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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第20話・これが最後のゲームなんやで

 ――どうして、セイバーがここにいる? どうして、セイバーが魔女の子(グリムリーパー)を斬ったんだ?


 俺は状況が飲み込めないまま、とにかく剣を引き抜いた。


「やめてぇや〜。俺は勇者の仲間やで? みんなで、さっさと魔女の子(悪者)を倒そうや」


 セイバーは変わらない笑みを浮かべながらそう言った。


 しかし、今はその薄ら笑みが不気味としか思えない。

 目の前の〈プレイヤー〉からは、恐怖しか感じない。


「……なた」


 グリムリーパーはヨイに抱えられながら、セイバーを見据えた。


「……あなた、何も感じない。誰なの、何が目的なの?」


 セイバーはその質問に「んー?」と唸ってから言う。


「何も感じないときたんね……。グリムリーパー(アンタ)は、命があるかないかでしかわからんようやな」


 グリムリーパーは眉を顰める。俺らは、何も言えずこの状況についていくのに必死だ。


「『魔女の子の匂い』――みんなはそれを頼りに、相手が魔女の子であるかどうかを見分けているんやけど、それが判別できるのは、限られた人物だけなんや。どういう基準かわかるか?」


 セイバーは言いながら、俺へと視線を向けた。


 魔女の子の匂い――それを理解できたのは、今まで、ソラちゃんを除く〈プレイヤー〉以外の特定のゲームキャラクターだった。


「――答えはな、『女』や」

「……は?」


 思わずそう言ってしまった――女が理解できるって?


 ツリィとヨイだって、初めから魔女の子に気づけているわけじゃなかった。今だって、目の前のセイバー(コイツ)を理解しきれていない。

 出会ってきた女性キャラクターだけを振り返ってみても、当てはまらない人が多すぎる、否、当てはまる人が少数だ。


「いやいや、そんな困った顔せんといて。女って言っても、『その匂いに敏感』な人だけや」


 補足されても、疑念は晴れずに深まるだけだった。『その匂い』って……だから、なぜ魔女の子(その)の匂いに気づけるのかが気になるのだが……。


 ……いや、そもそも、だ。


「……セイバー、お前は一体誰なんだ? 〈プレイヤー〉……じゃないよな」


 魔女の子なんて、プレイヤーが知っているわけがない。俺だって、ケンの話を聞くまでは、そんなキャラクターが存在していることすら知らなかったんだ。


「俺はセイバー。この世界に閉じ込められた 〈プレイヤー〉や。〈JOB〉は〈剣士〉! かっこええやろ?」


 ヘラヘラと笑うそれに既視感を覚えながら、正体のしれない相手に不信感しかなかった。


「違うわ! あなたはセイバーなんかじゃない!」


 否定を挟んだのは、グリムリーパーだった。


「なんやねん。アンタはセイバーを知ってるんか?」

「……知らない。でも、セイバーではないことはわかるわ! だって、あなたは空っぽだもの!」


 グリムリーパーは自身の怪我なんて気にせず、さらに声を上げた。根拠はないが、強い確信を持っているようだ。


 コイツは一体誰なんだ? 魔王と関係する誰かなのだろうか。セイバーは――。


「はぁ〜。まあええやんか、そのセイバーって奴のことは」


 その投げやりな物言いが鼻につく。


 そんな俺らの不快感を無視(スルー)して、セイバーは自分の調子で話す。


「今大事なんは、勇(・)者(・)が(・)ど(・)ち(・)ら(・)を(・)選(・)択(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)や(・)」


 セイバーは肩にかけていた剣をグリムリーパーへと向ける。


「さあ勇者。同じ目的の〈プレイヤー(仲間)〉として、目の前の魔女の子、倒そうやさかい」

「……っ」

「――させるわけないでしょ!」


 ツリィが叫ぶと同時に、グリムリーパーを守るようにヨイとホースはツリィの前に出て、それぞれ武器を構えた。


 セイバーは目を細め、三人を睨んだ。


「……馬鹿な人間やな。わざわざ敵に回るなんて」


 次の瞬間、ドン、とセイバーの手が重く俺の肩にのしかかる。


「決まりや。あ(・)の(・)三(・)人(・)も(・)ま(・)と(・)め(・)て(・)始(・)末(・)す(・)る(・)」

「ッ! そんなことっ…!」

「黙れ。今は俺が話しとる」


 セイバーの冷たく鋭い声に、グリムリーパーは汗を浮かべながら押し黙った。


「さあ勇者、選(・)ぶ(・)ん(・)や(・)。俺ら〈プレイヤー〉のために、目の前の邪魔する敵を片づけるか、どうしようもない〈キャラクター(ゲームの住人)〉 のために、戦いから目を背けるか」


 その声ひとつだけなのに、首元に指を這わせられたような嫌悪感を抱いた。


 ……俺が、選ぶのは。


 声を出そうとすると、喉が締めつけられるような感覚になる。頭ではしようとしていても、身体はそれに対して拒否するような、そんな感覚。


 きっと今までの俺は、荷が重いこんな選択を迫られて、〈リセット〉をして繰り返していたのかもしれない。


 逃げていたんだ。


 それを忘れて、俺はまた同じ窮地に陥って。


「これが最後のゲームなんやで」


 セイバーの言葉にハッとして、改めて俺は崖っぷちに立たされているのだと認識する。


 選ばなければ、待つのは軟禁。

 選び間違えれば、待つのは死だ。


「……俺は」


 ――もうウジウジ悩んだりしない。


 俺はセイバーの手を振り払い、右手の剣を握り締め、セイバーの首元目がけて振り上げた。



「――俺は、魔(・)女(・)の(・)子(・)を(・)倒(・)し(・)て(・)、(・)お(・)前(・)も(・)倒(・)す(・)!(・)」



 セイバーの顔から笑みが引き、俺の剣が入るよりも早く、自身の剣を突き出した。


 その動きを目で追い切れないうちに、胸に激痛が走る。

 俺の手から剣は離れ、地面に落下し、悲しく金属音だけが響き渡った。

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