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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第四章・シロケシキノチ
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第5話・死ぬべき運命の者をすぐに黄泉に送るのが、死神の仕事だ

「――貴様は勇者か?」


 赤いフードを被ったソイツは、そう問うた。


 フードを深く被っていて、その顔は伺い知れない。背格好は俺と同じくらいであるが、その声は中性的で、性別さえも見た目だけではわからなかった。


「……この格好を見て、どう思うよ?」

「それは、貴様が勇者だと見て取ってよいということ……だな!?」


 フードを被ったソイツは、突然手の平の内にモーニングスターを出現させると、話終えるとともに、俺目がけてその棘だらけの球体をぶん投げてきた。


 寸でのところでそれを躱し、球体は地面に深々と突き刺さる。


「お前が魔女の子か!」

「そうだ。魔王様の命により、お前を殺す!」


 球体を引き抜くや、すぐにモーニングスターを構え直し、魔女の子――グリムリーパーは攻撃を図った。


「死神と聞いていたが、ずいぶん威勢のいい死神だな!」


 俺は言いながら、グリムリーパーとの距離を取り、剣を構えた。


「死ぬべき運命の者をすぐに黄泉に送るのが、死神(わたし)の仕事だ」


 グリムリーパーはモーニングスターを振り上げ、遠心力をかけながら、球体を投擲した。


 しゃがんで球体を避けつつ、今度はグリムリーパーとの距離を詰める。


 ――当たった時のダメージはデカそうだが……攻撃の間隔は大きい。奴が次の攻撃を仕かける前に、こちらからも攻撃する!


 俺はグリムリーパーの領域まで踏み込み、剣で斬ろうとした。


 ――しかし。


「甘いな」


 グリムリーパーは空いていた左手に、もう一本のモーニングスターを出現させ、チェーンの部分で剣を防いだ。


 ――二本持ちかよ!?


 奴との距離が近づいたことで、フードの中の顔が少しだけ見えた。口元や手元を見て、もしかすると女性かもしれないと、俺の中で推測が立つ。


「ボーッとしてていいのかな? すぐ頭上には鉄球が落ちてきているぞ」

「なっ!」


 俺の意識が、一瞬上に向いたときだった。グリムリーパーは素早く俺の顎を膝で蹴りあげ、俺の視界は曇り空に切り替わる。


 だが、そこに鉄球などなかった。


「失礼。頭上じゃなくて、背後だったか」


 蹴られた衝撃でそのまま後ろへ倒れていく途中見えた――俺の攻撃を防いでいる間に、もう一本のモーニングスターをこちらへ引き寄せていることに。


 棘の球体が、今にも俺の顔面に直撃しそうだった。


「……っ!!」

「死ね、勇者」


 俺は反射的に目を瞑った。


「――I'm here!!」


 刹那、リアムの声が聞こえ、俺はすぐに目を開けた。


 地面に仰向けに倒れた俺はすぐに身体を起こす。

 目の前には、ギリギリのところで球体を地面に突き刺し、動きを止めてくれたリアムがいた。


 直接手で防いだからだろう。リアムの手は棘で傷ついていた。


「――リアム!」


 リアムは魔女の子を睨みつけながら言った。


「Found you!」


 グリムリーパーはリアムの加勢に舌打ちを鳴らしつつも、


「……仲間がひとり増えたところで関係ない。一瞬で片づけてやろう」


 と言い、モーニングスターを自身に引き寄せ、再び構えた。


「……助かったぜ、リアム! ……ってか、二人は?」

「それは……っ!」


 リアムの言葉は、グリムリーパーの攻撃によって中断された。


「……まずはコイツを止めねぇとな」


 俺とリアムは二手にわかれ、グリムリーパーを挟み撃ちにする作戦へと出た。


 グリムリーパーは、瞬時にこちらの動きに反応し、自身を軸にし回転し、両手それぞれに持った二本のモーニングスターを振り回しはじめた。


 ――防御も兼ねた攻撃態勢か…?! だが、中心のグリムリーパーに攻撃すれば……!


 俺が予測しながら、奴に斬りかかろうとした――しかし。


「《狙い撃つ鉄球(スキワース・ハート)》!」


 回転するモーニングスターから、無数の棘が俺らに向かって飛んできた。


 俺は攻撃を止め防御に切り替えるが、防ぎきれなった棘が俺の皮膚を切り裂いていく。


 ――それより、リアムは平気か!?


 俺は横目でリアムを確認した。リアムは棘の攻撃に怯むことなく、


「気合拳(スピリット・フィスト)!!」


 攻撃を受けながら、グリムリーパーへ直進しつづけていた。


「普通は突っ込んでこないだろ、バカが!」


 グリムリーパーはそう吐き捨てた。リアムの猪突猛進さには、想定外だったらしい。


 リアムの拳が奴の顔面寸前まで入るが、グリムリーパーもとっさの動きで拳を掴み防いだ。


 そのとき、持っていたモーニングスターが奴の手から離れる。同時に攻撃もやみ、そこに大きな隙が生まれた。


 俺は地面を蹴りあげ、一気に間合いを詰める。


「しまっ……!」


 グリムリーパーはもう片手に握り締めていたモーニングスターで俺を攻撃しようとするが、リーチの長いその武具ではもう追いつかない。


 俺はグリムリーパーの後ろに回りこみ、その首に、剣の柄の部分を叩き入れた。


 グリムリーパーは意識を失い、そのまま地面に倒れた。


「……とりあえず、なんとか事は収まった、な」


 グリムリーパーが完全に気を失っているのを確認し、そう呟いた。


「リアム、怪我は平気か?」


 リアムはさっきの攻撃で全身切り傷を追っていたが、本人は気にしていない様子で、笑顔で「I'm great!」と答えていた。


 よかった。リアムの受けたダメージは致命傷とまでならなかったようだ。あとでマキと合流したときに、回復魔法をかけてもらおう。


「ユータこそ! 倒したのか!?」


 リアムは聞いてきたが、俺は首を横に振って答えた。


「気絶させただけだ……。そういえば、さっきの話の続き、聞かせてくれ。どうして二人はいないんだ?」


 リアムは「Actually…」と言うと、困惑した顔を浮かべた。


「市役ところに向かっていたとき、二人赤いフードの人が見えて…マキとケンは追いかけたんだ」

「赤いフードが二人……?」


 どういうことだ?


 ――俺の目の前にもいるわけだが……魔女の子は、三人いるというのか?


「それで、オラは一旦ユータのところに戻ってきたんだ! 危なかったってやつだ〜」


 一体何が起きているのだろう。


 今までは魔女の子がひとりずつしか存在していなかったわけだが……ここにきて、複数人なんてことがあるのか。


 ケンから話を聞いた限りでは、どうもひとりにしか思えないのだが……。


「状況はわかった。……となれば、とりあえず、まずはコイツがどんな奴だか知らなきゃならねぇ」


 俺は言って、目の前で横になっている魔女の子に視線をやった。


 俺は顔を見るため、慎重にそのフードを脱がす。

 リアムも俺の向かいに座り込み、奴の顔を覗き込んだ。


 俺が推測していたとおり、その人はショートカットの女性だった。見たところ、二十代前半くらいだろうか。首には、黒い首輪をつけていた。


「……この人……」


 俺はそっと女性の肩に触れながら、相手の〈STATUS〉を閲覧した。


 名前は――『ヨイ』。〈JOB〉は〈女騎士〉。


 ――これって、つまり……。


「――魔女の子じゃない、〈プレイヤー〉だ」

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