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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第6話 ・魔女の子は誰なんだ?

 ヨイという〈プレイヤー〉は、俺らとの戦いで多少体力が削られてしまっている。リアムとも相談し、とにかく一旦休ませてあげて回復させようという結論に至り、この市にある宿へと連れていくことにした。


「マキとケン、大丈夫かな……」


 リアムは〈プレイヤー〉の女性を背負いながら、そんな心配の声を洩らした。


「もし、あの中にホンモノの魔女の子がいたら危険だ。ひとりでなんて、きっと太刀打ちできない」


 俺はヨイを横目で見つつ、そう言った。こういうとき、二人の居場所がすぐわかればよかったんだが、残念なことに、そういった機能はこの世界にはないらしい。


 しかたがないので、二人を信じて俺らは宿屋を目指していた。


「勇者様ー!!」


 宿屋の前まで来たときだった。遠くから、マキの声が聞こえた。


 声のしたほうを見ると、マキとケンがいた――ケンも、背中に誰かを背負っていた。


「ほら言ったのです! 勇者様ならここへ来るって!」


 マキはケンにそう言っていた。ここへ来る前に、二人の間に何か話し合いがあったに違いない。


「マキ、ケン! 大丈夫か!?」


 俺が言うと、二人とも笑顔作れるくらい元気なようだった。特に大きなダメージも受けていないようだ……よかった。


「ケン、背中にいる人は?」


 ひとまず二人の様子を見て安心した俺は、早速ケンの背負うその人物について聞いた。


 その人物は、やはり赤い服を身につけていた。


 ケンは一度その人物を見てから答える。


「ユータと別れたあと、この赤いフードを見かけたんだ。魔女の子だと思って捕らえたんだが……どうやら違うようだ」


 俺は顔を見た――少年のようだ。

 よく見れば、首元には彼女と同じ黒い首輪があった。


「この子は、魔女の子ではなかったのです。ただの……〈プレイヤー〉なのです」


 マキはそう説明した。


「どういうことだ……? なぜ〈プレイヤー〉が……?」


 勇者を狙う不審者。

 それはつまり、魔女の子だと思っていたが、どうやら事態はそんなに単純なものではないようだ。


 だが、ヨイは 『魔女の子』を演じていた。


「そちらの方も……〈プレイヤー〉、なのですよね?」


 マキはヨイを見ながら聞いた。リアムは「Yes」と頷いた。


「……そうだ。マキも追ってたんだよな? 赤いフードの人物。ソイツは……?」

「ごめんなさいなのです……。足が早くて、すぐに見失ってしまって……」


 マキは申し訳なさそうに目を伏せた。

 ケンは困窮していく空気を払うように、「その話は宿でしよう」と口を挟んだ。俺もその意見に同意し、


「とりあえず、今はこの人たちを休ませよう。目覚めたら、しっかり話を聞き出してやる」


 と、言った。

 

 俺は宿の受付を済まし、部屋を借り、赤いフードの二人をベッドに寝かせた。


 二人が目覚めるまで、俺らは部屋のテーブルを囲み、これまでの経緯を話し合うことにした。


「勇者様と別れたあと、ひとりの赤いフードを見つけたのです。わたしはすぐに追わなきゃと思って追いかけて……」

「その後、僕とリアムは引き続き、市役所方面へ行こうとしたが、もうひとり赤いフードが現れてな。僕がソイツを追い、リアムには一度ユータのほうへ戻ってもらうことにした」

「Yes……それで、オラがユータのとこへ来たら、ユータが攻撃されてたんだ」

「その感じだと、赤いフードは三人いて同時に動いてたって感じだな……」


 俺は横になっている二人を見て言った。


「わたしが、初め追っていた人はすばしっこくてすぐに見失ってしまったのです。魔女の子を探してるうちに、ケンちゃんと合流したのですよ」

「僕はそのとき、すでにあの子を捕らえていた。ひと目見て魔女の子じゃないのは明らかだったから、とりあえず気絶させたんだ」


 ――ひと目見て……か。あれ? だけど……。


「……ケンは、どうして魔女の子じゃないって気づけたんだ? 魔女の子でも〈STATUS〉を把握できるのか?」


 プレイヤー視点と魔女の子(ゲームの住人)視点だと、見えるものが違う。使える機能だって違うはずだ。ゲーム側の住人からすると、〈STATUS〉なんて概念もなさそうなものだが……。


 ケンは「簡単なことだ」と答えた。


「弱かった。それだけだ。あの強さで魔女の子なわけがない」


 ――弱かった…か。


「なんかそう言い切れちゃうところが格好いいよなぁ、ケンって」

「そうなのか。僕は思ったことを言っただけだが」


 そんな会話のあと、マキは「 別に、〈STATUS〉を見なくても判断できることはできるのです」と補足する。


「今この世界の住人(ゲームのキャラクター)で自由に動けるのは、プレイヤーと魔女の子だけ。〈NPC〉と呼ばれる人は、決まった場所でしか動けないのです」


 マキに言われて、そもそものルールを思い出した。確かにそのとおりだ。

 NPCの中でも、〈ユウカクガイ〉でともにした鷹尾太夫(たかおだゆう)や紫(むらさき)さんは、比較的自由に動いていたが、決して〈ユウカクガイ〉の外へは出なかったし、何より、あの二人は魔王の用意したイベント上にいるキャラクター――魔王が干渉しているキャラクターだった。


「そして、プレイヤーと魔女の子の決定的な違い――それは、この世界の過去を知っているか否か……なのです。仮に、〈STATUS〉を見れなかったとしても、そこさえ押さえて観察すれば相手がわかるのです」


 マキの説明に、リアムだけがポカンと口を開けて聞いていた。おそらく……というか絶対頭に入ってないだろう。


 少し話が逸れてしまったので、俺は話を戻すことにした。


「……んで、ケンとマキはその子の回復のために宿へ連れてきたってわけか」

「ああ。僕は目覚めるまで放置させようかと思ったが……」

「わたしが言ったのです。もし勇者様同じ場面にあっていたら、宿屋に連れてくるはずだって。そのとおりだったのです」


 それでさっき、マキはケンに「ほら言ったのです」なんて言ってたのか。


「Umm……結局、魔女の子は誰なんだ?」


 ひととおりの話を聞き終えたリアムは言った。

 そうだ。肝心のそこがわからずじまいだ。


「それはあそこの二人が起きてから聞こう……。女性のほう……ヨイっていうみたいだが、ソイツは最初、自分を魔女の子だと名乗っていた。確実に何か知っているはずだ」


 一番、今魔女の子として可能性が高いのは、マキが逃したという人物だろう。


 奴は今――どこへいるのか。



 コンコン。


 そんなとき、突然扉のノック音がした。


 コンコン。


 まただ。


 俺は扉のほうへ近づき、


「誰だ?」


 と聞いた。


 少し間を置いてから、扉の向こうから返事が返ってきた。



「――死神」



 次の瞬間、扉は強制的に破られた。

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