第25話・みんなが、最後まで諦めなかったおかげだよ
「ニャンニャニャニャーン! ムギちゃん、ご覧のとおり元気いっぱいになったのニャン!!」
明くる日の朝。青年の家へ向かうと、元気いっぱいのソラちゃんが出てきた。
首元の痣も、きれいになくなっていた。
「お姉ちゃん!!」
ソラちゃんはムギちゃんを見るや、すぐにその胸に飛び込んだ。
「うぅ〜……よかった、お姉ちゃん元気になって……!」
「ウチは元気が取り柄だもん! そんな簡単に死んでたまるかニャ!」
そんな中、村長とヘリオスさんが、家の奥から現れた。
「勇者様。この度は本当にありがとうございました。〈セラピアの実〉を取ってきてくれたおかげで、村人は全員救われました」
「いえ。村長さんたちもありがとうございます。薬のおかげで、みんな助かりました」
村長に手を差し出され、俺はその手をしっかりと握り返した。
「ところで、もしや魔女の子も……?」
俺はただ頷いて答えた。
「ああ、なんとお礼を言ってよいのやら。……そうじゃ。勇者様、このあと時間は大丈夫ですか?」
村長は言う。
「村に活気も戻ったことです。ぜひ感謝祭にご参加ください」
――感謝祭?
◇
「Awesome! I want to stay here forever!!」
みなさん、安心して頂きたい。
聞き覚えのあるリアムの感嘆が響いたが、今は初めて〈ノスティモ村〉に訪れた時ではない。
俺らは今、ノスティモ村主催の感謝祭を楽しんでいるのだ。
「ニャニャー! おいしいものいっぱいニャー! これ、食べ放題なんだって!」
「タベホーダイ! タベホーダイってなんだ!?」
「要は、タダ飯ってことよ。さて、たくさん食べてやるかしらね」
リアム、ムギちゃん、ソラちゃんは立ち並ぶ屋台に走っていってしまった。
ソラちゃんもなんだかんだ子供らしい。お祭りと聞いて、テンションが上がっている様子だ。
祭りは、村人も含め大いに賑わっている。
村中は、みんなの笑い声に包まれていた。
「この景色を見られるのも、勇者様のおかげなのです」
マキは言った。
「ああ。ユータが諦めなかったから、今、この景色があるんだ」
ケンも呟いた。
「……ありがとな。でも、俺だけじゃねぇ。みんなが、最後まで諦めなかったおかげだよ」
俺は、それぞれ仲間たちを見つめた。
「俺ひとりじゃ、クリアできなかった」
前もどこかでそんな言葉を言ったっけかなと、そんなことを思った。
遠くから、ムギちゃんが手を振っているのが見えた。
「ユータたちもおいでよ! いっしょに食べるニャ!」
ムギちゃんに誘われ、俺らも感謝祭の輪に入ることにした。
そのあとも感謝祭は続いた。めいっぱい食べて、話して、楽しんで――そんな幸せな時間は、あっという間に過ぎていった。
夕日が登った頃、感謝祭は終了した。
俺らは、これから次の冒険へと旅立とうとしていた。
次に目指すのは東の国――〈ヨシワラトウゲンキョウ〉。
今度こそ、ハンドレディと決着をつけなくちゃならねぇ。
村の出口には、村長とヘリオスさん、村人たちが見送りに来ていた。
それから、ムギちゃんとソラちゃんも。
「ユータ! それにみんな! 本当にありがとうニャ! おかげで、今もこうして、笑って立ってられる」
ムギちゃんの横で、ソラちゃんも小さくお辞儀をした。
「……でも、ごめんね。ウチは、その……」
ムギちゃんの猫耳が垂れ下がる。
ムギちゃんは、やっぱり戦いも冒険も苦手らしい。ムギちゃんとソラちゃんは、この村に残ることを選択したのだ。
俺は「謝ることじゃねぇだろ」と微笑みかけた。
「ムギちゃんたちは、この村の平和をよろしく頼むぜ。あとのことは、俺たちがなんとかしてくるからよ!」
ムギちゃんは「……うん!」と笑った。
それから、ムギちゃんは右手を差し出した。
「ユータ。でも、ウチらはただ待つだけなんてしないから」
瞳には、力強さがこもっていた。
「ウチらじゃ大した力にはなれニャいかもだけどさ、なんかあったらいつでも呼んでよ! 全力で協力するからさ!」
何度も聞いたその言葉に、俺の胸は温かくなった。
「それに、道に迷ったら、ウチがいつでも占ってあげる!」
「……ムギちゃん」
俺は、ムギちゃんの手を握り返した。
「――ああ、なんかあったらいつでも頼らせてもらうからな! ムギちゃん!」
ムギちゃんはやっぱりここでも「勇者と握手しちゃったニャー」と、うれしそうに笑ってくれた。
俺は、もちろん隣にいるソラちゃんにも顔を向けた。
今度は俺からソラちゃんに握手を求める。
「ソラちゃんも、よろしくな!」
俺は言った。
ソラちゃんは頷いて、俺の手を握り返した。
「野垂れ死になんてしないでよ、ユータ」
ああ。簡単に死んで終わるなんてことはしない。
ゲームオーバーしようとも、何度だって、立ち上がってやるさ。
俺らはムギちゃん、ソラちゃん、そして村人たちに見送られ、東の国を目指し、歩き出した。
残る魔女の子は、二人。
――エンディングを選べ、勇者よ。
ふと、魔王の言葉が脳裏をよぎった。
「…………」
「……どうしたのですか、勇者様」
マキに言われ、俺はなんでもないと答える。
選択肢を選ぶ時では、まだない。
目標は魔王を倒す、それだけだ。
みんなの期待を背に感じながら、一歩一歩地面を踏み締め、歩きつづけた。




