺のほうへ一直線に駆け出した。


 周りは俺に加勢しようと動き出すが、セイバーはそれをものともせず、ひらりひらりと攻撃を躱しながら、俺の元まであっという間に辿りついた。


「勇者、強くなったなぁ」


 剣と剣が、交じり合う。


 相変わらず片腕だけで、余裕に満ちた表情を見せつけながら戦っている。

 力の差があるのは歴然だった。


 ――コイツが何者なのかも、目的もわからない……だが、確実に〈プレイヤー〉ではないことは確かだ!


 剣の防御も不確実になってきた。セイバーに押されつづけ、少しずつHPは削られていく。


「でも、勝てへん。勇者は、絶対に魔王に勝てへんよ」


 セイバーはこの攻防に飽きたか、さっきよりも攻撃の手が早まる。


「絶対に勝てへん。勝てさせへん。何度だって、わからせてやるわ」


 セイバーが一度腕を引いた――予測されるべき次の動きは、突きの型だ。


 ――だったら、そのまま弾き返してやる。


 だが、俺の読みよりも早く、別の人物は動いていた。


「痛いのは……一瞬よ」


 セイバーの背後に回り込んでいたのは、グリムリーパーだ。グリムリーパーの鎌は、すでに奴の首を捉えていた。

 セイバーはニヤリと笑うと、背で剣を左手に持ち替え、そのままグリムリーパーの腹に剣を突き刺した。


 躊躇のない、正確な動き。


 ケンは左手を撃ち抜き、セイバーの力が緩んだところで、ヨイはグリムリーパーを救出し、ツリィの元へ。

 すかさず、リアムが間に入り、セイバーに右拳を振りかざす。


「……ほう」


 セイバーは右手で防御、すぐに回復を果たした左手で再び剣を掴んだ。


 だが、だからといって俺らは止まらない。


 リアムはすぐに手を引き、後ろへと下がった。

 続けて攻撃をしないリアムに、セイバーは自身の読みを外したか、目を丸くしていた。


「〈ザライゲイン〉!」


 直後、マキの雷撃が、セイバーに向かって落ちていく。


「注意を引きつけただけか!」


 セイバーは瞬時に理解し、落ちるよりも早く、回避行動を開始していた。


「せやけど、こんくらいなら避けれ――」


 ――ダン。


 銃声とともに、セイバーは膝から崩れ落ちる。


 ――ホースだ。ホースが奴を逃すまいと、膝に銃弾を撃ったのだ。


 雷撃はセイバーに直撃し、情けない叫び声が上がった。

 HPはみるみる半分以下まで削られていく。


 ――この調子なら、押し切れる!


 俺は足を踏み込み、奴に向かって剣を振り上げる。


「……アンタらは、成長してるんやな」


 途中まで振り下ろしていた剣は、セイバーの右手で防がれてしまう。

 斬れない。まったく、刃が通らない。


「本当は、こんなん予定外なんやわ」


 静かな目。奴は左手に握り締めていた剣を持ち上げ、俺の首を狙った――経験上、首が弾けば即死だ。だが、防御しようにも握られた剣は動かせない! このまま、俺は……!


 思わず目を瞑った。しかし、何を思ったのか、セイバーは俺の首元に剣が触れた時点で手を止め、突然剣を引っ込めた。


「……ちゃう。勇者を相手にしてたら、わかることやん。効果的なんは、これやない」


 セイバーは高くジャンプする――奴は、一体何をする気だ?


「〈大乱刀(ダイラントウ)〉」


 一瞬、空気が止まった――否、凝(・)固(・)し(・)た(・)。息が詰まり、その瞬間だけ音が消えた気がした。

 それは、一秒も満たない短い瞬間(とき)だった。その後、一気に空気が張り裂け、刃と変わった風は、一斉に俺の仲間たちを――グリムリーパーも、ツリィも、ヨイも、ホースも……ひとり残らず倒してしまった。殺してしまった。


 あたりが、凄惨な色に染り上がった。

 どうして、どうしてこんなに残酷な――。


「……これ、レベル30を超えて身につけられる、〈剣士〉特有の〈SKILL〉らしいわ。まあ、俺が使ってるから、通常よりも強くなってはいると思うけどなぁ」


 ……な。なんでこんな。

 さっきまでみんなで戦っていたのに、それが、一瞬で……。


 パニックになりながらも、急いでメニュー画面を立ち上げる。〈SKILL〉から 〈ロード〉 を選択するが、何度もエラーが表示され、使えない。


「お前のせいやで」


 セイバーは言った。俺のせい? 違う、セイバー(お前)のせいに決まっているだろ。


「諦めてくれたら、こんなの見なくて済むんや。何度も何度も、見なくたって、繰り返さなくたって……」


 俺はもう、セイバーの言葉を無視することにした。


 ――〈ロード〉で戻れないなら、この剣で……。


 そう決意したとき、腰のあたりに何か当たった感覚があった――マキの杖だ。


 マキはまだ息をしていた、意識があるようだった。さっきの攻撃で背中を大きく切り開かれているが、それでも懸命に半身を起こし、セイバーを睨みつけた。


「やめ……るのです。こんな……ことしても、意味がない、のです。だって、勇者様は、また繰り……て……わたし……と……すごす……ために」


 息もたえだえで、後半はほとんど言葉が途切れていた……そんなことよりも、だ。


「無理して身体を起こさなくていい。俺が今からやり直すから。だから……!」


 俺は腕を回し、俺の肩にもたれかかるマキを支えた。


 マキは力なく微笑むと、「……〈ジホエンジャ〉」と呟いた。

 俺の周りを炎がまとう。それは、少しずつ俺のHPを削っていくが、不思議と熱さも痛みもなかった。


 一方、セイバーは舌打ちをし、「好きにせぇや。俺はもう知らん」と、どこかへと去っていく。もう、俺には興味がなくなったかのように。


 俺は意識を失うまで、去りゆく奴の背中を睨みつづけた。

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