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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第三章・ヨシワラトウゲンキョウ
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第5話・この世界の始まりは、突然であり、当たり前だった

 ――「あなたは、この世界でたった一人の勇者となりました」。


 ふふ。覚えていますか? そうです。始まりの地、〈紫苑街(シオンガイ)〉で、わたしがあなたへ送った言葉です。


 ――そして、わたしが何度もあなたに託した言葉でもある。


 そんなこと言われてもって顔をしていますね。ふふふ。あなたはいつもそう。思ったことは、全部顔に出てしまうんですから。


 確実に、ポーカー対決をしたら、わたしが圧勝ですね。


 あら、ごめんなさい。話が逸れました。なんせ、わたしはお話するのが好きなんです。そうは見えないって言われるのだけれど……どうしてかしら? みんな、教会の人(シスター)はな口だとでも思っているのかしらね。


 この世界の始まりは、突然であり、当たり前だった。


 突然、わたしたちは役割を与えられ、あるべき生活をして、それがずっと日常的にあったように過ごしていた。それに対し、わたしたちは疑問を抱くこともなかった。だって、そう設定(プログラム)されているんですもの。


 そう、今こうして話している相手は、ただのプログラムの一部。


 わたしは、教会にいる修道女(シスター)。いえ、こんな格好をしているけれど、本当は聖女にも匹敵する存在なんですよ。


 自分で言っちゃうのです、えっへん。


 そんなわたしの役割は、怪我をした人を回復させたり、戦いでゲームオーバー(お亡くなり)になってしまった人を蘇らせたり、まあ、いわゆるRPGゲームによくいる教会の人ですね!


 最近は、魔王がゲームを変えてしまったことで、わたしの仕事はすっかりなくなってしまいました……。今や、現実世界の現代社会は、終身雇用も終わりの時代と言われていましたが、まさかこの世界までそうだとは知りませんでした。世知辛いですね。むむむ。


 え、また話が脱線しはじめているって? もう、いいじゃないですか。わたし、ずっとここにひとりでいるんですもの。やっとお話ができると思ったら、お喋りが止まらないのは当然でしょう?


 ……はいはい。ごめんなさい。そうですよね。あなたたちは、生きるか死ぬかの瀬戸際にいるんですもんね。


 でも、こうやってわたしの話を聞いて、時には和むことも大事ですよ?


 まあ、そろそろ色々な方面から怒られそうだし、本題へと入っていきますか。


 まず初めに。いつから、この世界は繰り返すようになったのか。


 それは、わたしにも正確なことはわからない。だけれど、ある日、同じ時を歩んでいることだけは理解したの。


 なぜ、勇太(ゆうた)自身でさえ認識できなかったことを、私だけは気づくことができたのか。


 それはね、わたしもプログラムに干渉できる者だから。


 本来不可逆であるはずの命。それを蘇らせることのできるわたしは、即ちプログラムに触れ、元に戻せるから。


 故に、わたしはこの世界をゲームだと認識できる。


 だからと言って、さっきも言ったけれど、繰り返しが始まってからすぐに気づいたわけではないの。わたしがようやく事態に気づいたのは、魔王の存在が生まれてから。


 わたしは急いでこの世界のことを調べた。この祭壇から、プログラムの中身を覗き見たのよ。

 こんな感じ。祭壇を机みたいにして、この上に地図を広げるみたいに、こうやってね、見たのよ。


 魔王の手によって隠されているコードもあって、すべては把握できなかった。けれど、対処法はただひとつなのは間違いない。


 ――魔王を倒し、プログラムから乖離させること。


 乖離さえできれば、わたしがその間に入って、すべてを元どおりに直せる。長い長い冒険の旅もなかったことにして、繰り返す前の状態へと戻すことができる。


 いつまでも、この世界を繰り返してはおけない。いつかメモリーの限界は来る。そうなってしまっては、この世界にいるわたしたちは消滅してしまうか、永遠に真っ暗な世界に閉じ込められたままとなるか、どちらかでしょう。


 それを防ぐためにはどうするか。


 この世界を狂わせた原因となる、魔王――プ(・)ロ(・)グ(・)ラ(・)ム(・)を(・)不(・)正(・)に(・)書(・)き(・)換(・)え(・)た(・)A(・)I(・)を、始末しなくてはならない。


 そうしなくては、わたしがプログラムを書き換え、元に戻すことすら許されない。


 でも、非力なわたしでは、到底、魔王を倒すなんてできない。わたし自身を強化する、なんてことも、できなかったし。


 ……わたしは考えました。

 魔王に対抗する存在は、なんだろうと。


 そこで、わたしは思い至りました。

 いるじゃないか。魔王に対抗できる存在が。たった一人の人物が。


 ――勇者だ。


 だけど、このゲームには元々〈勇者〉なんて設定はない。そもそも、〈魔王〉すらもなかったんです。


 一から勇者を作り上げる? 魔王がすべての権限を握っている今、そんなことはできない。そんなことができるなら、わたしはとっくにこの世界を元に戻している。


 悩んで悩んで悩んで――そんなとき、現れたんです。


 ――あなたが、神風勇太(かみかぜ ゆうた)が。

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