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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第三章・ヨシワラトウゲンキョウ
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第28話・こんな楽しい日々が続くのは悪くないよな

「本当にありがとうござりいす。ずいぶんと、遊郭も片づいたでありんすよ」


 遊郭前。


 鷹尾太夫(たかおだゆう)と紫(むらさき)さん、それに遊女たちも集まっていた。


「せっかく手伝ってくれたなんし。魔女の子退治のお礼も兼ねて、わっちらよりおもてなしさせていただきたいでありんすが……今晩は、泊まっていくでありんすか?」


 鷹尾太夫は、そう提案した。

 思ってもみない提案に、俺は「え!? それじゃあ……」と誘いに乗りかけるが、しかし、


「大丈夫なのです。わたしたちは、まだ魔女の子のいる北の国へ行かなくてはならないのですから」


 と、先にマキがハッキリと断ってしまった。


「そうなんしか。やはり、勇者一行様は立派でありんすなぁ」


 俺は内心泣きながら、「え、ええ。そりゃあ勇者ですから」と口では言った。


「ふん。残念だったな、勇者。かわいいガールフレンドに邪魔されて」


 紫さんは俺の内心を見透かした上でそう揶揄した。

 鷹尾太夫はそんなやり取りを見て微笑んだ。


「ふふふ。では、ここでお別れなんしね」


 鷹尾太夫は言って、地面に膝をついた。紫さんと遊女もそれに倣って膝をつく。


「最後は、花魁らしく見送らせていただくでありんす」


 鷹尾太夫は乱れのない所作で、手をついた。


「それでは、いってらっしゃいませ。ご武運を」


 鷹尾太夫は言い、続いて紫さん、遊女たちも深く頭を下げた。


「――ああ。必ず、この世界を元に戻すよ」


 俺はそう言って、仲間を引き連れてその場を去った。


 鷹尾太夫たちは、俺らを見送る最後まで、頭を下げつづけていた。




 ◇




 〈ユウカクガイ〉を出て、俺らはいよいよ残すところ最後となった、北の国――〈シロケシキノチ〉 へ向かっていた。


 以前、東エリアから〈ニードル王国〉まで行くに利用したあの地獄のフライト――あれを使うのもひとつの手かと考えたが、どうやら、俺らが行ったことのない場所へは行けないらしい。「どこだそこは?」と、言われてしまった。


 そこはゲームらしいというかなんというか。


「次行くところは、どんな感じなのですかねー?」

「僕は情報だけなら知っているが――」

「No! ケン! それはネタバレってやつだ!」

「ネタバレ……?」


 そんな感じで、三人は楽しく会話している。


 俺は、あることがひとつ気になり考えていた。


 ハンドレディとの戦いの時こと。最後〈エキドナ〉によって、最悪の事態から救われた。

 あのとき聞いたエキドナの声、あれは。


 ――魔王の声に、似ていた。


 偶然か、それとも必然か。


 あれはもしかして、魔王だったのか?

 だとしたら、魔王はどうして……。


 ―― 『お主はもうわかっているのじゃろう?』。


 テオドロス王女に言われた言葉。

 わかっているなんて、よく知ったような口を聞いてくれる。


 ――俺はそんなの……わからない。


「――勇者様は、どっちなのですか?」


 考え事の中にふと、そんなマキの声が割り込んできた。

 俺は考え事を中断し、三人を見た。


「……ごめん、聞いてなかった。なんの話?」

「Oh well……ユータはすっとこちょいちょいってやつだな〜」

「リアム。おそらくだが、その『すっとこちょいちょい』は『すっとこどっこい』と『おっちょこちょい』が混ざってないか?」


 ケンの冷静な指摘に、リアムは「そうか!」と元気に答えていたが、たぶん頭に入っていない。

 マキはそんな男二人の会話を聞き流しながら、こう答える。


「鷹尾太夫さんとテオドロス王女、どっちのお姫様派かって話をしていたのです! 勇者様はどっち派なのですか?! ちなみに、ケンちゃんとわたしが鷹尾太夫さん派で、リアムさんがテオドロス王女派なのです!」


 いつの間にそんな話になっていたのか……と思いつつ、俺は少し考えた。


 鷹尾太夫は、美人だし、大人な魅力もあって、その色気に惹き込まれるし……。テオドロス王女だって、負けずに美形だし、その喋り方もさることながら、全体的に小動物みたいでかわいらしい。


 うーん、としばらく真剣に悩み、俺は答える。


「テオドロス王女かな」

「「「やっぱり〜〜〜」」」


 予想どおりだったのか、三人は声を合わせて言った。


「やっぱり、ユータはロリコンってやつだ」

「もうわかっていたがな」

「変態さんなのです!」


 口々にそう言いながら、みんなは笑った。


「お前ら、ホント言ってくれるよな。俺は一応、勇者なんだぜ?」


 俺もそう言って、みんなに混じって笑った。


 ――ゲームの世界から出られなくても、こんな楽しい日々が続くのは悪くないよな。


 そんなことを思ったりして。

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