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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第22話・ああ、もうちょっと時間があったらなぁ

 セイバー(相手の正体もわからない今はそう呼称する)との戦闘が始まった。


 まず動き出したのは、グリムリーパーだった。


「ホース、ケン(拳銃使い)は後衛から攻撃! ヨイとそこのリアム(筋肉)はわたしとともに前衛へ! ツリィとマキ(魔法使い)は常にサポート役に徹すること!」


 グリムリーパーは早口で的確に指示をし、前衛組はセイバーへの攻撃を図った。リアムの「なんかヘンな感じする〜」という呑気な声が聞こえながらも、みんなそのとおりの配置につき、相手の様子を伺った。


 ――あれ? そういや今の指示の中で、俺の名前ってあったっけ?


「何をボサっとしているの勇者(クズ)! あなたは最前線に立つに決まっているでしょう!」


 ボーッと突っ立っていた俺に対し、グリムリーパーは苛立ちを見せ、声を上げた。


 ヨイは舌打ちし、モーニングスターを俺に向かって投げるや、その鎖を使い俺を捕え、そのまま勢いよく最前線へと放り投げた。


「ちょっと乱暴過ぎるだろ!!」

「黙れ勇者(ゴミ)! グリムの言うとおり、お前が前に出て戦え!!」


 グリムリーパーが指揮系統のトップに君臨した今、すっかり俺の立場は下である。一応、俺は 〈勇者〉 なんだが……!


「――ま、いいか」


 投げられた勢いに乗るまま、俺はセイバーに向けて剣を振り下ろした。

 セイバーは余裕そうに軽々と自身の剣で攻撃を防ぐ。


 ――俺が両腕の力で攻撃したのに対して、コイツは右腕だけ……ったく、腹立つ野郎だ。


 セイバーは剣を振り上げ、俺を跳ね退けた。

 たぶん本気の力じゃない……だが、簡単に押しのけられてしまう。


 刹那、俺の両耳に何かが突っ切った。

 空気を切りながら突き進んだ『それ』は、セイバーの右肩と左横腹をかっさらってく。


「やった! 肩に当たった!」

「……傷は浅いな」


 後衛に立つホースとケンが、俺を振り払い奴の身体がガラ空きになった瞬間に、銃弾を撃ち込んでいた。


 セイバーは痛みに震えるわけでもなく、埃を落とすように手で肩を払う。傷口は、一瞬のうちに塞がってしまった。だが、微量ながらもダメージは受けている。


 俺はすかさず剣を構え直すが、その間も空けまいと、今度はグリムリーパーたちがセイバーへの攻撃を開始しようとしていた。


「――魔法!!」


 攻撃寸前、グリムリーパーはそう叫んだ。


 ツリィとマキは同時に、


「「〈フロージャ〉!!」」


 と、呪文を唱えた。


 セイバーは一瞬で氷漬けにされ、四分の一程度ではあるがダメージが入る。

 氷状態ならしばらく身動きが取れない。この一瞬で、攻撃を叩き込むのか。


「セイバー(彼)を解放しなさいっ!」


 グリムリーパーは斧を縦に振り切った。敵へのダメージと同時に、氷には一筋の割れ目が入る。


「Nice! 次はオラが……!!」

「――ダメだ。貴様は最後にやれ」


 リアムの前にヨイが割り込み、大きく身体を回転させ、遠心力を武器(鉄球)に込めて、セイバーへ投擲した。


 氷は砕け散り、セイバーの身体が剥き出しになったが、奴はまだ指一本と動いていない。まだ氷状態はつづいている――攻撃を叩き込める!


 ヨイは下がり、リアムの肩を叩いた。リアムは自分の番がまわってきたとすぐに理解し、右手に〈SKILL(力)〉をまとわせ、走り出した。

 リアムは自信に満ちた表情で、セイバーの胸に――その心臓の位置へと、拳を叩き込む!


「〈全・力・投・球(ゼンリョクトウキュウ)〉 !!」


 セイバーはその力を一身に受け、建物の壁に衝突した。土埃が舞い、壁はセイバーを中心にしてヒビが入っていた。

 セイバーはしばらく壁に背を預け座り込んでいる。俯いた彼は、一体どんな表情を浮かべてるのか――。


「ク……クク」


 緊迫状態の中、セイバーは突然肩を震わせた。


「ククク……ハハ、アハ……アハハハハ!!」


 警戒心が高まる俺らとは反対に、セイバーはこの状況を気に留めることもなく、大声を上げ、笑いはじめた。

 顔を上げ、大きな口を空けて……ひとしきり笑い切ると、膝を屈伸させ飛び跳ねながら、立ち上がった。


「初めてのはずやのに……意外とアンタら連携上手いやんか。無(・)意(・)識(・)下(・)の(・)絆(・)っちゅーわけや。ああ、時間の流れってすごいなぁ」


 俺は彼の言っていることがわからなかった。


 セイバーは顔を手で抑え、何かを堪えるように、


「ああ、もうちょっと時間があったらなぁ」


 と、呟いた。


 その瞬間(とき)の表情だけは、やけに冷静で、悲哀に満ちていた。


「ま、でもしゃーないやん」


 セイバーが顔を上げれば、もうそんな雰囲気は一切消え、ただニコニコと笑い、不気味な強さだけを滲ませていた。

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