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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第9話・本当に、ずいぶんな役押しつけてくれたよな

「ここで受付をやってもらいます。しっかり働いて返してくださいね。わたくしはお部屋を片づけて来ますから」


 女性はそう言い残して、部屋へと行ってしまった。


「受付しとけたって……とりあえずここに立っておけばいいのか?」


 働いて返せというわりに、仕事に関する説明は一切なかった。まあ現実(リアル)でもそういうことはありそうではある。


「ふっ。だがやり切ってみせるぜ。伊達に現実世界で社会人なんてやってないしな」


 ――ま、接客業なんてやったことはないんだけどな!


 しばらくすると、ひとりの青年が現れた。腰に剣を携えている。もしかして、あの人もここへ泊まりに来た〈プレイヤー〉だろうか?


「いらっしゃいませー」

「えっ、宿屋へ来て、『いらっしゃいませ』なんて初めて聞いたわ〜。……ってなんや、アンタ宿屋の者(モン)やないな!?」


 青年は言って、剣を抜いて構えた。俺は慌てて「待て待て待て!!」と宥めた。


「ちょっとわけあって、強制的に働かされてるだけの 〈プレイヤー〉 だよ! たぶんそっちもそうだろ?」

「あー。宿屋のルール破ったんかいな。アンタ、アホやなー。あ、もしかして彼女と激しい夜でも過ごしたんか?」

「違ぇよ! やめろいきなり!!」

「アハハー。冗談やて。アンタに彼女がいるとも思えへんしな」

「……くっ」


 ――最後の言葉は否定できねぇ。


 関西出身の人なんだろうか。訛りが特徴的な青年は剣を収めるとカウンターに寄りかかった。


「そうや。俺もこの世界に閉じ込められた 〈プレイヤー〉や。〈JOB〉は〈剣士〉! かっこええやろ?」

「あーそッスね」

「なんや、興味なさそうに! ……って、よく見るとアンタ、あのユータって奴かいな? ……ほら、〈勇者〉 の!」


 青年の耳には、どうやら俺のことが届いているらしい。

 青年は顎を擦りながら、ジロジロと俺を見てくる。


「いや〜猫ちゃんたちから聞いたとおりやなぁ。普通の顔してるわ。でもいい人ってのは伝わってくるな」

「猫ちゃん?」

「ん? ああ俺さ、とりあえず気ままにこの世界をフラフラしててな、途中で猫耳姿の姉妹と出会ったねん。そこで、ユータの話色々と聞かせてもろうてなぁ」


 その姉妹はムギちゃんとソラちゃんのことだろう。聞いたとおりの普通の顔ってなんだ、二人は、一体俺のどんな話をしたんだ。


「……と、挨拶が遅れたな。俺はセイバーっちゅーもんや。ま、この世界での名前だけどな」


 名前もかっこええやろ〜? ヒーローみたいで。ま、実際知ってるヒーローから名前取ったんやけどな! ……と、セイバーは笑った。賑やかな奴である。


 話をしながら、俺はこれはチャンスかもしれないと思った。もしかしたら、セイバーは赤いフードの人を見かけているかもしれない。プレイヤー相手のセイバーなら、何か情報が聞き出せるかもだし。


「なあ、セイバー。知ってたら教えてほしいんだ。セイバーは、赤いフードについて何か知ってるか?」

「……? 赤いフード?」

「最近この市に現れた不審者の……勇者(俺)を狙う怪しい奴らだ。どうやら三人いて、どれも俺らと同じ〈プレイヤー〉らしいんだが……見かけたりしてないか?」


 セイバーは「ごめんな。俺、特に見てないわ」と答えた。赤いフード(アイツら)、すでにどこかで身を潜めているのか。


「そんな奴らがおるんやなぁ。俺さ、しばらくここにおるけど、街の人とかと話しする中で、そんな話まったく聞かんかったで」

「ああ。俺もその赤いフードの話を聞いたのは街の人じゃなくて、温泉の店主に聞いたんだ。ここから少し離れたところにある、〈シロケムリオンセン〉ってあるだろ?」


 セイバーは、途端に訝しげな顔をした。


「温泉があるのは知ってるけど……店主? そんなんおったっけ?」

「……え?」


 その言葉を皮切りに、胸がザワつき出した。


「あそこは確か、無人の温泉宿だったと思うけど……」

「……無人?」


 ――なら、あの子は……ラ(・)ビ(・)は(・)?(・)


「……ありがとう。セイバーのおかげで、一歩進んだ」


 俺は、受付にある引き出しから適当に部屋の鍵を取り出してセイバーへ渡した。


「部屋の鍵だ! 俺は〈シロケムリオンセン〉へ向かう!」

「お、おおきに。だけど、もう行けるんか?」


 俺はカウンターを出ようとして止まる――そうか。損害分働くまでは、ここから動けない。


 そのとき、ちょうど受付の女性が戻ってきた。


「お部屋の片づけが終わりました。あなたもしっかり働いたようですし、もういいですよ。今後はお気をつけください」


 女性の言葉を受け、俺はとりあえずカウンターから出てみる。

 出口のほうへ向かってみるが、特に隔てるものもない。解放されたんだ。

 長丁場とならなくてよかった。これで俺も動き出せる。


「それじゃ、失礼します! セイバー、ありがとよ、お前のおかげで何とかなるかもしれねぇ!」

「ええんやで! ……って、一体なんのこっちゃ?」


 後半はボヤいていたセイバーだが、宿を出ようとした俺の背に向けて、さらにこう言った。


「〈プレイヤー(みんな)〉のこと頼んだで、ユータ!」


 改めて、俺の気持ちが引き締まる。


 そうだ。この世界(物語)は俺しか終わらせれないんだ。


 それができるのは、〈勇者〉だけなんだから。


「本当に、ずいぶんな役押しつけてくれたよな」


 俺は誰にも聞こえないくらいの小さな声で、独り言を呟いた。

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