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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第24話・本当に、こんなわたしといてくれて、ありがとう

「……前へ踏み出しはじめたようでよかったのです」


 そんなマキのうれしそうな、優しい声が前方から聞こえた。

 みんなは歩き出していて、俺だけがひとり立ち止まっているような状況だった。


 ――ああ。二周目の温泉宿を出たところ……だ。


 マキたちは、突然立ち止まったであろう俺に気づいたのか、こちらを向いた。みんな困惑した様子で俺を見ている。


「どうした、ユータ? おなか痛くなった?」

「いや、そういうわけじゃ……」


 リアムのそんな純粋な投げかけに答えようとして、俺は思い出す。


 ――そうだ! 早く〈ピエリス市〉へ行かないと!


 俺は〈ピエリス市〉へと向かい走り出した。

 突然の行動にマキたちは心配で声を上げるが、深くは追及せず、俺のあとを追いはじめていた。


 ――ここでモタモタしていれば、グリムリーパーが先回りしてツリィたちと会い、彼女らの首輪(魔法)を解除してしまう。


 俺は走りながら考える。


 ――いや、最悪それはいい……だが、一時的に意識を失ったツリィたちのタイミングで、グリムリーパーが実質ひとりの状態になったところを、セイバーが狙えば最悪な事態になる。


 セイバーは、この世界が繰り返していることを認知しているようだった。

 言葉の端々から、おそらく俺よりもこの世界を、過去(いままで)の出来事も知っているようだった。


 前回、セイバーは直接俺ではなく、俺の周りを攻撃して戦いの幕を下ろした。それが俺への一番の精神的攻撃になると理解してやったんだろう。


 セイバーは元々〈ピエリス市〉にいるようだし……そうならば、今回真っ先に狙うのは、グリムリーパーの可能性は十分ある。

 このままではグリムリーパーが、ツリィたちに何も伝えられずに、ツリィたちにとっても、望まない結末を迎えてしまう。


「お前ら! 走りながら説明するから、よく聞いてくれ!」


 俺は言って、〈ピエリス市〉に着くまでに、前回の経緯を説明した。




 ◇




 中央広場へは寄らずに、前回グリムリーパーたちがいたところへと一直線へ向かった。

 果たして、そこにはいた。ツリィたちはまだしっかり立っている。魔法は解除されていない――何か話している様子だ。


 魔法を解除される前に止めないと、と思い、俺は彼女らの元へ駆け寄ろうとして、ふと聞こえてきた言葉に足を止めた。


「――だからね、本当に、こんなわたしといてくれて、ありがとう」


 グリムリーパーは俺の気配に気づいたようで、振り向いた。目が合うと、グリムリーパーはそっと微笑んだ。


「そんな慌てなくてもいいじゃない。わたしは、ちゃんとこの子たちと向き合ったわ」


 俺は動揺が隠せなかった。


 この時点では、グリムリーパーはツリィたちを生かそうと魔法を解除していたはずだ。彼女たちの声に耳も傾けず、俺と戦おうとしていた。


 なのに、なぜ。


 魔王から何か聞いていた? ――だが、二周目の条件しか聞いていない状態のはずだが……。


 混乱している俺に、グリムリーパーは説明する。


「夢を見ていたの、あなたと二人で戦う夢……。そこでね、あなたは、もっともらしいことを言うから、なんだか感化されてしまって」


 隔離された空間(闇の中)で戦ったとき――あのときの記憶が残っていたのか。


 彼女は夢だと思っているようだが。


「夢が現実なら、きっとこれは二周目じゃない。そうよね?」


 グリムリーパーは言った。俺は頷いた。


 今度は、ツリィが前に出てきた。


「わたしたちは、もう戦う準備はできてるわ!」


 ヨイもホースも同じようだった。三人はグリムリーパーに合わせ横一列に並び、戦闘の構えを見せつけた。


「でも……もしかしたらここに……!」


 俺は周辺を見回す。俺ら以外の気配は感じない。誰もいる様子はないが、セイバーは気配を隠し、隙を見て倒そうとしているのかも……。


「安心しろユータ。邪魔するものは、ここには誰もいない」


 ケンは言って隣に立った。マキもリアムも、グリムリーパーたちと向かい合う。


「……勇者様。きっとその人は、手を引いたのだと思うのです。だって、『好きにしろ』って、言っていたのでしょう?」


 マキに言われて、そうかもしれないと納得する。


 前回と同じように仕かけてくることはない、この今こそが、〈シロケシキノチ(今回のシナリオ)〉 終着点なのかもしれない。


 ――結局、奴はなんだったのか、何がしたかったのかわからないままだが……。


 俺は気持ちを切り替え、魔女の子と向かい合う。

 剣を抜き、その切っ先を魔女の子(敵)へと向けた。


 ――物語を、締めくくろう。


「……その心臓(鍵)、取らせてもらうぞ。魔女の子さんよ」


 グリムリーパーも、ようやく待ち望んでいたかのように、笑顔を浮かべた。


「取れるものなら取ってみなさい。わたしたちは、全力で勇者(あなた)を殺すまでよ」


 そして、魔(・)女(・)の(・)子(・)た(・)ち(・)は口を揃えて言うのだ。


 ――『魔王様の仰せのままに』。

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