↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
89/134

第13話・嘘つきは、お前じゃねぇか

「わたしのやることはただひとつ――魔王様の仰せのままに」


 刹那、グリムリーパーは一気に踏み込み、俺を攻撃範囲に捉えた。


 その首元に目がけて真っ直ぐに鎌を振るう――俺はとっさに剣を引き抜いたお陰で、ギリギリのところで鎌の餌食にならずに済んだ。


 ――早い! 今までの魔女の子(誰)よりも、動きが早くて、防ぐのだけで精いっぱいだ!


 グリムリーパー(彼女)よりも大きな鎌では、次の攻撃までのリーチも長いかと思われたが……小柄な体格ゆえ、リーチの間は鎌を盾に防御の型を取り、こちらの隙を見て瞬時に攻撃の手に切り替えるといった、一切隙のない動きでこちらを攻め立てられる。


「どうしたの、勇者! ほかの三国を切り抜けたと聞いていたけれど、腕はその程度!?」

「……っ!」

「ふん。なら、少しハンデをあげましょうか」


 突然、グリムリーパーは鎌を空高く振り上げた――直後、素手のまま俺に向かって突進を開始した。


 思わず、剣を握ったままの俺はそのままそれで防御してしまう。グリムリーパーはその刃に腕を食い込ませるが、痛みなんてまるで感じていないというふうな涼しい顔で、ダメージを受けていないもう片方の腕を振り切り、俺を殴った。


「たかがその程度の剣でわたしは斬れないわ。本気出さないと、そのままわたしになぶり殺されるわよ?」

「……俺だって!」


 俺は剣を地面に投げ捨て、グリムリーパーに右フックをかました。しかしあっさりと拳を防がれてしまっだが、彼女の顔から動揺しているのが伝わってくる。


「な、何してるのよ!」

「何って、俺だってやれるとこ見せてるんだろ!」

「嘘をおっしゃい! 本気を出しなさい! あなたがどこかで戦闘を避けようとしているのが、見え透いているのよ!」


 グリムリーパーは言うと、今度は殴りつけるのではなく、俺の頬に平手打ちをした。


「わたしはあなたの仲間を殺した! あなたの仲間…… 〈プレイヤー〉だって、目の前で死なせてみせたでしょう! そんなことをされて、黙っているのが勇者なの!?」


 グリムリーパーは俺の両肩を掴んだ。


「恨めしいでしょう!? だったら、本気でわたしを殺しにかかりなさい!! 知らないの?! あなたはわたしを殺さないと、魔王城へは行けないのよ――」


 グリムリーパーは突如言葉を切り、俺の身体を自身に引き寄せた。


 直後、背中にゾワリとした空気を引き裂く感覚が走る。俺はゆっくりと後ろを向くと、さっきグリムリーパーが宙へ放り投げた鎌が地面に深々と刺さっていた。


 グリムリーパーが俺を引き寄せてくれなかったら、確実にあの刃物が俺の脳天を直撃していた。


「……お前こそ、わかってんのかよ。お前が今俺を引き寄せてくれなかったら、俺をそのまま始末できていたのに」


 俺は言って、視線をあの鎌へ送った。


「………腹に蹴りでも入れようと思ったの。……だ、だから、たまたまよ」

「……たまたま…ね」


 気まずく、重苦しい沈黙が流れる。


「どうして、魔王はこんなシナリオを作ったんだろうな」


 その空気に耐えきれず、俺は言葉を吐き出していた。


「……試しているのよ、あなたを」


 グリムリーパーは言いながら、掴んでいた俺の肩をそっと離した。


「魔王様はいつも言っていたわ、今回はどんな結末を見せてくれるのかって。わたしは、魔王様が何を言っているのか、何を望んでいるのかわからないけれど……」


 グリムリーパーは、俺がさっき投げ捨てた剣に向かって歩き出す。


「ああ。あと、拳銃使いの時から制御が利かなくなってきた……とかも言っていたわね。魔王様、しっかり目をつけているみたいだから気をつけてね」


 グリムリーパーは剣を拾い上げ、横になるツリィを見つめた。


「ツリィたち……いえ、あなたたち〈プレイヤー〉は、別世界の人たちらしいわね。魔王様が眠りにつけば、みんな元の世界へ戻れて、失った命も再生されるのだとか」


 それから、グリムリーパーは俺を見た。


「わたしがこんなことを言うのもなんだけれど……ツリィたちを、よろしくお願いできないかしら」


 グリムリーパーは剣を持ち上げ、その刃物を確かめて。


「わたしとあの子たちは、いっしょにいれない存在だから」


 ――その刃物を、自身の首に当てると。


「ッ、やめてくれ!」

「頼んだわよ、勇者」


 直後、彼女の細い首が赤く染まり、グラりと自立力を失い倒れる。


 俺は、回復魔法なんて持っていない。


 再生もされず、みるみると失っていくHP(体力)を、ただ見ていることしかできない。


「勇者様!」


 遠くから、聞こえるはずのない声が聞こえた。


 振り向けば、マキにリアムに……そしてケンがいた。


「マ、マキ、どうして!?」

「魔女の子が現れて……魔法で眠らされていたのです。でもついさっき目覚めて……!」


 俺はまたグリムリーパーを見た。マキたちもその姿に気づき、事態を飲み込んだようだ。


「ユータ、魔女の子倒した……?」

「……倒したというよりは、これは……」


 グリムリーパーのHPは、いよいよ『0』を迎えようとしていた


「ダメだ、こんなのダメだ。きっと、別の……」


 俺は、溺れる者は藁をも掴む想いで、メニュー画面を立ち上げていた。


 〈SKILL〉を開き、指を滑らせながら、〈ロード〉を起動する。


 周りの景色が白い光で満たされていく――いや、逆かな。この場合、俺が光に包まれているのかもしれない。


 ――嘘つきは、お前じゃねぇか。


 心の中で吐き捨てながら、段々と視界も白く覆い尽くされていく。


「……勇者様」


 意識が徐々に消えていく最中、最後にマキの声が聞こえた。


「…ん……は、…き………」


 ――なんだ? なんて言った?


 しかし、もうそれを確かめようもなく、視界は暗転し、意識は急降下するように闇に吸い込まれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。