第17話・さあ、戦いましょう。勇者
セイバーに教えてもらった方角に走れば、果たして、そこにはいた。
すでに赤いフードを外している――ツリィ、ヨイ、ホース……そして、黒いスーツ姿のグリムリーパー。
「あら、こんな簡単に見つかってしまうとは思わなかったわ。あなたは市役所のほうへ行っているとばかり思っていたから」
「! それって……お前も、俺と同じ力を持ってるのか!? 時間を戻る力……!」
繰り返す力――てっきりそれは、俺しかないものかと思っていたけど。
前回とも違う行動をしているし……グリムリーパーは俺がセーブ地点に戻ろうとも、記憶の維持ができるのか。
「……同じ力? はて、それはまったくわからないわね」
しかし、グリムリーパーから返ってきた言葉はそれだった。
「そう。魔王様が奪われた力というのは、それのことだったのね。時間を戻す……繰り返すことのできる力」
グリムリーパーは力を持っていない? じゃあ、なぜ――。
「魔王様に教えられていたの。わたしがどこから来たか聞いたとき、『……俺たちはこの世界を冒険していて、最近まで東の国にいたんだ』なんて落ち着いたトーンで話していれば、すでに戻ってきている――二周目の勇者だって」
魔王から……!?
そうか、魔王なら、俺の知らない記憶まで知っている。繰り返せなくても、今まで起きてきたことから、俺の行動の予測がつくってわけか。
そういえばケンも言ってたな。グリムリーパーは魔王に一番気に入られていたと……。
コイツだけほかの魔女の子よりも多く情報を持っていても不自然じゃない。むしろ、魔王からしたらそうするだろう。
「でも、わたしはそれしか知らない。だから、わたしはすぐにこの子たちに会いに来た――あなたがこの子たちをどうするかまではわからないから」
グリムリーパーはそう言い終わった直後、グラりとツリィたちの身体が揺れ、それぞれ三人はグリムリーパーのほうへと倒れた。
よく見ればそこにもうその首には、〈制約の首輪〉はなかった。
――……ッ、遅かったか……!
グリムリーパーは寄りかかってきた三人を抱えて、そっと地面へと寝かせる。
「……どうして。どうして、ツリィたちを!」
「戦いの結果は見えている。だから、この子たちにはなるべく苦しんでほしくないからね」
――前とまったく同じセリフ。
それだけ、グリムリーパー自身の気持ちも変わらないってことか。
グリムリーパーは大きな鎌をその手に召喚し、俺を見据える。
「さあ、戦いましょう。勇者――ここは正々堂々、二人きりで」
グリムリーパーは鎌を振るうと、俺とグリムリーパーだけを取り残し、周りの景色が切り裂かれた。
本当に文字通り空間が切り裂かれたのだ――そして、切り離された。俺らだけが黒い空間に取り込まれ、広場の景色は遠ざかるように消えていく。
「勇者様!」
最後に、マキが手を伸ばす姿が遠くに見えたが、すぐにそれも見えなくなってしまった。
あっという間に、何も映し出さない深い闇の中に放り込まれ、魔女の子と二人きりという、そんな状況に立たされてしまった。
「隔離魔法と言えばいいのかしら――魔王様が魔王城という空間を持てるように、わたしも小さい規模ながら、一時的に空間を作り出せるの」
グリムリーパーは真っ黒な天井を仰いだ。
「……ここなら、魔王様にも観測されない」
グリムリーパーは呟いて、鎌をこちらへ向けると言う。
「さあ、戦いましょう。勇者」
俺は彼女の言葉を無視し、 〈ロード〉 を実行しようとする――しかし、今はもうすでに戦闘フェーズに入ってしまったようだ。エラーの文言が出て実行することは叶わない。
このまま、すぐまたセーブ地点へ戻り、グリムリーパーたちのところへ行けば、間に合ったかもしれないと思ったのだが……。
…………。
――なら、できるとこまで、とことん今と向かい合うのみだ。
鎌を構えたグリムリーパーは、すでにこちらへ距離を詰めはじめていた。




