第16話・いや〜。やっぱり、持つべきものは友達ってな
「まさか、こんな早くにアンタらの辛気臭い顔を見るとは思いもしなかったわ」
いつも通り毒舌を披露してくれるは、ソラちゃんだった。
「いや〜。やっぱり、持つべきものは友達ってな。フレンドになっておいてよかったぜ。こうしてソラちゃんを呼ぶことができたんだしな。もちろん、ムギちゃんにも会えて超うれしいぜ!」
「ニャニャ! ウチもみんなに会えてうれしいニャ〜!」
ソラちゃんの横に立つムギちゃんは、相変わらず元気いっぱいに答えてくれた。
ソラちゃんの手を借りる必要があるとわかった俺は、早速フレンド機能を使い、ソラちゃんにメッセージを送り、この〈ユウカクガイ〉まで来てもらった。
〈ノスティモ村〉で別れる前に、ちゃんとフレンドになっておいてよかったぜ。
「にしても、二人ともずいぶん早くに……というか一瞬でここまで来たよな。二人とも、あの地獄のフライトを使ってきたのか?」
俺が聞くと、二人とも同じ動きをしながら首を傾げた。
「ニャ? ウチらはワープ魔法でここまで来たよ〜。ウチ、ワープ魔法も使えるからニャ。一度来たことがある場ところへはどこへも行き放題だから、ここまでも魔法でひとっ飛びできたってわけニャ!」
「ここへも来たことがあったのか?」
「そうニャ! ウチらだって、ずっと南エリアにいたわけじゃニャいんだよ!」
そうだったのか。……だとしたら。
「へ〜。……あ、もしかして、〈ニードル王国〉へも行ったことがあったり……?」
「そりゃあもちろん! だって、この世界の中心地だよ〜。一回は行ってみるニャ! ……それがどうしたの?」
「…………いや、なんでも」
――そうと知っていれば、あんな地獄のフライトなんてせず、ムギちゃんに頼んでおけばよかったぜ……。
今更しても遅い後悔が襲ってきた。
……ま、そのフライトの記憶があるのも俺だけなんだけどな。
「さ、何か後悔してそうなユータは置いておいて。そろそろお喋りもこのくらいでいいでしょう」
「いや、それは置いとかないでほしいな。というか、わざわざ言う意味あったかな、ソラちゃん」
ソラちゃんは、「うるさいわね、さっさと要件を話しなさい」と言った。全く可愛げのない小学生である。好きだけどね。
実は――と俺は、ここで起きた事情を話し、二人に相談を持ちかけた。
「そんなわけで、ソラちゃん。ソラちゃんの〈SKILL〉で解呪を使えたりしないかな?」
ソラちゃんはメニュー画面を立ち上げ、〈SKILL〉一覧を確認しはじめた。
「あ、あったわ。〈断絶呪詛〉。呪いを無効にできる〈SKILL〉ね」
「Yes! それを使えば、ユウジョたちはハンドレディからカイホウされるな!」
そんなリアムの反応を見て、ソラちゃんは少し厳しい顔をする。
「ええ。だけれど、ここにいる遊女全員となると、圧倒的にMPが足りない……。都度MPを回復する必要があるわね。それに、何よりわたしひとりで対処となると、時間がかかると思う」
それもそうだ。この場にいる遊女は――ざっと数えても五十人はいるだろう。全員の解呪をソラちゃんひとりに任せるのは中々の負担だ。
「だ・け・ど〜! そんなお悩みを持つソラには、これ!」
突然ムギちゃんが水晶玉を取り出し、〈ソロエウラナイ〉と呪文を唱えた。
「ユータたちと別れてから、たま〜にだけど戦ったりして、新しい呪文を覚えたんだニャ!」
ムギちゃんは水晶を片手にピースしてみせた。
「ユータ。〈SKILL〉 を見てみて」と、ムギちゃんが言うので確認すると、ソラちゃんの持つ 〈SKILL〉 ―― 〈断絶呪詛〉が俺のところにも表示されていた。
――これは……?
「能力をコピーして他者に付与する〈SKILL〉だよ! いや〜こんなのがあるなんてビックリだよね!」
本当にビックリである。まさにこの事態にはうってつきの〈SKILL〉だ。
ちなみに、永遠に〈SKILL〉が付与されるわけではないらしく、付与された本人のMPが尽きるまでしか使えないらしい。だが、必要なMPは5MPだけで、俺らは平均して40MPところ有しているので、十分だろう。
ポイントが尽きたとしても、あとはソラちゃんがカバーしてくれるしな。
「みんなに同じ〈SKILL〉を付与して、手分けして解呪すればひとまず問題解決ニャ!」
効率もよいし、いいやり方だ。こうして、ムギちゃんの〈SKILL〉により、俺ら全員は解呪の術を手に入れた。
「さて、そうなれば後は甪海豚楼に行って、呪われた遊女さんたちを助けるだけなのです!」
と、マキは言って、何かに気づいたのかハッとした顔をした。
「……って、言ったのですけれど、遊郭ってそんなに簡単に入れるものなのでしょうか……?」
そうだった。遊郭の門の前には監視の男もいる。お金を払わなければ、きっと中に入れてもらえないだろう。
またテオドロス王女の元へ話をつけに言ってもらうか……? ムギちゃんのワープ魔法を使えばさほど時間もかからない。
もしくは、遊女に声をかけて遊郭に入れてもらうか、だ。そうすれば、問題なく遊郭に入り、呪いを解除することができる。
「仮に遊郭に入ったとしても、僕らは怪しまれないだろうか? ただの客として侵入したとしても、遊郭内を彷徨いていれば、怪しまれそうな気もするのだが……」
ケンは言った。
そうか。入ったとしても、今の時点では鷹尾太夫と顔を合わす前で、番人である紫さんは、俺を〈勇者〉はおろか、匂いを嗅ぎつけて、魔女の子だと思うはずだ。
ただ侵入するだけでは、非常にリスクが高い。
やはり、前回と同じようにテオドロス王女を経て遊郭内に入るのが一番無難かもしれないな。
「だったら、客として侵入しなきゃいいじゃない。遊郭内で彷徨いても、怪しまれない人になればいいのよ」
――俺がひとつの案でいこうと決めたとき、ソラちゃんは、それを遮るようなタイミングで口を開いた。
「怪しまれない人にって……それって、一体誰にだ?」
俺は聞くと、「バカね、ユータは。そんなの決まってるじゃない」と、ソラちゃんは言う。
「――遊女よ」




