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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第三章・ヨシワラトウゲンキョウ
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第27話・遊郭が完璧に直るまで、まだまだ時間がかかりそうでありんすなぁ

「……庭園損害費一千万、建造損害費八千万、建造修復費及び装飾費二億三千万――色々込みで、六十億ゴールドってところでありんすな」


 鷹尾太夫(たかおだゆう)は言って、一枚の請求書を俺に差し出した。


「……え? これなんスか?」

「賠償金でありんす。散々遊郭を荒らしてくれたでありんすからなぁ。魔女の子もいなくなった今、次に請求を求める先と言ったら、勇者だと思ったなんし」

「……え? え? でも桁が小学生が考えたみたいな数字になってますよ? これマジっスか?」


 俺は請求書を握り締め、鷹尾太夫に訴える。


「ってか! 俺だって、魔女の子倒すのに必死だったンスよ! それなのに賠償しろなんて酷い話じゃないッスか〜!!」


 そう言わずにはいられなかった。


 鷹尾太夫は口元に手を当てながらお上品に笑い、それから「裏を見るなんし」と言うので、請求書の裏を見た。


『ドッキリ大成功! でありんす。』


 と、裏にそう書かれていた。


「うふふ。本物の請求は〈ニードル王国〉のほうへしているでありんすよ。魔女関連の被害は全部あっちが引き受けてくれる約束なんしから」

「あー……そうなンスね。俺はてっきりガチで取り立てられるかと思いましたよ……」


 鷹尾太夫もお茶目である。下手したら心臓が止まりかねないドッキリをしてくれる。

 でも、テオドロス王女はこんな高額な請求書を見てどう思うんだろう。さすがの王女様でも、あんな多額の請求書を見てビックリするんじゃないだろうか。


 鷹尾太夫はふと、ポッカリと穴の空いた天井を見上げた。


 あのとき、紫(むらさき)さんがハンドレディを攻撃した際にできた穴である。


「遊郭が完璧に直るまで、まだまだ時間がかかりそうでありんすなぁ」


 屋根が直るまで、雨は降ってほしくないでありんす、と言って、鷹尾太夫はまた笑った。


 その美しく魅力的な笑顔を見て、ああやっぱり遊郭一の花魁なんだなぁと思いつつ見蕩れていると、背後からピシャリと襖の開く音がした。


「おい、勇者! 貴様も手伝え! 貴様の仲間たちは積極的に働いているというのに!」


 紫(むらさき)さんだ。


「あーはいはい。俺も行きますよ」

「『はい』は一回だ! まったく、本来だったら、そこに座るには十億払ってもらうのが道理なんだからな!」

「あれ?! なんか倍になってません?! 俺が最初聞いたときは五億だったンスけど!?」

「うるさい! 足を動かせ!」


 紫さんに尻を蹴られ、俺は階下へと移動する。


 魔女の子も消え、平和の訪れたこの国だが、それでも日常がすぐに戻るわけではない。

 ハンドレディとの戦いで損傷した遊郭は、戦いの終わりと同時に元通りに直ることはなく、今も遊女たちは片づけに勤しんでいた。


 ――そして、なぜか勇者一行である俺らも手伝わされている。


 ゲームなんだから、そのくらい一瞬で片づいてくれないかと思うのだが、なぜかこういうところは現実的だ。


「あ! 勇者様! どこに行ってたのですか!?」


 一階のメインロビーまで降りると、ホウキをはいていたマキがこちらに気づき、腰に手を当てながらそう声をかけてきた。


「ちょっと鷹尾太夫のところにな」


 そう答えると、ゴミを運んでいたリアムがそれを聞きつけ、こちらへと近づいてきた。


「Come on! ユータ! なんかイイコトでもしてきたのか?」


 リアムがからかい気味にそう言う。マキが「イイコト……?」と不機嫌なオーラを出し、ホウキを握り締めはじめたので、俺はすぐに、「違う! 普通に話をしてきただけ! 業務連絡!!」と慌てて説明した。


 そのとき、遠くから色めき立つ声が耳に入った。


 遊郭内で花魁道中か? と思いながら声のするほうへ行くと、遊女に囲まれたケンが見えた。


「あの! 遊郭が再開したら呼ぶので、ぜひわたしと付き合ってくれませんか?」

「わたしも! ぜひをわたしのところについてほしいです!」

「ひと目見たときから素敵だと思ってました! 一時間だけでいいんです、付き合ってくれませんか?」


 ケンは、遊女たちに囲まれて黄色い声援を浴びせられていた。


「いや……あの、僕はあまりこういったのに興味は……。それに、今はこれを片づけなくてはならないから」


 ケンはそう断り、遊女たちの間をすり抜け、こちらへと歩いてきた。


「あ、ユータじゃないか。ちょっとあっちの片づけを手伝ってくれないか? 結構散らかっていて……」

「そんなことより羨ましいな、お前はよぉ!!」


 ――めちゃくちゃ遊女からモテてるじゃねぇか! なんだ、顔か!? 顔なのか!?


 そんな俺の気持ちを受け止めるかのように、リアムは肩に手をかけた。ありがとうリアム、味方はお前だけだぜ。


「あ、いたニャ! おーい!」


 そこへ、また別の方向から声をかけられた。ムギちゃんが元気よくこちらへ駆け寄り、その後ろをソラちゃんがついてきていた。


 昨日とは違い、もう二人は黒いローブに身を包み、普段の時の格好をしている。


「ウチらもそろそろ帰るからさ、最後に挨拶をしに来たニャ〜」

「東の国のメインである遊郭も、しばらくは遊べなさそうだしね」

「ソラちゃんは遊郭で遊ぶ歳じゃないでしょうが」


 俺はそうツッコミを入れてから、改めて二人を見た。


「ありがとうな、二人とも。二人の協力のおかげで助かったよ」

「いえいえ〜! 困った時はお互い様だニャ! ウチら、『超仲間』だもんね!」

「超仲間?」

「超絶仲良しの仲間! 超仲間! ニャ!」


 若い子のノリはイマイチわからないが、まあ仲よしと思ってくれているならいいだろう。


「じゃ! またね、みんな! 次も何かあったら呼んでよね!」

「それじゃあ、また。ユータ、どうせいくら積んでもモテないんだから、遊郭遊びは程々にしなさい」


 二人はそう別れの挨拶をして、遊郭を出ていった。最後のソラちゃんの言葉は、相変わらずソラちゃん流の毒が込められていたが……もう結構耐性はついた。むしろ毒を浴びたいくらいだ。


 二人を見送ってから、俺は思い切り背伸びをする。


「さて、いっちょ気合い入れて頑張りますかな。雑巾がけレース一位の実力をみせてやるぜ」


 そんなこんなで、その日は丸一日かけて遊郭の片づけに励んだ俺たちなのだった。

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