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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第三章・ヨシワラトウゲンキョウ
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第7話・ゲームによくいる魔王って、とことん破壊を好むものでしょう?

 ――すべての記憶(データ)を消し、やり直す。


 俺が……俺たちが、初プレイ時からの記憶しかないのは、その〈リセット〉のせいってことか。


「〈リセット〉の影響を受けないのは、魔王とわたしのみ。〈プレイヤー(勇太たち)〉の記憶の維持まではできませんでした」


 補足ですが、とメアナさんは話を続ける。


「すでにおわかりかと思いますが、〈リセット〉をされても、わたしの与えた〈勇者の力〉は消えません。ただし、〈セーブ〉したデータは消えますが。そして、 あなた方が積み上げてきた経験値もなくなり、レベル1に戻り、同時に冒険の過程で覚えた〈SKILL〉も、初期値に戻ります」


 要は、〈リセット〉ってのは、すべてを振り出しに戻してやり直す 〈SKILL〉……ってことか。


 しかし、以前魔王の言っていたとおりなら、その力はもう使えない。

 使ったのなら、この世界は崩壊し、誰も救われず闇の中。


「中途半端な仕様で本当にごめんなさい。わたしの力では、ここまでが限界だった」


 メアナさんは申し訳ないとばかりに顔を伏せた。


「…… 〈リセット〉には弱点があります。それは、かなりのメモリーを消費すること。データを消して、あなた方の記憶はなくなって、一見メモリーが空くように思えるけれど……しかし、わたしと魔王の記憶は残りつづけてしまう。その分、記憶のメモリーは増幅し、何より、リセットの度にかなりの負荷がかかっている」


 似たようなことを、以前魔王も言っていた。

 この事実は本当なんだ。


「〈リセット〉を繰り返していれば、いつかは限界がきて、この世界ごと崩壊するでしょう。そんなことが起きれば、いよいよわたしたちは救われない。〈プレイヤー〉は現実世界へ戻れない。……みんな、もう二度と目覚めない」


 話を聞いていたリアムが口を開く。


「そのゲンカイは、いつなんだ? オラたちは、何回繰り返してきた?」


 メアナさんは首を横に振った。


「わかりません。ただ、限界が近いことだけは感じています。だけれど、正確な数はわからない」


 ――メアナさんは、もう限界の一歩手前だと知らない。


 魔王と俺しか、限界がいつかの答えは知らないんだ。


 俺はメアナさんに『答え』を言おうとしたが、言えなかった――魔王は、頑なに『答え』を他言させないつもりだ。


 ――なぜだ?


「……ということは……今回の、一回限りで魔王を倒しやり切るしかない。……そう思っていたほうがよいのですね……」


 隣に座るマキは重い口調でそう言った。


「……事情はわかった。だが、まだいくつか疑問はある」


 続いて、口を開いたのはケンだ。


「魔王の目的はなんだ? 世界を繰り返していた理由は、〈プレイヤー(みな)〉を閉じ込める意味はなんだ?」


 メアナさんは、その疑問に対しても首を横に振るだけだった。


「わからない。見えてこないんです。わたしは魔王と会話もできない。姿も見たことがない。ただ、存在を感知しただけなんです。わかるのは、魔王はこの世界を確実に手中に収めようとしていることだけ。

わたしが勇太(ゆうた)に力を授けてから、魔王はその力を奪おうとしたのか、勇者を捕らえようとする使者――『魔女の子』と呼ばれる四人の子を生み出した。数々の戦いを用意し、勇太の力を奪おうとした」


 ケンは、複雑そうな表情を浮かべながら、こう言う。


「……僕らは、勇者を倒せ――率直に言い換えれば、殺(・)せ(・)と命令されていた。だが、勇者を倒せば、勇者は『セーブ地点』に戻り、逃げられてしまう。そもそも、勇者の力のことなど、僕は知らなかった――ほかの魔女の子だって知らない。魔王はすべてを知っているなら、なぜこんな命令を?」


 俺も疑問に思っていたことだ。だが、あのときの魔王の答えは、「俺とフェアでいたい」と、述べただけだった。


 メアナさんは少し考えて、こう言う。


「――気(・)が(・)変(・)わ(・)っ(・)た(・)」


 ……え?


「途中で気が変わったんですよ。だって、今わたし言ったじゃないですか。勇者を捕らえようとしていたって。初めは、勇者を捕らえて、〈SKILL〉を奪い取ることを画策していました。しかし、いつしか魔王は方針を変えたんです」


 魔王の考えがますます見えなくなっていく。そして、「フェアでいたい」と言っていた、あの言葉の意味も。


「これはわたしのいち考えですが、もしかしたら魔王は、勇太の 『リセットの限界』を狙う方針に切り替えたのかもしれません。今までの勇太は、魔女の子の手をすり抜けてきました。捕らわれたとしても、〈リセット〉を使って逃げてきた。〈リセット〉をされる度に、魔女の子に 〈勇者の力〉の説明をするのも面倒になってきたんです。魔女の子は、記憶(データ)が維持されないから。……毎度毎度そんな手間をかけるなら、〈リセット〉の限界が来るまで勇者を追い込んで、世界ごと崩壊させたほうが楽。……そう考えたのかもしれません」


 でも、そんなことをしたら魔王までが崩壊に巻き込まれてしまう。


 ―― 『もしくは――みな、仲よく犠牲となるか』


 ……ふと、魔王が提示してきたエンディングのひとつが脳裏を過った。もし、魔(・)王(・)が(・)そ(・)の(・)エ(・)ン(・)デ(・)ィ(・)ン(・)グ(・)を(・)望(・)ん(・)で(・)る(・)の(・)だ(・)と(・)し(・)た(・)ら(・)。


「……言い方は最悪ですが、魔王は、集団自殺に計画を切り替えたんですよ」


 ゲームによくいる魔王って、とことん破壊を好むものでしょう? と、メアナさんは呟いて、力なく笑った。

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