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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第三章・ヨシワラトウゲンキョウ
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第13話・どうか頼むでありんす

 ゲームの世界に来てからというもの、ソラちゃんにも鷹尾太夫(たかおだゆう)にも臭がられて、少し悲しい。


 今思えば、魔女の匂いってどんな匂いなのだろう。加齢臭みたいな感じだったら非常にショックである。


 まあ、そこは気を取り直して。


 俺らと鷹尾太夫は向かい合って座り、紫(むらさき)さんは鷹尾太夫の横について立っている。紫さんは俺らを監視しているが如く、さっきから鋭い視線を向けつづけている。


「さて。まずは名乗らせていただくでござりんす。わっちは……もう知っているでありんすね。そして、こちらが〈ユウカクガイ(ウチ)〉の番人、紫でありんす」


 紫さんは軽く頭を下げた。


「――勇者御一行様、わっちの国へようこそおいでなんした。本当なら、まずは主さんらを盛大におもてなししたいところでありんすが、現状はそうもいかない事態になっているでありんすよ」


 鷹尾太夫は長く息を吐き、憂いた。


「――魔女の子。彼奴(きゃつ)が此処へ来てから、一瞬のことでありんした。この国は、呪いに包まれた。今や、この国は彼奴の支配下でありんす」


 隣の紫さんも、悔しそうに眉を顰めた。


「テオドロス王女から聞いたでありんす。主さんなら、必ずや魔王を倒してれると、魔女の子も、倒してくれると」


 鷹尾太夫は床に手を付き、深く頭を下げた。


「どうか頼むでありんす。この国の呪いを解いて欲しい」


 俺は鷹尾太夫に顔を上げてください、と伝え、


「その、さっきから言う呪いというのは……」


 と聞いた。


 鷹尾太夫は顔を上げてから、視線を落とした。


「……それは」


 言いかけた、そのときだった。


 ガラリと背後の襖が開いた。そこには、多くの遊女たちが立ち並んでいた。


 みんな一様に、萎縮した表情(かお)をしながらも、俺を……俺らを見据えていた。

 その手には、クナイだったり、包丁だったり、それぞれの武器を握り締めていた。


「なっ……、何をしている?」

「…………」


 紫さんはこの事態に目を丸くしていた。一方で、鷹尾太夫は悔しげに眉をひそめていた。


 そういえば、前回もそうだった。遊女らは俺らの命を奪おうとした時があった。あのときは三人だったが、今は十人……いや、二十人以上はいる。


 この状況はマズイ。


「鷹尾太夫、どうか許してください。わたしたちは、この〈勇者〉を信じるよりも、何よりも貴方を助けたいのです」


 ひとりの遊女はそう言い、続いて、隣の遊女もひと筋の涙を流して、言う。


「それに……もう、わ(・)た(・)し(・)た(・)ち(・)で(・)は(・)止(・)め(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)!」


 直後、遊女らは一斉に俺らに向かって動き出した。


「〈ライデンマ〉!」


 同時に、マキが呪文を叫ぶ。あたり一面が真っ白な光に包まれた。


 視界が開けてきたとき、誰かに手を掴まれた。


「勇者様! 早くここから逃げるのです! ほかのみんなも!」


 俺らは逃げるようにして部屋から出た。紫さんと鷹尾太夫も俺らの後ろについてきている。


 エレベーターに乗り込み、最後鷹尾太夫が乗り込んだのを確認して、急いで扉を閉めた。


「マキ! あの人たちは……っ?!」


 下降中に、俺は残された遊女たちのことを聞いた。


「大丈夫なのです。ちょっと痛かったかもしれないのですが、倒してはいないのです。今は一時的に麻痺しているだけなのです」


 そう言って、マキは鷹尾太夫を見た。


「ごめんなさいなのです。あの場にいたら、わたしたち……。だから、とっさに……」


 鷹尾太夫は首を横に振り、「謝ることはないざんすよ」と答えた。


「むしろ、主さんらには迷惑をかけたなんし」


 鷹尾太夫は申し訳なさそうに、唇を噛み締めた。


「……鷹尾太夫。遊女らはどうしてしまったんだ? なぜ、あのようなこと……」


 紫さんはそう問うた。

 紫さんは、どうやら本当に何も知らされていないらしい。


 俺らもそこは気になるところだ。どうして、俺らを狙ったんだ?


「……この国は呪われた。魔女の子の手によって。それ故に、国の長であるわっち自身も呪われているでありんすよ」


 紫さんは目を見開いた。


「ノロイって……どんなノロイだ?」


 リアムは聞いた。


「死の呪いでありんす。わっちは、ジワジワと今も死に近づいている」


 こんな呪いをかけるなら、いっそすぐ殺してほしいもんでありんすが、と鷹尾太夫は自暴自棄に呟いて、続ける。


「遊女(わっちの子供)らは、そんなわっちを救おうと、魔女の子に提示されたある条件を飲んでしまった。それは、〈勇者〉を殺すこと。〈勇者〉を殺せば、わっちの呪いは解けるらしい……けれど、そんなの嘘でありんす」


 ――それは、どういうことだろうか。


 ふとケンを見ると、ケンは何か思い至ったのか、瞳に怒りを滲ませていた。


「魔女の子は、わっちを道具(エサ)にして遊女らに嘘を言い、条件を飲ませ呪いを成立させた。おかげで遊女(子供)らは、すっかり魔女の子の操り人形になってしまったのでありんす」


 鷹尾太夫はそこまで話したとき、エレベーターは一階についた。


 扉が開く。まだ遊女たちはいなかった。


「とりあえず外に出るぞ。鷹尾太夫だけでも、安全な場ところに!」


 紫さんは言い、俺らは遊郭の外へと出た。

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