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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第25話・絶対に魔王に勝って、世界を元に戻すから

 魔女の子たちとの戦いは、俺たちの勝利で終わった。


 四人は俺らの目の前で、最後まで仲間を想い、仲間を愛し合うように倒れた。

 その顔は――四人とも、幸せそうな笑みを浮かべていた。


「……Look」


 倒れてから数秒して、グリムリーパーの身体は輝き出し、光の粒子の集合体は風に乗って、はらはらとどこかへ飛んで消えていった。


 最後に残ったのは、彼女がつけていた髪飾りと、心臓(鍵)だけだった。


「怖いのを想像していたのですが、まん丸の赤い玉なのですね……」


 俺は鍵を拾い上げた。手のひらに収まるくらいの小さな玉だった。


 ――この鍵の話が嘘だったら、また戻って、どうにかして魔王を殴りつけようと思っていたが……本当の話だったみたいだな。


 鍵は、まだ暗い顔をした冴えない男を映していた。


「……オ、オラ、これでよかったと思う!」


 突然、リアムはそう言った。


「Cause,They Look happy……ユータは、悪い奴じゃない!」


 たどたどしくも、リアムはそう言ってくれた。


「僕も同意だ。仮にこれが罪に問われるなら、僕らも同罪さ。どこまでもともに罪を負ってやる」


 相変わらず、頼もしいことを言ってくれるケン。


 少し、胸のつっかえは取れた気がした。


 マキは、眠るツリィたちに〈ヒール〉をかけている。生き返ることはないけれど、せめて傷だけは綺麗になってほしいからだそうだ。


「……ねぇ、勇者様」


 そんな中、マキは言う。


「勇者様は……どう思いましたか。魔女の子のために、戦い抜いた〈プレイヤー(彼女)〉たちを……」


 ツリィたちの傷が消えたところで、マキはその手を止め、振り向いた。

 その丸い瞳が、俺の姿をしっかりと捉えている。


「……俺は、それもひとつの選択だと思う。否定はしないし、尊重する。でも、だからって受け入れられない」

「そう……ですよね。ごめんなさいなのです! 一番辛いのは、勇者様のはずなのに」


 マキは立ち上がり、ニッコリと笑って見せた。その顔には、目を擦った赤い痕があった。


 ――俺の背中を押しつづけてくれるマキだけど……マキだって、辛いんだよな。


 思ったが、口には出さない。


「絶対に魔王に勝って、世界を元に戻すから」


 代わりに、俺はそう言った。

 今も眠りつづける、ツリィたちに向けて。


「ユータ、鍵はGotしたけど、これからどこに行けばいいんだ?」


 リアムに言われ、気づく。確かに、手に入れたはいいが、次への道がわからない。


 魔王城へはどうやって行けばいいのだろう。


「僕も魔王城への行き方はわからない。なんせ一方通行だったからな……ん?」


 ケンは話している途中、何かに気づいたようで銃に手をかけた。

 俺らは一斉にケンの視線の先へと注意を向ける。そこには、ひとりの人影がこちらへ歩いてきていた。


 ――セーラー服の少女だ。


 このゲーム世界でセーラー服とは……その雰囲気のミスマッチさに、不安と恐ろしさを感じつつ、身構える。


 少女の顔がはっきりとするくらい近づいたころに、少女は乾いた拍手を俺らに送った。


 ある程度の近くに来て、立ち止まる。


 眉ひとつ動かさない、その無表情さを異質に思う。だが、何よりも気になったのは、その左眼だった。


 セイバーと同じように、片目だけが赤く光っている。


「おめでとうございます。あなたがここまで来たのは……十二回目? くらいですね」


 この語調から、回数は不確かなようだが、確かなのは、少女もまた過去(きおく)を持っているということだった。


「すみません。本来ならウノが鍵の受取人をするはずでしたが……なんだかへそを曲げていまして。代わりにわたくしが迎えに上がりました」

「……ウノ? それよりも、お前は誰なんだ」

「あら失礼。申し遅れました。わたくしはサノ。魔王様の側近その2です」


 魔王、と聞いて、この場の空気は張り詰める。


「ちなみに、ウノは魔王様の側近その1です。もうすでに顔を合わせていると思いますよ。ほら、あの関西弁の男性です」


 ――やっぱり、〈プレイヤー〉じゃなかったか。


 でも、ウノ(アイツ)は『セイバー』と名乗っていたが……。


「あ、そうそう。セイバー様ご本人は、〈ユウカクガイ〉で破産しているだけですので、ご心配なさらず」

「……は、破産?」

「とにかく、姿形をお借りしただけです。セイバー様はご無事です」


 それは別の意味で心配になるが……つまり、セイバー自身は〈プレイヤー〉で、今もゲーム世界で過ごしているってことか。


 ウノは、実際にいるセイバー(プレイヤー)の姿を借り、〈プレイヤー〉のフリをして俺に近づいていた。本来は鍵の受取人だった……と言っていたし、俺らが鍵をキチンと入手するか、見張り役をしていたのだろう。


「ウノが余計なことをいたしました。本来なら、あなた方に手出しをすることは、予定にないのですが……あの人、少々感情的になることがあるのです」


 サノは機械的に淡々と話を続けている。

 サノこそ、今までで一番ゲームキャラクターらしかった。


「おっと、話が逸れました。改めまして、おめでとうございます、勇者。鍵を確認させていただきます」


 俺は言われるまま、サノに鍵を渡した。サノは鍵をしばらく見つめてから、「はい、本物ですね」と言って、それを口に入れて飲み込んだ。


「無味」


 驚いて、ただ口を開けている俺をよそに、サノは俺らに向けて右手を翳した。


「魔女の子すら倒させるための誘導もここまでしないとは、毎回面倒になっていきますね」


 サノは今口から出てしまった小言を、咳き込みしてごまかし、別れを告げるように、翳している右手とは反対の手を小さく振った。


「お待たせしました。そして、ようこそ魔王城へ」


 直後、俺らの足元に大きな穴が空いた。


「――え?」


 避ける暇も、状況の把握をする暇もない。


 短い悲鳴が上がる。


 当然、地面が消失した今、重力に従って、俺らは吸い込まれるように地下深くへと落ちていくしかなかった。


「よっと」


 サノも玄関をくぐるように穴へと落ち、その穴は塞がれた。


 一瞬だけ暗くなったが、今度は足元が赤く照らされはじめた。


 世界が開け、風景が広がる。


 落ちた先には、マグマに囲まれた孤城があった。


「――これが、魔王城……」


 説明されなくても、それが何かなんてひと目見てわかる。

 いよいよ、最終局面まで来たのだと実感する。


 普通ではありえない。俺らのラストステージは、ゲームの舞台裏だった。


 ――この中に魔王がいる。俺は、ここで決着をつけねばならない。


 きっと今、城の奥では魔王が笑っていることだろう。


 落ちていく中、三人と目を合わせる。

 みんな、覚悟は決まっているようだ。


 ここで負ければ、この世界は閉ざされる。

 勝たなければ、〈プレイヤー〉は救われない。


 ――勝って向き合わなければ、誰も報われない。


「ついに魔王(ラスボス)だ。気合入れてくぞ、お前ら!!」


 俺は鼓舞し、三人は力強く頷く。


「エイ、エイ、オー!」と、俺らは声を合わせ、叫んだ。

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