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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第三章・ヨシワラトウゲンキョウ
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第9話・お金がないなら、おこづかいをもらいに行けばいいのです!

「鷹尾太夫(たかおだゆう)に会いに行く、なんて、ユータもとんでもない発想をするものだ」


 甪海豚楼(つのいるかろう)を目指し歩く中、ケンはそんなことを言った。


「勇者様、豪遊して遊郭で遊ぶなんて、考えてないのですよね?」


 マキは念を押すように言った。


「ユータがユウカク一番のオイランと遊ぶなんて、ムリに決まってるってやつだ!」


 リアムはガハハと笑った。失礼な言い草である。ま、否定はできないけど。


「で、ユータ。なぜ鷹尾太夫に会いに?」


 俺はまだみんなに、これまでの経緯を話していなかった。俺はひととおり起きたことを話し終えてから、今後のことを伝える。


「鷹尾太夫――あの人が何かを握っているはずなんだ。出会った花魁も、狐の女も、みんなその名前を言っていた。それと、どうやら魔女の子……ハンドレディのことも知っているようだしな」


 鷹尾太夫が魔女の子に関することを知っているのは違いない。


 ――『――申し訳ありません。鷹尾太夫』。


 花魁の洩らした、あの言葉の真意も気になる。



 話をしているうちに、きづけば甪海豚楼の前まで来ていた。


 ――俺は、前回ここで|ゲームオーバーになって《死んで》しまったんだよな。


 一瞬、胸の奥で恐怖が蘇る。


「……勇者様」


 マキはそんな俺の心情を汲み取ったのか、不安げな表情で呼びかけた。

 リアムもケンも、俺のことを見守る。


 ――ああ。大丈夫だ。


 俺は顔を上げ、「いや、なんでもねぇよ」と言って、遊郭の手前にある大門をくぐって行く。


 ――大丈夫。いつも仲間(コイツら)がそばにいる。


 みんなの顔を見たら、そんな安心感で満たされ、もう恐怖は消えていた。


 大門と遊郭を区切るようにして流れる大きな川に、紅の絢爛な橋がかけられている。その橋を渡りながら先へ進み、いよいよ遊郭の敷地内へと続く門の前まで辿りついた。


「はい、ちょっと待ってね」


 門の前に座り込む年老いた男に、俺らは呼び止められた。


「今晩は誰に会うんだい? 相手は?」


 そう聞きながら、男は右手をクイクイと動かし、まるで何かを催促しているようだった。


「勇者様、きっとお金の話なのです」


 察したマキは俺にそう耳打ちした。


 さすがは遊郭。タダでは入れないってわけだ。まあ、当然か。

 前回はすんなりと入れたが、すでに遊女から誘いを受けていたからであろう。


 ここは正直に伝えよう。いくらかかるかは知らないが、俺らだって、これまでの戦闘でそこそこゴールドは稼いでいる。ゲームの世界だし、さすがに〈プレイヤー〉が払える額にだってなっているだろう。


 俺は男に、鷹尾太夫に会いに来たと正直に伝えた。すると、男は驚いて身体を飛び跳ねさせた。


「本気か!? お前さんそんな偉ぇ立場の人なんか!? 鷹尾太夫を指名するなんて!」


 やっぱり、街一番の花魁様というのはすごいもんなんだなーと思いながら、俺は「ちなみに、会うにはどれくらいかかるもんなんだ?」と聞いた。


 男は震える声で答える。


「……五億ゴールド」

「……は?」


 俺は、聞き間違いじゃないかと耳を疑った。


「ひと晩、五億ゴールドだ。もちろん、ひとりひと晩の話だ。四人全員会うなら二十億。あ、ツケなんてもちろんナシだかんな!」


 男はものすごく期待を込めた眼差しで両手を差し出した。

 俺は思わず身を乗り出して言う。


「いやいや! 五億なんて馬鹿げてるだろ! そんなの一生かけても稼げねぇって!」

「……なっ! お前、ただ油売りに来ただけだってのか! やっぱりな、おめぇ見てぇな面、鷹尾太夫に会えるわけねぇ!」

「ひとこと余計なんだよ!」


 ツッコミを入れてから、改めて説明した。


「あの、俺らは別に鷹尾太夫と遊ぼうってわけじゃなくて、話がしたいだけなンスよ! ただ話があるだけ!」

「信じられるか! どっちにしろ、会うのにだって金がかかる! 会って話す、それで五億だ!」


 男は途端に機嫌を悪くし、シッシッと手を払った。


「さっさと失せな。金がねぇなら――」

「帰れってことだろ! 失礼しました!!」


 このまま居座っても無駄だ。俺らはさっさと遊郭エリアから出た。


 ――くっ、毎回毎回、金がなくて追い出されてる気がしてならねぇぜ!


「Heyユータ。五億ってfive hundred millionってことだろ? 全然足りないってやつだ〜」


 リアムはすっかり諦めモードだ。


「ユータ。正攻法で入れないなら、裏から回って侵入すればいい。僕らなら容易いだろう」


 ケンはそう提案した。しかしだ。


「いや、まあ常識的にはよくはないけど……それもアリだが、あの遊郭内には、番人だか知らねぇが、ひとりめっちゃ強いのがいるんだよ。変に侵入して見つかったら厄介だ」


 俺にそう言われたケンは、ちょっと残念そうな顔をした。


「何をそんなに悩んでいるのですか。わたしたちには強(・)い(・)味(・)方(・)がいるのです」


 八方塞がりかと思いきや、マキはこの状況下で希望に満ちあふれた表情(かお)をしていた。マキには、何か策があるのだろうか?


 強い味方って誰のことだろう?


 マキは腰に手を当てながら、高らかに言う。


「――お金がないなら、おこづかいをもらいに行けばいいのです!」

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